2020.10.12
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アメリカ公立校と日本語補習校より

はるばるアメリカの中西部ユタ州より、教育つれづれ日誌の執筆陣に加えていただける事となりました。初回ですので、私の働く二つの学校についてお話したいと思います。

ユタ日本語補習校 小学部担任 笠井 縁

はじめに

私は平日は現地の小学校で働いていて、非常勤のインターベンショニスト(interventionist)として学年相応の英語リーディング力を持たない児童のお手伝いをしています。土曜日はユタ日本語補習校で担任を受け持ちつつ、教務に関わる雑務もやっています。夫は日本は好きだけど和食は苦手で、日本語は話せないアメリカ人。息子は補習校のおかげでなんとか日本の漫画を楽しめるバイリンガルに育っている小学6年生。家庭内では父子は英語、母子は日本語、夫婦の会話は英語という言語環境です。

日米の学校比較や、補習校での授業実践、バイリンガルの子どもたち、また海外駐在家庭で育つ子どもたち等について書いていこうと思います。

私が働いているアメリカの中都市の公立校について

英語のポスター①「学校に戻ってきてくれてうれしいよ!」と英語で。ウサギなのでhappyをhoppyとしたダジャレになっています。

さて私が平日に働いている現地の小学校では、イマージョン(immersion)プログラムを取り入れています。日本にはないプログラムなので、まずはここから入っていきましょう。第二言語習得と多文化(多様性)理解を目的とするこのプログラムはアメリカでは年々増えていて、多いのはスペイン語、中国語、次いでフランス語のようです。児童は英語で話す担任の先生と第二言語の先生がペアで受け持ち、午前が英語なら、午後はスペイン語というふうに毎日教室を入れ替わります。第二言語の先生は言語だけを教えるのではなく、第二言語で州が定めた教科学習を行います。子どもたちはよく混乱しないものだなぁと思いますが、それがイマージョン=どっぷり浸るというプログラムの在り方なので「そういうもの」として育っていくようです。

①と同じポスターのスペイン語版

ただし、スペイン語イマージョンの場合は英語以外の第二言語習得という意味合いとは少し違う場合もあります。児童には移民またはマイノリティー家庭の子も多く、家族間ではスペイン語で話しているので逆に英語が苦手という場合も多々あります。そういった背景もあり、校内の掲示物なども基本的に英語とスペイン語の両方。また保護者へのお知らせなども全て二カ国語で作成されます。

ミドルスクール6年生のカバンの中身公開!

先ほど教室を入れ替わると書きましたが、これも日本とは逆ですね。アメリカでは担任の先生は教室を固定で使います。(先生用の休憩室はあっても教務室はありません。)先生は移動せず、生徒が自分の荷物をトレイに入れてバックパックを背負い、もう一人の先生の教室に移動していきます。それが比較的簡単にできるのは、ペアの先生方は隣同士の教室なので移動距離が短く、また生徒の持ち物が少ないからだと思います。

参考までに、6年生(我が家の近隣では6年生からミドルスクール=中学校)の息子の持ち物を写真に撮りました。中学生でこれだけです。登校して授業は受けていますが、コロナ感染対策で提出物は全て学校から貸し出されたクロームブックにてオンライン提出(クロームブックは全生徒に1台ずつ自動的に貸し出されました)。あとはバインダーのみ。スケッチブックは選択科目で美術と陶芸を取っているのでその授業用。コロナ以前でも、息子が小学生だった時は、彼のバックパックには基本的にお弁当しか入っていませんでした。給食を食べる日は空っぽで登校。時々授業中にやったプリントをまとめて持って帰ってきたかな、という感じです。教科書兼ワークブックみたいなものがあったようですが、それはクラス全員、日本でいう「置き勉」でした。

アメリカは広い国ですから、州や地域により、また公立と私立ではかなりの違いがあります。私の職場も息子が通うのも公立ですので、これからの記事でも「アメリカの中都市の公立校」のお話、だと覚えておいていただけると助かります。

日本語補習校

さて、私が働くもう一つの学校、日本語補習校はご存じの通りいつかは日本に帰る子どもたちが、海外にいる間でも学年相応の日本語や学力を身につけ維持するための非正規の学校です。これも一口に補習校とは言っても千差万別。アメリカ国内でも大都市では9割以上が駐在家庭の日本人の子どもたちで、教えている先生方も日本で教職を持たれていた方が大多数という大規模校から、1学年10名以下で生徒も国際結婚家庭の子どもたちが多く、教員のほとんどが保護者でもあるというような小規模校まで。それに加えて補習校は世界中にあります。日本政府の認可を受けている補習校も、そういった補助なしで保護者が自分たちで運営している所も。

ユタ日本語補習校は数年前に政府認可は受けましたが、それ以外は後者で年少から中学3年までの全校生徒が100名程。私を含め、教員はほとんどがやる気と善意の、単に子どもや教える事が好き!という面々です。

さいごに

「学びの場」に集っていらっしゃる先生方は、日本で教壇に立たれている方がほとんどだと思います。私の職場はそういう学校とはかなりかけ離れた「学校」ですが、学びと教えるという行為や視点においては共通する事も多いです。これからも遠くユタからのつれづれ日誌にお付き合いいただけますと幸いです。

笠井 縁(かさい ゆかり)

ユタ日本語補習校 小学部担任


アメリカの小さな補習校で多文化の中で成長する子どもたちと一緒に学んでいます。アメリカの現地小学校でも非常勤で子どもたちと接し、日本との違いに驚くこともありますが、子どもたちの学びの過程には共通する部分も多いのではないかと思っています。

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