世代を超えて大学と地域が結びつく(1)
あるきっかけがあり、北九州市立大学を中心に大学と地域団体がコラボしながらゆるやかに繋がりたくさんの協働実践が生まれている北九州市の取り組みのことを知った。私自身、何年間かかけて築いてきた地域との協働実践があり、その経験と重ねると実に興味深い。
札幌大学地域共創学群日本語・日本文化専攻 教授 荒木 奈美
地域 こども 若者 大人 異世代 交流 繋がる 協働 ―
最近の私の教育実践でキーワードになる言葉を列挙すると、自分の中でもなかなか繋がらなかった課題が見えてくる。
私が望む2030年、SDGsを意識した未来はどんなだろう。それは地域の皆が利害を超えて、その地域の発展のために意識的にせよ無意識的にせよ繋がる世界だ。
目の前にいる私の教え子が、自分の長所にも短所にも気づいていて、まるごとの自分を生かせる場所が彼らの中にあること。その居場所では、学生たちのまだまだ足りない部分も含めて引き受け、ゆるやかにその成長を見守ってくれる。学生たちも経験の中でその温かさに気づき、懐の深い大人たちに己の未熟さを思い知らされ、自分から変わっていきたいと思い行動し始める。
そして何回か協働を続けているうちに、気づけば大学生も地域の中で役に立てる存在として成長している。そしてこの経験を後輩に引き継いでいく。
もちろん理想は理想だ。現実にそのような思いを抱いて行動を始めても、学生たちは気分の良い悪いに左右される。ちょっとした友人間のトラブルやアルバイト先の都合に振り回されたりして、毎日精神も不安定。そういう彼らの様子を見ながら生活していると、気分はすっかり湘南あたりの波乗り人? 日々の風や波を感じて生きることをモットーとする。楽しいけど……たまに疲れる。
私の理想と現実。このギャップを楽しみながら、これからどんな方向に向かって行こうか。そんなことを漠然と考えながら過ごしていたところに知ったのが、北九州界隈の教育実践だった。
北九州市立大学を中心に、地域のNPO団体がゆるやかに繋がり、地域を元気にする様々な活動の中に大学生も入っていって、地域に育てられる。大学も地域の身近な課題を意識しながら、日々の学びが直接社会の課題に繋がっていることを感じとる。だからこそ学生も教員も、教えることに力が入る。そんな学びのあり方はずっと思い描いていた大学の一つのあり方だ。
実際どのような形で大学と地域団体は繋がっているのか。そこに参加する学生たちはどんな気持ちで関わっているのか。地域の方たちが大学生と接していて感じている課題はどんなことだろう。大学教員はどのようなことにどこまで関わって臨んでいるのか。実際に聞いて感じて知ることがたくさんあるだろう。
機会に恵まれ、その協働実践の最先端を見せていただけることになった。
次回、その様子を報告させていただければと思っている。

荒木 奈美(あらき なみ)
札幌大学地域共創学群日本語・日本文化専攻 教授
高校で12年間、大学で8年半、たくさんの高校生や大学生と主に文学作品を通じて関わってきました。自分の好きな漫画やアニメやゲーム、アーティストについて語るとき、彼らは本当に顔を輝かせて熱心に語ってくれます。自分の「好き」を極めたいと思うことは学びの原点。高校生や大学生の「学ぶ意欲」を引き出すために私たち教師ができることは何だろう。「主体的に学ぶ」学習者を育てるための教育のあり方について、今日も実践を通じて、探究を続けています。
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