2021.01.25
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東日本大震災から学ぶ社会科実践

「東日本大震災」から10年の月日が経とうとしている。小学生の多くは、「震災」のことが記憶になく(生まれておらず)、いわゆる風化が進んでいることを強く感じる。一方、地震や津波に限らず、豪雨や土砂崩れ等の自然災害は急増しているのが現状だ。過去の災害を知り、その災害を防いだり乗り越えようとしてきた先人たちの思いから学び、これからの社会を生きていくうえで大切なことを考えさせていきたいものである。 

以前に社会科の授業実践で、「東日本大震災」を扱った単元があるので、紹介する。

陸中海岸青少年の家 社会教育主事 村上 稔

6年社会科「暮らしの中の政治 ~災害からわたしたちを守る政治~」

内 容
6年社会科「暮らしの中の政治 ~災害からわたしたちを守る政治~」の授業実践である。

災害復旧の取り組みとして、風水害や土砂災害、地震や津波等の災害に対する国や地方公共団体の救援活動や災害復旧の工事等について調べる単元である。

◆単元の目標 
災害から国民の命や暮らしを守る政治の働きについて、国民と政治のかかわりについての基礎的資料などを調べることを通して、政治の仕組みや働きについてとらえることができる。

◆学習計画
【1】東日本大震災の発生とその被害の状況について調べ、被災地である本村や被災者の願いが、どのような政治の働きによって実現されていくか追究しようとする意欲をもつ。

・東日本大震災における各地の震度や被害の様子について調べる。
・「復興への願いは、どのような政治の働きによって実現されていくか」という単元の学習問題を設定する。

【2】被災した人々に対して誰がどのような支援を行ったのか調べ、国や地方公共団体等が連携した支援の仕組みについてとらえることができる。

・被災直後の人々の生活の様子について調べる。
・震災からの復旧や復興のために、国や地方公共団体がどのような取り組みがあったかを調べる。

【3】被災した人々の願いと国や地方公共団体の取り組みとを関連付け、震災の復旧、復興のためにどのような取り組みがあったかをとらえることができる。

・震災後、地域住民にはどんな願いがあったのか調べる。
・その願いに対して国や村がどのような取り組みを行ったか調べる。

【4】復興基本計画に基づいた取り組みを調べ、災害に強いまちづくりについてとらえることできる。

・復興基本計画の内容について調べる。
・調べた内容と高齢化が進む本村の課題とを関連付けて、まちづくりを進める上で大切にしたいことを話し合う。

【5】震災の復旧のために、まちや国の仕事にかかる費用はどこから出ているのかを調べ、税金がどのように使われているかとらえることができる。

・県やまちの復興にどれだけの金額がかかったかを調べる。
・復興のための予算は、どこから賄われているか話し合う。

【6】「復興への願いは、どのような政治の働きによって実現されていくか。」という単元の学習問題について、自分の考えをまとめることができる。

・本単元で使用したノートや学習資料をもとに、自分がまとめる観点の内容を整理する。
・新聞に自分の考えをまとめる。

第4時『災害に強いまちづくりのために、大切なことは何だろうか。』の紹介

◆ねらい
震災からの復興が求められる中で、復興基本計画が進められていることを調べ、災害に強いむらづくりとは、自分の命は自分で守ること、地域住民の命は地域で守ることが大切であることを考えることができる。

◆授業の概要  
まずは、地元自治体にある言葉「災害に強いまちづくり」について、どのようなイメージがあるか話し合った。発言の多くが防潮堤をはじめとしたいわゆるハード面についてであった。そこで、防潮堤などの「災害に強いむらづくり」の取り組みが、「一人一人の命が守られる」取り組みとして十分であるか検討し、他にどのようなことが大切か考えさせていった。

災害に強いまちづくりのために大切なことはなんだろう。

予想としては以下のような内容が出た。

・避難路の標識を作る。
・避難訓練をする。
・警察や消防との協力体制。
・住民一人一人の防災意識を高める。

課題解決のための資料として、地元自治体の復興基本計画を抜粋したもの、防災訓練の様子、震災後にできたメモリアル公園に関する資料等を準備した。
資料を読み取ったり全体で学び合ったりする際に、どのような点で『災害に強い』といえるのか根拠を明確にしながら考えさせていった。「総合防災訓練の計画」や「震災メモリアル公園の建設」等、まちとしての取り組みが、どのような点で「一人一人の命が守られるまちづくり」に結びつくか、根拠を明確に話し合った。

展開場面の後半では、役場の復興対策課の取材VTRを確認し、公助(ハード面)だけでなく住民一人一人の防犯意識「自助・共助」の視点も大切であることを確認した。

次回は、本実践の続きと振り返りについて紹介する。

村上 稔(むらかみ みのる)

陸中海岸青少年の家 社会教育主事


前任校では、社会科を専門として授業実践を積み重ねてきました。2020年4月から学校現場を離れ、社会教育主事として勤務しています。社会科の授業研究や社会教育全般について発信していきたいと考えています。

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