2020.04.16
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学校は"Stay Home"の休校中の子どもたちに何ができるのか

新型コロナウイルス感染症対策により、私の地域の学校も休校になってしまいました。今回の休校は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のためですので、一番の目的は、子どもたちが3密を避けるために、学校に来ないで自分の健康と安全を守ることです。学校に来ない子どもたちのために、学校は何ができるのでしょうか。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭 常名 剛司

今回の休校の扱いでは、臨時休業の考え方についてのガイドラインが4/7付けで文部科学省より発出されました。

「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン(令和2年4月7日改訂版)」http://www.mext.go.jp/content/20200407-mxt_kouhou02-000004520-4.pdf


そのガイドラインによれば、学習指導に関することについて以下のように書かれています。

「学習に著しい遅れが生じることのないよう、学校や児童生徒の実態等に応じ、可能な限り、紙の教材やテレビ放送等を活用した学習、オンライン教材等を活用した学習、同時双方向型のオンライン指導を通じた学習などの適切な家庭学習を課す等、必要な措置を講じること。中略。令和2年度の教育課程の実施に支障が生じる場合には、主たる教材である教科書に基づく家庭学習を臨時休業期間中に課すよう、工夫が求められること。」

休校期間は、「とても長い学級閉鎖」ではなく「家庭学習日」である

今回の休校が、インフルエンザの蔓延などによる学級閉鎖の拡大版のような「とても長い学級閉鎖」という扱いなら、少なくなった授業時数を確保するために、夏休み期間を短縮して授業を行うことになるでしょう。そうなれば、学校でしっかりと学ぶことができるので、(夏休みまでに収束しているかどうかは別として……)休校期間中は、学校に登校している時間ほどは、学習に取り組まなくてもいいはずです。しかし、上記のガイドラインを読むと、今回の休校は、「家庭学習日」という考え方でよいように思います。「家庭学習日」という扱いなら、できるだけ学校に近い状況で教育の質と量を保たなければなりません。

もちろん、これだけ感染が拡大している状況では、「家庭学習日」という扱いでオンライン授業をしようとしても、体調不良者が多くて学習できない状況になってしまうのなら、インフルエンザの流行などによる「学級閉鎖」と同じです。子どもの命や健康が一番大切なので、「家庭学習日」という定義にしばられている場合ではないはずです。

しかし、一人一台の端末が行き渡っていない状況では、いくら家庭学習を充実させようと思っても限界があります。学校や地域による教育格差が大きくなってしまうことが懸念されます。オンライン授業が広く行き渡っていない状況では、長期休業中に出される課題にプラスαして対応するのがよいのではないでしょうか。

休校期間中の子どもへの対応は、長期休業中の課題プラスαで考える

①前学年までの復習をする

この休校期間を機に、これまでの学習をしっかりと定着させる時間にするのも有効な手段だと思います。ワークブック、プリント、前学年の教科書などで、既習内容の復習をするのがいいと思います。

②放送教材などを使って自分で学習を進める

なかなか新しい学習内容を子どもの力だけで予習するというのは難しいものです。細かな学習内容まで完璧に習得させることは望めませんが、教科書に書いてあることを読んで、自分の言葉に直しながらノートにまとめ直す学習をしたり、「NHK for school」のウェブサイトを視聴して、分かったことや大事なことをノートにまとめたりするような学習ができそうです。しかし、教師が子どもの個別の表れを即座に見取れる訳ではありません。個人差が大きくならないように、休校後の教師によるフォローアップが大切になると思います。

③図工、体育、自由研究などの課題を行う

私の地域では、夏休みの課題で「動物の絵」や「宇宙の絵」を描く課題に取り組む子が多いです。また、理科、社会科、総合的な学習の時間の調べ学習などの自由研究に取り組む子もいます。図書館や施設見学などはできませんが、家の中で実験をしたり、インターネットを使って調べたりすることはできると思います。また、運動不足になることは間違いないでしょうから、これを機に「なわとびカード」などを使って、なわとび名人になることを目指させてもよいかもしれません。

④1日の生活表や毎日の一言日記で生活のリズムを作る

日中に親がいない場合は、時間の使い方がいい加減になってしまいがちです。自分の学習や生活を自己調整するためにも、1日の生活表や毎日の一言日記などで、めあてをもって生活して、振り返ることが大切です。

⑤子どもの健康観察を兼ねたオンライン授業を行う

できるならば早期に始めたい……
YouTube
Skypeなどを使ったオンライン授業をすることができるようになると、休校の長期化にも対応できるようになってくるはずです。ICTを活用することで、この難局を乗り越えるだけでなく、あらたな教育方法を開拓することにもつながると考えています。学級の子どもたちがテレビ会議のように同時に画面上に集う授業を、一部の先進的な取り組みをしている学校だけでなく、他の学校でも取り入れるチャンスです。すぐに「うちにはムリ!」とできない理由を考えるのではなく、できる方法を考えることが、正解のない社会に対応するために必要な考え方なのではないでしょうか。

できるだけ早期に収束することを祈っていますが、日本だけが例外とも考えられません。次回も自分に今、何ができるかを考えながら、身の回りの英語や教育に関する話題を取り上げていきたいと思います。よろしくお願いします。

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常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

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