2022.03.07
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米国人教師が驚く「日本の学校の4つの事」

コロナ禍で、私たちアメリカンスクールでも実に様々な事の様式が変わってしまっています。例えば現在は教室前で手を消毒して入室したり、マスクは随時着用し、昼食をとるカフェテリアでは透明なクリアバインダが設置され、席も一つ飛ばして座らなければならなかったり。コロナ禍以前は、教室のカーペットの上で自由に寝転がって読書をしたり問題を解いたり、廊下で寝そべって絵を描いていた子どもたちの様子がありました。そんな子どもたちの学校生活様式もすっかり変わってしまいました。

私の教える日本語日本文化クラスでは、コロナ禍以前、日本の学校との定期交流会があり、毎年多くの子どもたちが待ち望む一大イベントでした。年に2回程、こちらから日本の学校に出向き、そして、日本の学校の子どもたちを我が校で迎えるといった体験行事を行っていました。日本の子どもたちがまず我が校にきて一番驚いていた事、それは昼食にピザとチョコレートチップクッキーが出されたことです。そして、教室で自分の居場所を見つけ自由に寝転がり、様々な場所で学びに取り組める環境に、びっくりしている様子でした。

現在はリモートでの交流会のみ可能になっていますが、人と人の直の触れ合いはスクリーンを通して得られない多くの素晴らしい事、活きた体験をもたらしていたことがコロナ禍になってわかります。そして、米国人教師と訪れる日本の学校は実に面白い視点、気づきを教えてくれました。今回はその4つの驚きを彼らの言葉と共に紹介します。

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師 下條 綾乃

1.They didn’t make it from cans but from scratch, amazing!    

「缶の材料から作られていない給食!これはすごいぞ」

カフェテリアの現在の様子

日本の学校へ行って先ず米国人の同僚の教師が驚いたこと、それは給食の質の高さです。まず、給食に使う野菜などの材料を学校で育てたり、給食が学校のセンターで、一から作られていることがあげられます。そして管理栄養士が立てたバランスの良い献立のもとに赤、緑、黄色に分けられたいろどりの良いプレートは食欲をそそります。
更に子どもたちが主導で6年生が1年生の教室で給食指導を行ったり、子どもたち自身がそれぞれの役割で、それぞれの器におかずやスープを盛り、使用した材料の説明を担当の子どもたちが発表するといった事もアメリカンスクールでは行われません。
アメリカンスクールでは、様々なメニューが缶に入っている材料から作られていたり、冷凍室から出てくることもあり、その違いに大変驚いていました。またアメリカンスクールでは、子どもたちはカフェテリアで好きなものだけを選んで食べることができるので、日本に比べて子どもたちの栄養バランスが偏りがちと言った意見も聞かれました。

2.Bathroom cleaning?! Ewwww, not for me!

「トイレ清掃だって、絶対にできない~!」

面白いことに、この台詞は米国人教師からも学校の子どもたちからも発せられました。どうやら小学生にはトイレの清掃はさせられない、またはできないと思っているようなので、目からうろこ体験だったようです。
実はアメリカンスクールではどの学校でも清掃員が雇用されており、放課後、彼らによって清掃が行われます。アメリカンスクールでは年間の授業日数が日本と比べて非常に少ないことから、主要教科以外の活動や授業がかなり制限されています。
日本では自分たちで使う場所をきれいにし、みんなで使う場所をきれいに保つことを心がける意識が、学校生活の中で自然と芽生えます。しかし、アメリカンスクールでは誰かがきれいにしてくれる、掃除してくれるからと、いたずらでトイレを汚したり、教室や廊下に落ちているゴミを “I didn’t do it!”や“I didn’t make the mess”と言って拾うことを促しても拒否する子どもたちがいます。
実は日本の給食や清掃の時間は、こういった側面から米国の教育者の間で、評価されている一面もあるのです。

3.Why there is no adults in recess monitoring kids? 

「休み時間に大人が子どもたちを監視していないのは何故?」

アメリカンスクールでは子どもたちが休み時間に自由に行動したり、授業中許可なしにトイレに行ったり水を飲みに行ったりすることはありません(Hallway Pass廊下パスというのがあり、担任や監視員の許可を得てそのパスを所持していれば歩き回ることが可能です)。
日本の学校を訪れた時に、米国人教師の口から「なぜこんなにも子どもたちが自由に学校を歩き回れるのか?」「安全なのか?」という質問がありました。

4.Walking home from school by themselves, how independent!    

「学校からうちまで歩いて帰るなんて、なんて自立しているのだろう!」

日本の学校では終了のベルと同時に子どもたちが一斉に下校し始めます。ほとんどの子が歩いて帰路を目指します。殆どの学校でスクールバスを採用している米国では、歩いて家に帰る子どもたちは稀で、安全ではないとみなされるので、米国人教師は日本の治安の良さ、社会が与える安心感や安全さを真っ先に称賛していました。
そして、30分から1時間もかけて歩いて家に帰ったり、都心では一人で電車を何時間も乗り継いで学校を行き来する子もいるという日本の教育子育て事情を説明すると、大変驚いていました。米国では地域によって、治安の悪さを示すような悲しいニュースもあります。
2018年、自身が訪れていたノースカロライナ州で、朝母親の送迎を家の外で待っていたティーンが母親が家から出てくる10分の間で誘拐されたという衝撃のニュースがありました。地元のスーパーマーケットへ行くと誘拐された子どもたちの写真と情報が掲示板に張られており、衝撃を受けました。
「かわいい子には旅をさせろ」という言葉がありますが、米国には、かわいい子になかなか旅をさせられない地域の安全性、治安の悪さといった事情が深く関係しているようです。

Think outside the box

箱の外から考えてみよう

英語で “Think outside the box”という表現があります。直訳の意味は「箱の外から考えてみよう」ですが、創意工夫を凝らし頭を柔らかくする、型にはまらない考えのことを指しています。
未来の「教育」を考えるとき、この既成にとらわれない概念をもって箱の外のモノ、コトガラと比較し、違いを認識し共有する作業から多くの事がスタートするのではないかと考えます。
以上の理由からアメリカンスクールという箱の外の場所の様子をお伝えしてきました。読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
アメリカンスクールから発信する教育つれづれ日誌、次回は最終回です。最終回は総集編、日本と米国の学校の良い面を沢山紹介していきたいと思います。

下條 綾乃(しもじょう あやの)

在沖米軍基地内 公立アメリカンスクール 日本語日本文化教師
日本語学校や領事館等で日本語を教えた後、米軍基地内の公立アメリカンスクールで日本語日本文化を教えて20年ほどになります。何年経っても毎日驚きと気づきがあり、それらの一部を皆さんと少しでも多くシェアできたら嬉しいです。外国の子供達に自分の話す言葉や習慣、文化を教えることの楽しさ、難しさ、面白さを呟いていきます。

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