2021.03.18
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涙をこらえるきみのための学級づくりの教室~心理的安全性~(8)

心理的安全性。
ここ最近、教育界でも聞かれることが多くなってきました。
心理的安全性は、「令和の日本型学校教育」の構築を目指す、個別最適化な学び、協働的な学びを実現する上での、キーワードになってくると思います。

高知大学教育学部附属小学校 森 寛暁

モノサシのひとつに

涙をこらえるきみのための学級づくり教室(8)

──今学期も残り数日。
わたし──小鳥ももは、休日の空を眺めながらぼんやり口ずさんでいた。「雲がいつの日も同じ方に流れるから〜」、踊ってばかりの国(日本のロック・バンド)の曲『光の中に』の一節。隣には無口の相棒。

「この一年間、わたしのクラスづくりは上手くいったのかな?ねえ、ナザシ」
「……」
「聞いてる!?」
「……うん」
「だったら何か言ってよ。何も言わないと不安なのよ」
「そうだよな。わかった。上手くいったかどうかなんてわからない」
「冷たいわね!」
「そうじゃない。落ち着いて聞いて。ももは、まだ経験が浅いから、上司や他の先生、保護者から認められたいんじゃないか?」
「……ドキッ」
「もも先生のクラスって上手くいっている、と思ってもらいたい気持ちが強いんじゃないか?」
「……正直、そう」
「それでいいんだ」
「えっ!?いいの!?てっきり、違うと言われると思った」
「誤解するな。〝今〟はそれでいい」
「だったら、わたしはどうすればいいのよ?」
「基準を自分の中に持つんだ」
「基準?」
「そう、つまり自分のモノサシで、学級づくりを判断するようになってほしいんだ」
「うん。いずれはそうなりたいけど、すぐには無理かも……」
「またぁ、すぐに諦めの言葉を口にして」
「だってぇー、わたしの性格知ってるでしょ!」
「うん。じゃあ一つ聞くぞ」
「いいよ」
「来年度は、どんな学級にしたいんだ?」
「……」
「学級づくりをする上で大切にしたい心の支えのようなものはあるのか?」
「……」
「ないんだな?」
「……ない。いや、まだ見つけられていないだけ!」
「(^ ^)」
「(^ ^)」
「嬉しくなったから、これからの学級づくりでのキーワードを言う。それは、心理的安全性だ」

心理的安全性のつくり方

実践例

ナザシが教えてくれた「心理的安全性」は、Googleの研究で注目を集めているそうだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
心理的安全性とは、率直に発言したり懸念や疑問やアイデアを話したりすることによる対人関係のリスクを、人々が安心して取れる環境のことである。
『恐れのない組織「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』エイミー・C・エドモンドソン著
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ももの回想が始まる。
学校教育の文脈で考えてみると、子どもが教師や他の子どもに恐れずに、素直に発言したり、不安や疑問やアイデアを話したりすることできる環境なのかな。確かに「心理的安全性」がクラスにあれば、子どもたちは自分の思いや主体性を発揮しながら成長していける。ナザシは「心理的安全性のつくり方」も教えてくれたなぁ。それは、クラスで大切なこと(したいこと)を明確にして、行動を増やすこと。言語化することが大切なんだそうだ。具体的には、学期に一度、クラスで話し合う機会を設定する。テーマは「学校生活をする上で大切にしたいこと」や「授業を行う上で大切にしたいこと」などを子どもと一緒に考え、板書に全ての意見を残すというもの。来年度は、学級開きでこの実践をやってみようかな。

ももはそう思いながら、17時の空を眺めた。

*登場する人物や団体、名称は架空のものです

恐れのない学校に

応援していただき、ありがとうございました。
小鳥ももとマ・ナザシの学級経営物語。「オラに相談する方が、気が楽かもよ?」その17文字から始まった、夕焼け空のような半年間の連載は終了です。

読んでくださる先生方やその近くにいる人が、疲弊しないように。後ろ向きになってしまった気持ちが、1ミリちょっとでも前を向くように。このような思いで、疲れたときでも、自身の心を奮い立たせて執筆してきました。

子どもにとって教室が恐れのない場所であるように、教師にとっても学校や職員室が恐れのない場所でありますように。

ありがとうございました。

森 寛暁(もり ひろあき)

高知大学教育学部附属小学校
まっすぐ、やわらかく。教室に・授業に子どもの笑顔を取り戻そう。
著書『3つの"感"でつくる算数授業』(東洋館出版社

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