2019.11.13
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小学校英語の弱点を補う!CLIL型学習

小学校高学年になっても「好きな〜はなに?」という話題ばかりでは,子どもたちも「また〜!?」という反応になってしまいます。子どもの発達段階に合わせた学習内容にするには,どうしたらよいのでしょうか。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭 常名 剛司

小学校英語の弱点!

小学校英語における1番の弱点は,学習内容が子どもの発達段階よりも大幅に低くなってしまうことです。
週に1回程度の授業時間で子どもの発達段階に合わせた学習内容にするのは,とても難しいことです。なぜなら学習内容を発達段階に合わせようとすれば,それだけ使用する語彙や表現の難易度が上がるからです。高学年の子どもの発達した思考力に合わせた語彙には,授業の中だけではなかなか辿り着けません。

少ない授業時間の中で,少しずつ汎用的な英語表現を学ばせるために,まずは1番基本的な英語表現が自動化するように指導すると「Do you like ~?」「What ○○ do you like?」の表現を場面や状況を変えながら何度も使うことになります。
しかし,高学年の知識や思考力がぐんぐん伸びていく時期の子どもたちにとっては「また〜!?」になってしまうのです。

弱点を補うCLIL(内容言語統合型学習)とは

以前の私の連載記事にも書きましたが,
CLILとはContent and Language Integrated Learningの略で,クリルと読みます。日本語に直すと内容言語統合型学習になります。簡単に言うと,子どもが思考を働かせながら,学習内容と英語表現の両方を同時に学ぶことです。これまでのような既に他教科で学習した内容を英語に訳して,その言い方を学ぶ学習ではありません。子どもたちが初めて習う事柄を英語で学ぶのです。

どこにユニバーサルデザインがありますか?

今年度の私の実践「ユニバーサルツーリズムマップを作ろう」では,国語科,総合と連携した福祉に関する外国語活動の教科横断的なCLIL型学習を行いました。
右の写真は,浜松駅周辺の地図ですが,子どもたちは,この画像をタブレット端末で見ながらユニバーサルツーリズムについてペアになって英語で話し合いました。

いろいろな障害をもつ人々にとって,何がユニバーサルデザインで,何がバリアになるのでしょうか?
ユニバーサルデザインになるものに,「This is a universal design. It’s a braille block. (本当は,複数形を用いるのが妥当ですが,表現が複雑になり過ぎるので,ここでは画像を指で差しながら話せば,単数形でいいということにしました)It’s good for blind people. (視覚障害者にとっては,点字ブロックがユニバーサルデザインになる)」と答えた子がいました。しかし,ペアの子は,「I think this is a barrier. It’s bad for wheelchair users. (車椅子の人にとっては,点字ブロックはバリアだと思う)」と答えました。
子どもたちは,総合の時間に実際に自分たちがこの周辺をグループごとに車椅子を使ってユニバーサルツーリズム調査をしていたので,このことを「自分ごと」として捉えていました。
同じものでも場面や状況や人によって,ユニバーサルデザインになる場合とバリアになる場合があるのです。子どもたちは外国語の見方・考え方だけでなく,他教科・領域の見方・考え方もまた働かせて対話をしていたのです。ここでのキーフレーズは,「This is ~.」「It’s good/bad for 〜.」という汎用的な表現であり,「This is 〜.」は,文科省から出ている「Let’s try!」にも出てきます。

I C Tは瞬時に拡大できて,コストはタダ!

上の画像をタブレット端末で見ながら,対話をしている時に,子どもたちは自由自在に拡大してユニバーサルデザインになるものやバリアになるものを探していました。これは,紙ベースでの画像ではできません。ICTを活用したからこそ多くの気づきを得ることができたのです。しかも,紙ベースのものでは,1枚印刷するごとに30円くらいコストがかかってしまいますが,タブレット端末なら,始めにタブレットさえ用意してしまえば,コストはタダに近いです。また,写真や画像を見ながら話し合うというのは,英検などの2次試験のスピーキングのテストでも使われる形式なので,こう考えるとICTを使うと一石二鳥どころか,三鳥にも四鳥にもなりえます!

次回も英語にまつわる身近な話題を提供していきたいと思います。よろしくお願いします。

常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

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