2021.07.02
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国語の発問ってなんでしょう?

授業づくりで大切なことは「発問」です。発問には2つの機能があります。 それは「潜在の顕在化」と「思考環境の整備」です。 今回はそれらについてお話ししたいと思います。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【授業の核となるもの】

こんにちは。みなさん授業づくりを楽しんでいるでしょうか。授業づくりこそ、教師の醍醐味の一つだと思います。しかし、現実問題として授業づくりは大変です。児童の実態を把握したり、教材を深く読み込んだりと厖大な時間がかかります。多忙な教育現場では、毎日の授業のために効率的な授業づくりが求められます。
授業展開を考えるとき、みなさんは何を核としていますか。言語活動ですか。対話ですか。それともICT活用ですか。私は「発問」です。「児童文学作品」を「教材」に変換させるのは発問です。そのため、私は授業の核は発問だと考えています。

【禅における発問】

そもそも発問とはなんでしょう。手元の辞書を引いてみると次のようにあります。

「問いを発すること」

読んで字のごとくですね。日本における禅思想を大成させた曹洞宗の僧侶、道元は「発問」という言葉を使用しています。これは自らが発した「問い」という意味で使われていますが、教育現場で使われる発問とは異なります。では、教育現場での発問とはどのような意味でしょうか。

【教育における発問】

「発問」と「質問」はよく比較されることがあります。両者の違いはなんでしょうか。

・発問→問う者(教師)が答えを知っている問いかけ
・質問→問う者(質問者)が答えを知らない問いかけ

これが発問と質問の違いです。しかし、先ほど禅における発問で説明した通り、教育現場でのみ使用されている狭義であることを理解しておく必要があります。
まだ抽象的ですね。もう少し発問という言葉について考えてみましょう。

【発問の要件】

文部科学省は同省Webページ「CLARINET」の中で発問の4つの要件を示しています。

1.何を問うているのかがはっきりしていること。
2.簡潔に問うこと。
3.平易な言葉で問うこと。
4.主要な発問は、準備段階で「決定稿」にしておくこと。

これは、「予め決められた、明瞭な発問」が良い発問だと解釈できます。授業は全員参加です。すべての子どもが教師の問いを理解できるよう、シンプルで分かりやすいものが求められます。
では、発問はなぜ必要なのでしょうか。主に2つの理由があります。
それは

①潜在の顕在化
②思考環境の整備

です。順を追って説明します。

【潜在の顕在化】

子どもは個々で文章を読み取る力に差があります。しかし、それらは一見して目に見えません。想像してください。一斉に音読をしているときに、正確に読み取れている子と、読み取りに不備がある子の差が分かるでしょうか。少なくとも私には分かりません。だから問うのです。問うことによって、この子はどこまで読み取れているのか目に見えるようになります。具体例を挙げて説明します。

「雪だるま星のおしやべりぺちやくちやと」

これは能楽師の家に生まれた俳人、松本たかしの俳句です。難しい語彙はありません。難解な文脈もありません。ですから、これを子どもに一読させると、殆どの子は「情景が想像できる」と言います。でも、本当に全員が正確に読み取れているのかは分かりません。だから問います。

発問…「この場面は、A雪が降っている B雪が降ったあと ノートにAかBを書きましょう」

みなさんはどちらだと思いますか。正解はBです。なぜならば、「星のおしやべり」とは「星がきらきらと輝く様子」の比喩です。雪が降っていてはそんな夜空を見ることはできません。だから場面は「雪が降ったあと」です。
しかし、子どもに問うと、約半数はAと答えます。それは「雪だるま」が意識に強く残り、雪が降っている様子を思い浮かべてしまうからだと考えます。こうした子どもの「潜在」しているものを「顕在」にするために発問をするのです。

【思考環境の整備】

「子どもに思考させなさい」という言葉をよく耳にします。思考することで、授業はより奥深く、楽しいものとなっていきます。では、人はどのようなときに思考するのでしょうか。
植草学園大学教授の戸丸俊文先生は次の3つの場面だと言います。

「拡散」…ラーメンにはどんな味ありますか。
醤油、味噌、塩などいろいろな解答があるでしょう。これが拡散する思考です。

「集約」…ラーメン屋A店、B店、C店の共通点はなんですか。
太麺、ネギがのっているなどが考えられます。これが集約する思考です。

「対立」…自分が好きなラーメンは何ですか。
醤油ラーメンが好きな人もいれば、味噌ラーメンが好きな人もいます。どちらが正解ということはありません。しかし、互いに好きな理由を語ることができるでしょう。これが対立する思考です。

具体例を挙げて説明します。5年生の『大造じいさんとガン』で考えてみましょう。通読したあとに思考が拡散する発問をします。

発問…「情景描写をノートに書き抜きましょう」

情景描写はいくつもあります。子どもたちは文章を自ら読み直し、探し出します。「秋の日が、美しくかがやいていました」「東の空が真っ赤に燃えて、朝が来ました」などが正答例です。問われなければ、気に留めなかった一文も、問われることによって思考することができます。

というわけで今回は「発問」をテーマにお話ししました。このような理由から、私は発問作りに重点を置きます。では、どのように発問作りをすればよいのでしょうか。そこには「素材研究」が欠かせません。次回は「素材研究」についてお話したいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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