2021.05.19
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5月のマインドセット

第3回は、本校(高知大学教育学部附属小学校)算数研究室の本棚で、偶然見つけた古書を紹介します。本校の大先輩でもある北村誓男先生の講演テープを、高知県学校教育相談研究会の会員の方が、書き起こしたものです。
巨人の肩に乗り、そこから見える前後の景色をみなさんと共にする連載。「温故知新」の3回目です。
先人の言葉を引用しながら、現代の教育課題解決のヒントを探っていきましょう。
今回は、学級経営。新学期が始まって一ヶ月あまり。そんな今だからこそ、考え直したいこと。教師の5月のマインドセット。

高知大学教育学部附属小学校 森 寛暁

子どもに言っている3つのこと

学級開き。先生方は、自身の教育観や子ども観をどのように子どもに伝えていますか。「こんなふうにやりましょう」「これは守りましょう」「これは先生からのお願いです」などと言われているのではないでしょうか。期間は、いわゆる黄金の三日間。ナンバリングして、簡潔に伝える。さらに、ポスターにして教室掲示する方もいらっしゃるでしょう。

では、その目的は一体何でしょうか?
私は、子どもに基準を伝えることだと考えています。

基準がない場合。
教師は、指導がブレます。子どもは、判断が難しくなります。

一方、基準がある場合。
教師は、一貫した指導が行えます。子どもは、善悪の判断を振り返られます。また、基準があると、柔軟に修正することができます。

もちろん、一年後の理想の姿をイメージしたり、実態に合わせたりして、目指す姿を伝えますから、教師の教育観や子ども観自体が、子どもにとっての目標にもなります。しかし、「必ずしも守るもの」ではなく、「目指すもの」「一つの基準」でありたいです。つまり、子どもにとって、わくわくする指針でありたいのです。

そこで、北村誓男先生の言葉を引用したいと思います。
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今、学校で子どもに言っている三つのことがありますが、それは、子どものことばに集約した重点目標です。
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氏の言葉をまとめます。
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一 じぶんとおなじように人を大事にしよう
二 じぶんを上手に運転しよう
三 きのうのじぶんに勝とう
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一は、人間尊重の精神と自分勝手な自己中心的な行動の反省をしていきたいもの。人間性の涵養です。
二は、主体性の確立。自己調整能力やメタ認知といってもよいでしょう。
三は、スモールステップでの自己変革を促しています。他と比べていませんので、自己コントロールして成長の自覚につながります。自己効力感や自己肯定感といってもよいでしょう。

このように、昭和52年の録音内容にも関わらず、現代の学習指導要領の趣旨と一致します。

教師の態度の型

態度の型

図は氏の図を参考に筆者が作成

次に、我々教師自身の態度の型を考え直したいと思います。読者の先生方は、ご自身の態度が、どのあたりか、一度考えてみてください。
そして、これから来る6月、7月の具体的な指導方法を再考してみてください。

書籍では、氏は心理学者サイモンズの養育態度を引き合いに出しています。先述の三つの重点目標や態度の型から、基準を明確に持つことの大切さが分かります。

子どもは天からの…

預かりもの。

「子どもは天からの授かりもの」が通説です。しかし、氏は「子どもは天からの預かりもの」だと言っています。

その心は、氏の教育観、子ども観、指導観に根付いていました。

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親は子に対して権力を持っておりますので、自分本位であれば自分の品物だという姿勢だったら駄目です。(中略)やっぱり、子どもはあずかっている。一人前のして子どもに返してやるべきだ。そういう姿勢でやっていくべきだと思います。
『知らぬ間の教育』高知県学校教育相談研究所編、明治図書(初版昭和58年)
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親に対して語っている内容ですが、教師にも当てはまります。

最後に書籍を通して、氏は子どもの自立を願い、指導するという考えを貫いていました。

森 寛暁(もり ひろあき)

高知大学教育学部附属小学校
まっすぐ、やわらかく。教室に・授業に子どもの笑顔を取り戻そう。
著書『3つの"感"でつくる算数授業』(東洋館出版社

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