2020.11.17
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

学級がうまくいっている先生は何をしているのか?(No.3)

授業の中で、対話的な活動を取り入れている先生は、多くいると思います。では、対話にはどのような効果があるのでしょうか。意欲向上、知の集合の2段階があると思います。 私は、知の集合まで到達した対話を「生産的対話」と呼んでいます。今回は生産的対話をするための小ワザをご紹介します。

木更津市立鎌足小学校 山本 裕貴

「生産的対話」

みなさん、対話ってさせていますか?
学習指導要領に「対話」という文言が出てきました。授業の展開時に対話的な活動を入れることが多くの先生の意識の中に生まれたのではないかと思います。  
では、この対話的な活動は以前は行われていなかったのでしょうか。そんなことはありません。素晴らしい先人達の授業を調べると、授業の中で対話的な活動が取り入れられています。
つまり、対話的な活動は素晴らしい学級を作るために必要なことだといえます。では、対話にはどのような効用があるのでしょうか。
私は2つの段階があると考えます。

(1) 意欲向上
(2) 知の集合

1つめの段階では、自分の考えを伝えたり、友達の考えを聞いたりすることで学習に対する意欲が高まります。2つめの段階では、自分一人では解決できなかった課題を、みんなで知恵を出し合い、解決に導きます。
2つ目の段階まで到達した対話を私は「生産的対話」と呼んでいます。では、どうすれば無目的な対話を避け、生産的対話を行うことができるのでしょうか。今回は「対話」に焦点を当てた小ワザを3つご紹介させていただきます。

【小ワザ1 記述発言】

授業の中で対話を入れてみるけれど、なかなか話すことができない子もいると思います。私はずっと考えていました。「話すことができない子は、本当に考えていないのだろうか」と。
違います。話し方、話す内容が分からないだけなのです。私たちもそうですよね。未知の領域について、今から話してくださいと言われて、すらすら話すことができるでしょうか。子どもも同じだと思います。
では、どうすればよいのか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!記述発言!」詳しく説明してきます。

私たちが人前で発表するとき、どんな準備をするでしょうか。多くの人は、話す内容を紙に書いてまとめると思います。そうなのです。紙にまとめることで、思考が可視化され、整理されるのです。そこから、話せばよいのです。
4年生国語科「秋の楽しみ」における「秋の言葉集め」で具体的に見ていきましょう。

〇手順

・ノートに書かせる。(個別思考)
「秋に関する言葉はどんなものがありますか。ノートに書きましょう」
・ペアと伝え合う。(情報交換)
「書いた内容をペアに伝えましょう」
・発表する。(全体共有)
「2人で思いついた言葉を、発表しましょう」

なかなか話せない子どもには、ノートに書いてあることを読むだけでよいと伝えます。そうすることで、話し合うことの心理的なハードルが下がり、参加しやすくなります。

【小ワザ2 ナンバリング対話】

対話的な活動をするときに、どのような指示を出していますか。 「お隣の人と、話してみましょう」「近くで相談しましょう」などが多いと思います。しかし、この指示だと毎回同じ人と話すことになります。数回ならばよいですが、授業の中で何度も同じ人と話すのはマンネリ化を引き起こすリスクがあります。
では、どうすればよいのか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!ナンバリング対話!」詳しく説明してきます。

話し合う組み合わせごとに記号を振っておきます。横の組み合わせはA、縦の組み合わせはB、斜めの組み合わせはC、グループ(4人組)はG、立ち歩いて全員と話し合うときはFというように事前に決めておきます。そして対話的な活動に入る前に、教師が話し合うペアを指定します。

例えば次のように指示を出します。
「伝統工芸には、どんなものがありますか。Aで話し合いましょう」
このように話し合う相手をナンバリングして、話し合う対象を指定することでマンネリ化を防いだり、多様な考えに触れたりすることができます。

【小ワザ3 オリエンテーション学習】

社会科において調べ学習は、子どもの探究心を育てる上で欠かせないものです。しかし、調べ学習の多くは、資料を個別で読み取る活動になります。個別が有効な場面もありますが、これには2つの欠点があります。

(1) 多様性の欠如
(2) 読解力の差異

個別に資料を読み取ることで、自分の見方・考え方以外に思考が深まりづらくなります。さらに、子どもの読解力に差があります。読み取りが得意な子はたくさん調べることができますが、苦手な子は少ない情報しか得ることができません。
では、どうすればよいのか。ここで小ワザを使いましょう。「小ワザ!オリエンテーション学習!」詳しく説明していきます。

個別で読み取る活動では、対話は生まれません。よって、対話が生まれるような仕組みを教師が用意する必要があります。そこで、資料を教室のいろいろな場所に配置し、自由に立ち歩いて調べる活動をします。
4年生社会科「成田空港と千葉港の違い」を例に見ていきましょう。

〇手順

・成田空港の輸入品の資料(A3サイズ)と千葉港の輸入品の資料(A3サイズ)を用意します。
・教室のいろいろな場所に掲示します。(ロッカー、壁、教卓など)
・子どもはノートを持って立ち歩き、好きなところから調べます。
・グループに戻って調べたことを共有します。

この学習のメリットは、調べている最中に自然発生的に対話が生じるところです。また、一人で読み取れないところも、友だちに聞きながら調べることができます。これにより、上記の欠点2つを補うことができます。

「対話とは人間の営みである」

「教える」という言葉には2つの意味があります。1つ目は直接的教授です。これは、先生方がやってらっしゃる授業など、直接指導をすることです。2つ目は間接的教授です。これは「〇〇先生の自ら体を動かす姿には教えられるなあ」などと、その人の生き方、行動によって間接的に教えを受けることです。  

私は今、4年生を担任しています。一緒に学年を組ませていただいているのは、ベテランの学年主任です。私はこの先生の生き方に教えられることが多くあります。  
先生は誰もが認めるベテランです。しかし、誰よりも教材研究をします。すべての授業においてノートを作り、どうすればより良い授業ができるか、いつも悩んでいます。
先生は、誰よりも子どもを愛します。いつも休み時間には校庭で子どもと遊んだり、授業の合間に子どもと談笑したりしています。厳しく指導されることも多いですが、子どもは先生を慕っています。それは愛が伝わっているからだと思います。   先生は、私にいろいろな話をしてくださいます。仕事の話だけでなく、家族のこと、趣味のこと。先生と話していると、私は心地がよくなります。そのとき私は気付きました。
「対話とは、問題を解決するだけのものではない。人間関係づくりのためにも必要なのだ」と。  
本当に、先生には教えられます。  
ということで今回は、対話に関する小ワザをご紹介しました。次回は、生活指導で使える小ワザをご紹介します。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

山本 裕貴(やまもと ゆうき)

木更津市立鎌足小学校
千葉大学大学院教育学研究科学校教育学専攻
木更津技法研所属

高校、特別支援学校、小学校算数専科を経て、現在小学校の学級担任をしています。
人を幸せにするには、どうすれば良いのか。たどり着いた答えが小学校の先生でした。
教育の根本・本質・原点を問い続けていきます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop