2021.04.30
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語彙力ってなんだろう?(2回)

子どもたちの語彙力向上が求められています。 どうすれば、子どもたちに語彙力をつけることができるのでしょうか。 今回は国語の授業を通して、子どもに語彙力をつける方法をご紹介します。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

【小学校段階における国語教育】

こんにちは。山本裕貴です。小学校教師のほとんどが国語を担当していると思います。それは、一週間あたりのコマ数が他の教科に比べて多いからです。なるほど。ということは、国語は大切な教科として位置づけられているのでしょうか。みなさんはどう思いますか。

文部科学省の見解はどうでしょうか。
文部科学省のWebページには「国語力を身に付けるための国語教育の在り方」というものが掲載されています。そこに次のような文言があります。

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国語教育に関し、特に重要な役割を担うのは学校教育であるが、その中でも小学校段階における国語教育は〇〇〇〇〇である。
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〇〇〇〇〇の中に当てはまるものはなんだと思いますか。
正解は「極めて重要」です。私たち小学校教師は、極めて重要な教科を担っているということを認識すべきです。

【情緒・論理的思考を支えるもの】

前述の「国語力を身に付けるための国語教育の在り方」の中で、育成すべき力も示されています。
それは、「論理的思考力」と「情緒力」です。物事を論理的に考えること、それを円滑に調整するための人間関係を形成することは全ての国民が身に付けるべきものです。

そして、これらを根底から支えるのが「語彙力」です。人は語彙を使って思考します。
自分の持っている語彙以上の思考はできません。
だから、語彙を増やすことが論理的思考力・情緒力を育成する土台となるのです。
では、語彙とはなんでしょうか。手元の辞書を引いてみると次のように書いてありました。

「特定の人物が持っている単語の総体」

つまり「語彙力がある」とは、「単語をたくさん知っている」と言い換えることができます。
これらのことから、小学校段階の国語教育では語彙力を育成することが必要です。

【国語学力三要素】

授業の目的は「学力形成」です。つまり良い授業とは、学力が身につく授業です。
前回は国語の学力は「読字力」「語彙力」「文脈力」だとお伝えました。これは私の師である植草学園大学名誉教授の野口芳宏先生が提唱されていることです。

先程、「語彙力」をつけることの重要性についてお話させていただきました。
では、実際にどのように授業をすれば、そのような力が身につくのでしょうか。具体例を交えて説明していきます。

【語彙力をつけるには】

結論から言います。「チャンスを生かす」ことが大切です。

国語の授業において、子どもはたくさんの語彙に出合います。
そのほとんどは、教科書に載っているものです。つまり、教師が積極的に教えなければ、子どもは教科書に載っている語彙しか覚えません。
せっかく語彙に出合ったのに、教科書に書いてある語彙しか覚えられないのは、もったいないことです。

子どもが知らない語彙に出合った時はチャンスです。それを説明するのと同時に、関連した語彙をたくさん教えます。
光村図書5年生に掲載されている『なまえつけてよ』を例に具体的に解説してきます。

〇手順

・文章を読みます
・語彙に出合います 「牧場」
・その語彙について教えます

教諭「この熟語はなんと読みますか」
児童「ぼくじょうです」
教諭「まきばとも読みます」「牧は、牛や馬を養うという意味があります。場は場所という意味ですね」

・関連した語彙をたくさん教えます

教諭「牧がついた熟語は他になにがあるでしょうか」
牧草 牧野 放牧 牧地 牧牛 牧柵 牧舎 牧師 牧人

一つひとつを詳しく解説する必要はありません。できるだけ多くの熟語に触れさせることが大切です。子どもが語彙に出合うのは「チャンス」です。そのチャンスを生かすことが肝要です。

【知ることの喜び】

師である野口芳宏先生に、初めてお会いしたのは初任者のときでした。
そのとき、私は国語の授業が苦手でした。どうやっても楽しく教えることができないのです。
そんな状況を変えるべく、野口先生のセミナーに参加しました。
そのとき受けた授業の衝撃は今でも忘れることができません。「こんなにも、国語の授業は面白いのか」そう思いました。 

野口先生は多くのことを教えてくれます。チャンスを生かし、たくさんの語彙に出合わせてくれます。知らなかったことを知ったとき、自分の知識が増えていくのを実感したとき、うれしかったです。

昨今、授業で「思考力」に重きが置かれているように感じます。確かに思考させることは重要であり、反論はありません。
しかし、それと同様に知識獲得、つまり「教える」ことも重要ではないでしょうか。
知らないことを知れたとき、うれしいのは大人も子どもも同じだと思います。

というわけで今回は「語彙力」をテーマにお話ししました。次回は「文脈力」についてお話したいと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

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