2022.03.24
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「成功体験」につなげるということ

「成功体験」
とても素敵な響きですね。特別支援教育の現場では大切にされるワードの一つだと思います。しかしながら、私自身は特別支援教育だけでなく、様々な学校教育の現場で意識してほしいと思っていることでもあります。

今回はこの「成功体験」について、理科の授業ではなく、クラスでの日常の一コマから理科的な要素を交えて実践をお伝えしたいと思います。よろしくお願い致します。

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭 丸山 裕也

きっかけは生徒の一言から…

「この紐、全部伸ばしたらどうなるんだろう?」
一年前のある日の休み時間に校庭で凧あげをしていると、クラスのA君がポツリつぶやきました。
彼のあげている凧は手作り凧、数日前の授業でつくったものでした。その説明書を見ると、凧についているタコ糸の長さは50m、しかしながら実際に伸ばしているのはその半分程度でした。
「伸ばしてみようか?」
私がそう彼に伝えると、A君は少しずつ、するするとタコ糸を伸ばしていきます。すると……。
「ブチンッ!」
風が強かったのか、タコ糸が古くて弱っていたのか、勢いよく紐は切れて凧がすっ飛んでいってしまいました。幸いなことに、凧そのものは校舎の壁に引っかかっており、回収することができたのですが、この出来事をきっかけに私とA君で「この紐いっぱいに伸ばして凧あげがしたい」と思うようになりました。

「凧あげ」を科学する

「凧あげ」はお正月の歌で歌うくらいしか、なじみがないという人も多いのかもしれません。ところが、改めて調べてみると本当に奥が深い世界が広がっています。空気の力をどのように受けるのか。「揚力」といった聞き慣れない言葉も出てきたりします。
凧にも種類がいろいろあります。高く飛ぶのはデルタカイトと呼ばれる凧ですが、私とA君があげたい凧はいわゆる四角形の「角凧」です。調べてみますとこの凧は安定させて飛ばすのがなかなか難しい種類のようです。
凧の「しっぽ」も大切な要素です。なければ困りますが、長ければよいというものでもなく、おおよそ長さは1メートル前後がよさそうです。凧紐も使い古した凧紐よりは新品を使いました。
「休み時間の凧あげ」という遊びから、気分は科学者や技術者のようになってきます。
風も大事になってきます。弱ければあがりませんが、かといって強すぎるとタコ糸は切れてしまいます。
「今日の風は良さそう!」「今日はダメそうだね」「今日はちょっと強いかも」。
「休み時間の凧あげ」をきっかけに、風を観察するようになりました。

「成功体験」につながった「凧あげ」

写真の右上にある白いものが凧です!

風も、凧のコンディションもちょうど良さそうなある日。
ついに、50mのタコ糸をすべて伸ばして、凧を飛ばすことができました。高さはデルタカイトなどに及びませんが、それでも圧巻のこの長さ!私もA君も大興奮です!
いつまでも、いつまでもA君は離すことなく凧をあげていました。休み時間の出来事から始まったことが、トライ&エラーを重ねてついに大成功しました。彼は次の休み時間にもまた凧をあげに行きました。もう私がいなくても、彼の中に「どのようにすれば糸が切れないようにして凧をあげることができるのか」ということは十分に身についています。それは理科的なことを学ぼうとして学んだことではなく、一つの「成功体験」を通して学ぶことができたといえるのではないでしょうか。

「成功体験」について、今回は「凧あげ」という、何気ない休み時間の一コマをテーマにお話をしてきました。実際には、成功するまでのプロセスの中には失敗があり、そこに対するトライ&エラーがあり、その悔しさをばねにしてできた成功体験だったと思っています。
「成功体験」ということをこれからも大切にしていきたいですね。



丸山 裕也(まるやま ゆうや)

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
公認心理師、学校心理士、障害者スポーツ指導員(初級)、福祉用具専門相談員
「あした、またがっこうでね。」と、子どもも教師も伝え合うことができるような、楽しい学級づくりを目指しています。また、障害のある子どもたちの心の健康について、教育と心理の二面からアプローチしていく方法を考えています。
特別支援学校で出会ってきた子どもたちとの学びを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。


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