SNSでの情報共有
本日は前回最後の予告とは多少異なりますが、SNSと表現力について考えてみたいと思います。
子どもたちが利用しているSNSのトップ3は勤務校での調査によると、LINE・Twitter・Instagramでした。その3つをTikTokが追い上げています。
LINEは既に社会インフラの一部と化しているとも言えるので、細かい説明は不要だとは思いますが、文字情報はもちろん写真・動画やスタンプによる画像情報など様々な手段で情報伝達が可能です。Twitterは文字情報であれば日本語入力で140文字という制限があることに大きな特徴があり、Instagramは写真・動画による画像情報での情報伝達手段との印象が強いです。
SNSを介してのコミュニケーションにより、大なり小なりのトラブルが発生しているのは、どこの学校も同じだと思います。この根本的な原因は子ども達の表現力不足にあると考えています。SNSの使用を禁止するのは簡単ですが、それでは問題の解決にならないことはもちろん、逆に問題が陰湿になると感じています。学校では今後ICT活用の一環として、SNSの上手な活用方法を考えていく必要があると思います。そこで注目すべきは、SNSによる文字情報での情報共有ではないでしょうか。文字情報の情報共有を通して、子ども達の表現力育成は確実に可能であると考えます。
電話かFAXかメールか
私が社会人になった1996年は、Windows95が発売された影響で家庭にも職場にパーソナルコンピュータが入ってきた最初の年と言えるでしょう。その影響だと思いますが、社会人になってすぐに先輩社員から言われた言葉として、「電話をかけて口頭で用件を伝える前に、ちょっと考えよう。その用件は、FAXを送っておけば済む内容ではないか?メールを送れば済む内容ではないか?FAXかメールか、どちらが迷ったらメールにすること」があります。さらに続きとして、「電話は相手の都合を考えない情報共有手段である。電話に出られたとしても他の業務で取り込み中かもしれない、不在かもしれない。不在であればメモを残してもらうなどすると周囲の方にも迷惑をかける。そんな相手の時間を奪う情報共有手段よりも、相手の都合が良い時間に見て対応してもらうFAXやメールの方が便利であるし、紛失やコストの事を考えるとFAXよりメールの方が便利である」とのことでした。場面によっては賛否あると思いますが、業務を行う上での基本方針になっています。20年以上たったいまでも十分には実践されていないですが。
いまのSNSはさらに便利な面があると思います。多くのSNSでのメッセージのやり取りはチャット形式で通常の会話と同様に行えます。既読であるか否かの区別をつけることもでき、スピード感のあるやり取りができます。ただし、文字情報で正確に意図を伝えなければならないところに子ども達の表現力育成の可能性と必要性があります。
文字情報による表現力育成
さて、どのようにすればSNSを用いて文字情報による表現力育成ができるのか?現段階では明確な答えも、十分な実践もありません。しかし、Microsoft TeamsやGoogle classroomなど様々な教育現場で活用できるSNSサービスがあり、コロナ禍で新たに導入した学校も多くあると思います。これらの活用を通して文字情報による表現力育成が可能であると思います。
例えば、教員が朝礼での連絡事項を配信する、回答が必要なものをメールやチャットで生徒から教員に連絡する、生徒間での連絡事項や情報共有も文字情報で配信する。このようなやり取りで、少なくとも口頭での言った言わないの水掛け論は回避できるでしょうし、正しく読み取る努力も正しく伝える努力も必要になります。そのようなやり取りのみを行っていると口頭で用件を伝える言語能力が低下するとの声もありますが、ホームルーム活動も含めた授業の中で協働作業を通してディスカッションをする、プレゼンテーションを作成し発表するなどの活動で対応できます。そうなるとやはり教員は、何についてのディスカッションやプレゼンテーションをさせるのか問いを立てる能力や、困難を取り除きながら進行するファシリテーションスキルが必要になります。
やはり新しい学習指導要領で求められる、知識技能だけではない思考力・判断力・表現力等の育成や、主体的に学習に取り組む姿勢の育成が重要となることが、別の視点からも明らかになります。
石丸 貴史(いしまる たかふみ)
福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。
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