2022.01.15
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学校における働き方改革と部活

学校における働き方改革で最重要課題とされている部活について考えます。
部活は本当に学校から無くしていいのでしょうか?

旭川市立大学短期大学部 准教授 赤堀 達也

はじめに

現在、学校における働き方改革が進められています。
しかし部活は本当に学校から無くしていいものでしょうか?
今回はこの件について考えていきたいと思います。

国際機関の調査によると…

日本の教員の長時間労働が問題となっています。先進38ヶ国が加盟する国際機関OECD(経済協力開発機構)の2018年の調査結果によると、日本の教員の1週間当たりの平均仕事時間は56時間(中学校)となっています。
法律上の労働時間の上限は「1日8時間・週40時間」ですから、異常な程の長時間労働が常態化してしまっていることがわかります。ちなみにOECD38加盟国の平均仕事時間は38.3時間です。

その最たる原因が部活となっており、そのため文部科学省が慌てて部活を地域スポーツクラブへ移行しようと動いています。

部活したい教員の割合

しかしその一方で、部活を担当したい教員もいます。こちらの記事は「部活したくない教員」について書かれたものですが、逆に読んでください。2018年の段階では「部活したくない教員:部活したい教員=5:5」となっています。部活したくない教員が5割もいるとなっていますが、裏を返せば「部活したい教員」も5割もいます。部活したくて教員を選んだ人もかなり多いはずです。それなのに地域に移行してしまってもいいのでしょうか?

そういう私も、約20年前に部活指導(スポーツ少年団の指導)したいために小中高の教員を目指していました。しかし校長教頭の命で小学校教員がスポーツ少年団の指導から外されるという現在と似たような風潮があったため、教員になるのをやめてバスケットボールの指導の道に入ったものです。私は人生の勝負に出て、たまたまそのような道に進むことができましたが、そこまで勝負はしなくても部活指導を夢見て教員になる人は結構います。

部活は日本の文化

部活は日本の文化であると私は思っています。高校野球・大学箱根駅伝といった盛り上がりを見れば一目瞭然でしょう。海外とは異なる文化です。それなのに海外からの指摘で改革が進められている様子を見ると、まるで「海外のように家の中は靴で過ごす」ことを強要されているのと同じような感覚の気がするのですが、私の勘違いでしょうか。部活時間の削減はそこまで強引に進めるべきことなのかと疑問に思っています。ちなみに2018年の調査結果は2013年よりも、中学校教員の仕事時間と課外活動の時間は増加しています。もしかしたら改革の焦点が違うのでは?と思っています。

本来の改革の焦点は?

それよりも生徒たちが8時くらいに来て16時くらいまで時間割に縛られた生活をしなければならない程のカリキュラムの方を考えていくべきではないでしょうか?教員は必然的にそれ以上の時間が勤務時間となるからです。そこまでしなくてはこなせないカリキュラムの削減にまず手を付けるべきです。部活は短時間で指導しろと言いながら、勉強は長時間のままでは説得力がないでしょう。

最後に

今の部活体制の全てがいいとは思いません。長時間の犠牲を強いながら部活したくない教員にも押し付けるようなものや、暴力暴言指導は変えていくべきです。しかし部活の効果も考えるべきです。

ラグビー・野球・女子バスケ・柔道・卓球・バドミントン・男子フィギュアなどが世界最高峰の舞台でも引けを取らずに活躍しています。いずれも「チーム一丸」となって戦った結果です。確かに柔道・卓球・バドミントンなどは個人競技ではありますが、日本チームとして強くなっているため、チーム一丸と言っても過言ではないです。この精神は、日本の部活したい熱い教員が、部活で指導してきたからこそ培われた「日本オリジナル」のものではないでしょうか。

私は、日本の部活は世界にも誇れるものだと思っています。それを残しながら学校における働き方改革を進めることはできないのでしょうか。

赤堀 達也(あかほり たつや)

旭川市立大学短期大学部 准教授・北海道教育大学旭川校女子バスケットボールヘッドコーチ
これまで幼児・小学生・中学生・高校生・大学生と全年代の体育・スポーツ・部活動指導してきた経験から、子どもの神経に着目したスポーツパフォーマンス向上を図る研究を行う。

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