2021.11.05
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教員とカウンセリング

「カウンセリング」という言葉を聞くと、どのように考えますでしょうか。
学校の中で行われるものでしょうか、それとも外で行われるものでしょうか?
学校の先生は「カウンセリング」ができなければいけないのでしょうか?
スクールカウンセラーだけの仕事なのでしょうか?
実は私も「これがカウンセリングだ!」と自信をもって説明できるわけではありません。
今回は「教員とカウンセリング」というテーマで一緒に考えることができればと思います。どうぞよろしくお願い致します。

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭 丸山 裕也

クラスで育てているフルーツの花の写真です。

​​​​​​​これはいったい何の花の写真かわかりますか?
(答えは後程!)

カウンセリングっていったい何だろう?

学校心理士、臨床発達心理士、臨床心理士…それ以外にも様々な「心理」の資格があります。近年では「心理」の国家資格として「公認心理師」という資格も生まれました。

以前、この「公認心理師」の資格を取った時に、同僚の教員から「その資格があると何ができるの?」と尋ねられました。
「カウンセリングができるの?」と聞かれたこともあれば、「先生がその資格を持っていると何かメリットがあるんですか?」と聞かれたこともあります。「スクールカウンセラーと同じことができるんでしょ。」と言われたこともあります。
さて皆様が同じ立場なら、こういった質問にどのように答えますでしょうか?「心理」の資格があれば、スクールカウンセラーのようにふるまうことができるのでしょうか?

私は「公認心理師」の資格がありますが、職業としては県立の特別支援学校の教諭です。学級や学年で主任の立場をしています。当然毎日の業務の主は「子どもとのかかわり」となります。子どもとのかかわりの場面で、誉めることもあれば、叱ることもあります。一緒に遊ぶときは全力で遊んで、一緒に悩むときは全力で悩んで、そんなメリハリのあるクラス運営を目指して頑張っています。
先ほどお見せした写真は「リンゴの花」です。「リンゴってこんな花が咲くんだね。」と大人も子供もびっくりしています。クラスでは野菜だけではなく、フルーツも栽培しています。学校で一番楽しいクラスを目指して、日々を過ごしています。

例えばこの記事を読んでいるあなたがこのクラスに転校してきました。ある時、担任の先生である丸山に何かしらの理由で叱られたとしましょう。怒られたあなたの気分は「悲しい」でしょうか。なんとなく、胸の中がもやもや「嫌な気持ち」になっているかもしれません。「悪いことをしたのは私だけど、でもあんなに叱らなくてもいいじゃない」と思っているかもしれません。「最近頑張っていたのに、悲しいなぁ」と気落ちしているかもしれません。

さて、そんな出来事の後に、担任の丸山が再び現れました。そして、元気のないあなたに近づきながら、にこやかにこういうのです。「あれ、元気がないな。さぁ、なんでも先生に相談してみよう。」と。
…なかなか相談しにくいですよね。

カウンセリング・マインドの視点で。

心理学の世界では「多重関係」という言葉があります。これは「カウンセリングをする立場」と「受ける立場」以外に、例えば「恋人同士」であったり、「親子」であったりする関係のことを言っていて、当然その関係には「担任」と「生徒」も存在します。
スクールカウンセラーのような立場では「カウンセリングをする立場」と「カウンセリングを受ける立場」以外の関係は避ける必要があるとされています。
その観点で考えると、教員がスクールカウンセラーと全く同じ立場に立ってカウンセリングをすることはできないと考えることができます。

ですが、カウンセリングと同じように、「あなたの話を聞きたい」「あなたの気持ちを受け入れたい」という思いを持つことはとても大切なことです。このことを「カウンセリング・マインド」といい、教員にはとても大切な力だとされています。
ついつい、経験豊富な先生はこれまでの実践から自分のやり方にあてはめてしまうことが多いようです。でも、子どもはみんな違う唯一無二の存在なのですから、一人ひとりどんな気持ちなのか、今何を考えているのかを考えていくことって、大切なことだと思いませんか?

先ほどの話ではないですが、いきなり「さぁ、なんでも相談して!」といっても、なかなか難しいですよね。
まずは、なんでもないようなお話から始めてみるといいかもしれませんね。
例えば、今日の冒頭、皆さんにご紹介した「リンゴの花の写真」
これをプリントアウトして、休み時間などに「これが何の花かわかりますか?」と聞いてみるというのはどうでしょうか。
「ぼく、知ってる、これはリンゴの花だよ。図鑑で見たことある」と話してくれる子や、「へぇ~、リンゴの花なんだ。私の好きな果物だ!」と話してくれる子が出てくるかもしれません。当然、「知らない。わからない」となるかもしれませんね。

ふとした話から、新しい話になることも、きっとあると思います。新しい話が、別の話に。そして別の話が、相談につながっていくかもしれません。
そんなときカウンセリング・マインドの視点を忘れずに「自分の価値観を押し付けるのではなく、相手の価値観を受け入れること」。
そういった姿勢が信頼関係を構築していく上でとても大切だと私は考えています。

「カウンセリング・マインド」の視点、私たち教員は忘れないようにしたいですね。

丸山 裕也(まるやま ゆうや)

信州大学教育学部附属特別支援学校 教諭
公認心理師、学校心理士、障害者スポーツ指導員(初級)、福祉用具専門相談員
「あした、またがっこうでね。」と、子どもも教師も伝え合うことができるような、楽しい学級づくりを目指しています。また、障害のある子どもたちの心の健康について、教育と心理の二面からアプローチしていく方法を考えています。
特別支援学校で出会ってきた子どもたちとの学びを、皆さんにお伝えしていきたいと思っています。


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