2022.09.30
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【若手向け】子どもとの信頼関係はどう築く?

人と信頼関係を築くことはけっこう難しいことです。さらに今は子どもでもYouTubeなどの動画を通して情報がどんどん流れ込んでくる時代となり、僕たちの子ども時代と重ねて考えてしまうと意見が合わないことも多々あります。
今回は信頼関係の築き方について僕が考えることを書いていきたいと思います。

沖縄県宮古島市立東小学校 教諭 五條 晶

【そもそも人間関係を築くのは何のため?】

「教師は信頼関係を築きましょう」と初任者研修の頃から言われます。
ただ、信頼関係を築くのは何のためでしょうか。
教師が指導がしやすいため?教師が話を聞いてほしいため?
これは教師が主語になっているので、少しズレていると思います。
信頼関係を築く理由の一番は「子どものため」と思います。
子どもはけっこういろいろな悩みを抱えて学校に来ます。放課後部活中や遊んだ友達と喧嘩した子や、家庭のルールで怒られてきた子。飼い犬が元気なくて心配な子。
いろいろな子どもが安心して学校生活を送れることが教師としての願いですが、信頼関係がなければこうした子どものストレスや不安を無視した行動を取ってしまいがちになります。

逆に信頼関係があれば、少し言いづらいことでも子どもから話をしてくれますし、その子にあった対応を教師側もしやすくなります。
結果的に、信頼関係があれば指導がしやすくなりますし、話も聞いてくれるようになります。
しかし、そこが目的ではなく、一番は子どもが安心して学校生活を送れるためと思う気持ちを見失わないように心がけています。

【信頼関係を築くことは難しい】

みなさんは何を見て信頼関係が築けていると思いますか?
僕は子どもが「相手が大人でも自分の思ったことを伝えてくれる関係性」が信頼関係が築けていると思います。
なので教師の言ったことを全て素直に聞く子どもを見ても、十分な信頼関係が築けているとは思いません。
例えば、会社で上司の言ったことを全て素直に聞く部下がいたとします。
この場合上司と部下が信頼関係が築けていると自信をもって断定することはできないですよね。
もしかしたら、部下は立場上、しかたなく上司の言うことを聞いているだけかもしれません。

学校でも同じように、先生の言うことを一方的に聞くことを見て信頼関係が築けていると判断するのなら、4月の時点でほぼ全員の先生が子どもと信頼関係を築いていることになります。
なぜなら人間は心理学的に、初めて会った人の話は聞く傾向にあるからです。しかし、信頼関係がなければ、話も聞いてもらえなくなり叱って聞かせるなどの方法に走ってしまい、悪い方向へ流れていきます。

とは言っても、信頼関係を築いていくことは難しいですよね。僕自身初任の頃はただでさえ授業をすることに精一杯で、子どもの意見や普段の話を聞く余裕すらありませんでした。
でも、そんなときにに限って学級のトラブルが多発したりします。
そのトラブルの指導も、一方的に怒ってしまったりと今思えば当時の子どもがかわいそうだったなあと思うこともあります。
そんな反省も含め、信頼関係を築くために気を付けていることを次で書いていきたいと思います。

【信頼関係を築くために気を付けていること】

信頼関係を築くために気を付けていること①『話の聞き方』
「話を聞くこと」は簡単に見えて難しいです。僕は人と話している時、「ねえ、話聞いてた?」と言われることがあります。基本的に話を聞くのが苦手なタイプです。
そこでまず大事にしているのは「相槌」です。まずこれをするとしないだけで印象が変わります。
次に「共感的に聞くこと」です。例えば誰かに話をしたときに、「それは違う」といった態度で反応されてしまったら、話したくなりませんよね。だから、相手の思ったことを「なるほどね」「いやだったね」「うれしかったね」などと添えてあげることで共感的に聞いていきます。話した相手は思いが伝わったことを実感するので、話が分かってもらえる人なんだと安心します。

信頼関係を築くために気を付けていること②『伝え方』
伝え方も難しいですよね。一方的に「伝えた」だけでは、伝わってないのと同じです。
相手が納得して聞いてくれているか考えて伝えます。
例えば、教室そうじが終わったにまだ隅にゴミが落ちていたとします。その場では近くの子に声をかけて綺麗にしていきますが、その場しのぎになります。
では、次の日にそうじする時どんな伝え方をしますか?
ここで「昨日そうじが隅まできれいではなかったです。ちゃんとできてませんでした」。
なんて言ったらアウトです。子どもたちの中では、ちゃんとそうじはしたつもりですからね。
そこで、子どもたちの頑張りは認めつつ伝えたいことを伝えていきます。
例えば「時間通りそうじができているのはOKだけど、隅にゴミを残しているところがもったいないです」。
こんな伝え方をすれば、否定されていないので、話を受け入れやすくなります。

他にもトラブルが起こった際の個人的な指導でも、何かをしてしまった子の「行動」と「人」を切り離してよくなった行動を伝えます。
そうすることで、聞いている人からは人格否定ではなく行動だけの否定なので直しやすくなります。
と簡単に書きましたが、学級指導の伝え方はまたの機会に詳しく書きたいと思います。

【子どもだからとかじゃなくて】

こうして気を付けていることを書いてみると、相手が大人だからとか子どもだからではなく、人として気を付けていることが大事だと気付きます。
相手は確かに子どもですが、思いを持ったしっかりとした人間です。
相手を一人の人として尊敬して接することが、一番の信頼関係を築ける方法なのかもしれません。
また、今の時代はYouTubeなどで動画にして分かりやすく情報が手に入る時代です。
これは良い影響もあれば、悪い影響もあります。
子ども自身が、ネット上の人物が言うことを信頼しきっていたり、まるで小さな世界で起こっていることを、まるで全部がそうだと思うような子もいます。
そんな時に、フェイス・トゥー・フェイスの関りで大人たちが子どもと信頼関係を築いていくことが子どもが大人になったときの糧になると思います。

五條 晶(ごじょう あきら)

沖縄県宮古島市立東小学校 教諭


授業を通した「みんなで分かる!」「みんなが楽しい!」集団づくりを目指し、試行錯誤しています。

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