2022.10.14
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セレンディピティ

今期も引き続き連載をさせていただくことになりました。 このつれづれ日誌は様々な方が読まれていると聞いています。きっと私よりも経験が豊富だったり、勉強されている方が多いのではないのかなぁと思っています。私の拙い実践やお話でも、多少は皆さんのお役に立つように、何とか頑張って書いていきたいと思います。今期もどうぞよろしくお願いいたします。 「セレンディピティ」という言葉は少し前に有名になった言葉です。2000年のノーベル化学賞受賞者の白川秀樹さんや2010年のノーベル化学賞受賞者の鈴木章さんが話題にしていますね。 今回はこの「セレンディピティ」という言葉から、特別支援学校で大切にしたい偶然からの発見についてお話をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭 丸山 裕也

セレンディピティを大切に。

イギリスの小説家ホレース・ウォルポールが『セレンディップと3人の王子』というおとぎ話で生み出した造語のことです。このお話では3人の王子たちが旅先で自分たちにとって有益なものを偶然発見して手に入れるという場面があり、そこから「セレンディピティ」=「偶然から自分にとって良いものを発見する」「幸運な偶然を引き寄せる」ということにつながっています。
さて、皆さんにお尋ねします。皆さんは最近セレンディピティに出会いましたでしょうか?
日頃の仕事に忙しく過ごしていると、失敗を振り返る暇もなく、次から次へと仕事をこなしていかなくてはいけないのかもしれません。成功するのは当たり前、どんどんどんどんタスクをこなしていくことが求められているのかもしれません。私もそうです。

ところが改めて振り返ってみると失敗したと思ったことが、別の視点で見ると「おや、こんなことが」となることは決して珍しいことではないのかもしれません。
想定したことと、まったく違ったことが起きたとき、「これもいいじゃないか」と肯定的に捉えることもあるかもしれませんね。

失敗体験からの「偶然」

偶然から見つけたどんぐりたち

特別支援学校に通う子どもたちの多くは、これまでお話してきたように「成功体験」が少なく、「失敗体験」が多いとされています。そのため、私たち教員は成功体験につながるように教材を用意したり、環境設定をしたりすることが大切だということをお伝えしてきました。
ところがこの「セレンディピティ」という視点で考えると失敗体験の中にも、実は発見があったりします。

さて、この写真は何の写真でしょうか?
実はこの写真は、以前ご紹介した凧揚げの場面で写真を撮影しようとして、クラスの子が撮ってくれた写真です。動画ボタンと押し間違え、かつ空ではなく地面を写したこの写真。凧揚げの写真撮影としては失敗のように感じるかもしれません。

ところが、この写真を撮った子は私に「どんぐりいっぱいあるね」と嬉しそうに教えてくれました。
子どもにとっては失敗ではなく、偶然の出会いだったわけですね。

私たちが失敗だと感じてしまう子どもの行動でも、あらためて見返してみると、偶然の発見があるかもしれません。
この記事を読んでくださっている皆さんも、せっかくですのでまず自分の中で起こった偶然を振り返ってみませんか。
意図しなくて起こったこと、失敗したけど、別の何かにつながったこと、きっとそんな出来事が見つかるはずです。
自分の偶然を見つけることができると、子どもたちの偶然も一緒に見つけることができるかもしれませんよね。時には失敗だと感じることであっても、そこから何かしらの発見があるかもしれません。
なんて考えると、学校での生活が楽しくなってきそうですね。今回の記事も読んでくださりありがとうございます。

丸山 裕也(まるやま ゆうや)

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
公認心理師、学校心理士、障害者スポーツ指導員(初級)、福祉用具専門相談員
「あした、またがっこうでね。」と、子どもも教師も伝え合うことができるような、楽しい学級づくりを目指しています。また、障害のある子どもたちの心の健康について、教育と心理の二面からアプローチしていく方法を考えています。
特別支援学校で出会ってきた子どもたちとの学びを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。


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