2020.06.08
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ICT利活用

前回「ICTとは?」として、「情報」と「コミュニケーション」の「(新しい)技術」であることから、やや抽象的な内容を書きました。今回はやや具体的な内容を書きたいと思います。

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任 石丸 貴史

学校で「情報」の扱い例

学校ではさまざまな案内がプリントで配布されることが一般的です。

教職員は、教科担任やクラス担任はもちろん、校務分掌における役割などに応じて、配布するプリントの原稿を作ります。作った原稿は一定の手順を踏まえて、場合によっては校長などの承認を経て、完成です。完成した原稿は印刷し、クラスごとに仕分けをし、教室で配布します。配布されたプリントは生徒により自宅に持ち帰られ、保護者の手元に渡ります。さて、どれくらいの割合で確実にかつタイミングよく保護者の手元に渡るでしょうか?

校種や学年によっても異なると思いますが、確実にかつタイミングよくという観点では、残念ながら意外なほど低い割合だと思います。プリントがバックの奥でぐちゃぐちゃになっている光景に遭遇したことがある保護者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。また、原稿作成から教室で配布するまでの時間と労力は馬鹿にならないです。

これを読んでいる教職員の皆さんや保護者の皆さんは、このような経験をしたことがあるのではないでしょうか。

こういった課題を解決する手段のひとつが「ICT利活用」だと考えます。

ほとんどの場合、配布するプリントの原稿はコンピュータを用いて作成されているはずです。したがって、原稿をPDFファイルにするのはとても簡単で、ホームページにPDFデータを掲載している学校も多くあります。データを何かのSNSやグループウェアのアプリケーションを用いて配信すれば、プリントがバックの奥でぐちゃぐちゃになることもなく、原稿作成から教室で配布するまでの時間と労力も大幅に削減されると思います。

ICT利活用で、時間と労力の削減が可能になり、確実かつタイミングよく情報を届けることができると考えます。

学校で「コミュニケーション」の扱い例

学校では教職員間・教職員と生徒・生徒間などさまざまな間柄と場面で、多くのコミュニケーションが取られています。コミュニケーションの基本は対面での会話であることは疑いようもないことです。しかし、対面での会話だけに頼ると、言った言わないの水掛け論になってしまうこともありますし、自分の都合だけで対話の会話でのコミュニケーションを取ることは、相手の時間を必要以上に奪うことと考えることもできます。対面の会話でのコミュニケーションを軽視しろと言っているわけではありませんが、会話だけより文章での情報伝達が重要で伝達度が高くなることもあると考えています。このことは教員になる前に、会社員だった時代に先輩社員から、「電話をかけて口頭のみで用件を伝える前に、メールでの連絡にできないか考えなさい」と繰り返し徹底された経験がもとになっています。

例えば、チャット機能をもつSNSやグループウェアがあれば、「オンライン面談」が可能になると考えます。教員は質問項目をチャットに記入して問い、生徒は自分のタイミングで十分に準備をしてその質問に答え、その内容に応じて教員はさらに質問を深めていくことができます。自分の考えを即答できない生徒もおり、自分のタイミングでよく考えて答えることができるので表現力の育成にも役立ちます。教員も自分のタイミングで問うことができ働き方改革にもつながるかもしれません。チャットであれば履歴をたどれるので振り返りも容易にできると考えます。これを応用してグループディスカッションを行ったり、クラス全体でオンラインホームルームを行ったりすることもできます。非同期でも自分のタイミングでインタラクティブなやり取りができるのではないでしょうか。

学校でのICT利活用

ここに挙げたことは例なので、既に同様のことを実践している学校もあるでしょうし、他にもさまざまな取り組みが可能だと思います。使う道具によっては、もっとさまざまな取り組みができ可能性が広がると思います。前回も含めて、授業での利活用には全く触れていませんが、こういった「情報」と「コミュニケーション」の道具としての利活用でICT機器の便利さを実感してもらえれば、授業での利活用もスムーズには入れるのではないでしょうか。

前回も書きましたが、これまで培ってきた教員の「情報」と「コミュニケーション」の「技術」は、絶対に無駄になりません。ただし、これまでの「技術」のアップデートだけではなく、コンピュータを活用した「新しい技術」を積極的に取り入れていく姿勢は必要になります。全国の先生方の取り組みを何らかの形で共有できれば、もっともっとたくさんの取り組みができると思います。

石丸 貴史(いしまる たかふみ)

福岡工業大学附属城東高等学校 教務主任
高校での新学習指導要領導入を控えて、「カリキュラムマネジメント」・「I C T活用」を中心に、日々の授業改善に取り組んでいます。大学を卒業後すぐに会社員として塾・予備校業界で勤務をした経験も活かしながら、社会で活躍できる生徒を育てるべくどのような資質・能力を育成すれば良いかを試行錯誤しています。

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