2022.02.07
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高校生の英語学習と小4の算数

ご無沙汰しております。定期連載からは少しお休みをいただいていましたが、やっぱり子どもたちと共に学ぶことは面白く、お話したい出来事があったのでご一読いただけましたら幸いです。
どこまで行っても勉強嫌いの私ですが、そんな私だからこそ未だに発見があり、学ぶことが楽しくてしょうがないのです。

ユタ日本語補習校 小学部担任 笠井 縁

参考書は近道か

アメリカ在住の私ですが、先日Zoomで日本の高校生の英語の授業にお邪魔する機会がありました。英語の習得方法や過程を、自分の経験や過去に英語を教えた生徒さんの例をあげてお話しました。その流れで、最後には事前に準備していたことに加えてこんな言葉が私の口から出たのです。「お勧めの参考書などがあったら教えてほしい」という質問への答えです。

「参考書というのは他の誰かが考えて整理したもの。結局それは、その人にとってのわかりやすい分類方法ややり方なんだよね。文法であろうと語彙だろうと、長文読解だろうと……。でも自分でたくさん、いろいろな英語に触れて、自分なりの学習方法ややり方、整理の仕方が見つかれば、それは他の教科や場面でも使えるし。誰かのやり方を参考にするのは一見効率的で近道みたいだけど、意外とそうじゃないかもしれない」

しばらくして、これを自分で実感することになったのです。

アールとヘクタールの誕生秘話

それから数日が経ち、私は自分が教える小4算数の教科書とにらめっこをしていました。単元は面積の求め方で、大きな面積の単位です。アールやヘクタール……。こういった単位の存在意義を、私は五十路に近い今の今でもまだ見出せていなかったし、だから結局、1アールが何㎢なのか、1ヘクタールが何㎢なのか、うろ覚えなのです。実際にその広さの体感も実感もありません。この単元を教える時は指導書を横目で確認しながら。教える時期に短期記憶で覚え、のど元過ぎれば何とやら……次の年にはすっかり忘れていて振出しに戻る、のくり返しです。

今までは「アールやヘクタールはあんまり使わないから、そういうのがあるって知っていればいいんじゃない」と心の中で逃げていました。でも今年は、ちゃんと教えるためにちゃんと理解しよう。

どうして私にはアール(100㎡)とヘクタール(10,000㎡)が理解できないのか。小学生の頃の自分に戻って、どこで迷子になってしまうのか整理し直してみました。

1㎠から1㎡は100×100で10,000㎠、よし、これはわかる。サイズ感も身近だからイメージできる。1㎡から1㎢は1,000×1,000で1,000,000㎡、これもわかる。と図に表していくと、あれ?1㎡と1,000,000㎡の間がぽっかり空いている。100㎡と10,000㎡はどこへ行ったの?

そこで大発見!この100㎡と10,000㎡にアールとヘクタールがピッタリはまるじゃありませんか!私の脳内に、困っている昔の人が浮かびます。1㎡はだいたいこの位の四角の中ね。町みたいな広い範囲を表す時はmの次はkmだからそれを使えばOK。でも1m四方より広く、町より狭い広さ、例えば畑や牧場を表す時はどうしよう……。

だからアールやヘクタールが登場したんだ!……こんないきさつが本当かどうかはわかりませんが、ここまでイメージ(物語)ができると、私はなんと、小4以来ずっと苦手だった大きな面積の表し方をバッチリ理解していたのです。もう指導書の答えを見ながらじゃなくても教えられる!

いつかはわかる

何を今さらという算数が得意の先生方もいらっしゃる事と思いますが、教科の壁を越えて、やっぱり教える事が一番の学びの方法であり、自分のやり方(理解の筋道)を見つけると、その知識がしっかりと自分のものになるんだという事を改めて実感したのです。

ちなみに「変わり方調べ」も苦手でした。感覚的適当人間なので、法則性をキッチリ見出す意味や必要性が分からない。片方が増えればもう一方も増えるとか、片方が増えるともう一方が減るとか、何となく感覚で分かるじゃん、と思ってしまう自分がいるのです。これも実は、教える立場になってから年々面白くなってきた単元です。「なんとなく」で済ませていたものを表に整理し、式で表すとスッキリする~!という快感を毎年更新していて、どの単元にも新しい発見があり、算数って面白い!と今になってワクワクしています。

我が家の中一の息子は、私と同じくどうやら文系に強い感覚人間らしく、私の小4の授業準備(変わり方調べ)のページを見て「あ、これ俺が苦手なヤツ。一生わかる気がしない」などと言います。そして私は「だと思うでしょ〜。お母さんもそうだったんだよ。でもね、この面白さがわかる時が来るんだなぁ」と、ほくそ笑むのでした。

夢中でやっている内に

英語の話に戻ると、私は参考書を使ったことが一度もなくて、それは日本での受験勉強を全くせずにアメリカの大学にいきなり飛び込んだからなのですが。結局日々の予習復習や授業や課題に追われている内に、発音記号やら文法的な法則やらは、いつの間にか自分の中で整理され分かるようになっていたという、日本の学生さんにはそれこそ参考にならない経緯で習得した訳です。

そして日本に帰ってから英語を教えるという立場になった時に、自分がつかんだものを他の人にわかりやすく伝えるという視点に立ちました。その中でまた英語や言葉への理解が深まったのです。今思えば、留学時やその直後の英語なんてお恥ずかしいモノで……。

Zoomで話した高校生たちは、私の話を好意的に興味を持って受け止めてくれたようです。特に受験のために勉強はしなければならないものと思い何だかちょっと行き詰っていた子たちが、英語は手段だから興味を持っている分野の英語に触れ、自分のやり方で理解しようとすればいいのか。だったらやってみたい!と思ってくれたらしいと聞いて嬉しかったです。もしまた機会があれば、中学高校と勉強嫌いだった私がアメリカの大学で「勉強って面白い!」と思ったきっかけなどをご紹介したいと思います。

笠井 縁(かさい ゆかり)

ユタ日本語補習校 小学部担任


アメリカの小さな補習校で多文化の中で成長する子どもたちと一緒に学んでいます。アメリカの現地小学校でも非常勤で子どもたちと接し、日本との違いに驚くこともありますが、子どもたちの学びの過程には共通する部分も多いのではないかと思っています。

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