2019.06.27
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

小学校英語で求められる必然性のある活動にするためには

かねてから小学校英語教育で大事にされてきた「必然性」とは一体なんのことなのでしょうか。また「必然性」のある活動を仕組む時のポイントはどこにあるのでしょうか。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭 常名 剛司

小学校英語における必然性のある活動には2種類ある

これまでの授業で時々見受けられてきたゲームをするだけの授業。パターン化された表現をお互いに順番に発話するだけの形だけの対話場面をもつ授業。そのような授業では,子どもの学習意欲は高まりません。ゲーム性をもたせることで一時的に子どもたちを学習に向かわせられていたとしても,そればかりでは仲間と思いを共有する喜び,身に付けた英語が通じた喜びを感じることまでは難しいのではないかなと感じています。中学校や高校では,英語を使うことの必然性として「受験」「将来のため」「やらないといけない」などの半ば強制のような目的で英語を学ぶこともできるでしょう。しかし,小学校では,学ぶことを強制するのではなく,子どもたちが自ら学びたいと思う自律的な学びにしたいものです。そのためには,子どもが興味のある話題について本当に仲間と話したい,仲間の考えを聞いてみたいと思えるような場面や状況を授業の中に作る必要性があるのです。私は,そのような小学校英語における必然性のある活動は2種類あると考えています。

①コミュニケーションをする必然性のある活動

子どもたちは外国語活動や外国語科の時間は,英語を使うものだと思っていますから,まずは,仲間とコミュニケーションをしたいと思えるような活動が必然性のある活動になるはずです。それは,目の前の子どもたちが「話したい」「仲間の考えを聞いてみたい」と思うようなコミュニケーションをする必然性のある活動です。曜日の学習と関連させて,「自分の帰宅後のスケジュールについて」What do you want?の表現をスパイラルに学ばせながら定着を図るときに「誕生日プレゼントに欲しいもの」「クリスマスプレゼントに欲しいもの」などという話題でSmall Talkをさせて,学級の仲間たちの考えを聞いてみたいという「必然性」をもたせるのです。しかし,真夏に「クリスマスプレゼントに欲しいもの」について話しなさいと言われても,「ちょっと気が早過ぎるよなあ」と子どもたちにとっての「必然性」は弱くなってしまうのです。この話題なら,11~12月くらいに話題にするのが「必然性」があるといえるのではないでしょうか。ですから,一見,コミュニケーションギャップが生じそうで,必然性が発生しそうな話題でも,目の前の子どもの実態抜きには必然性は発生しないのです。

これまでに「そんなの子どもたちが話したいのかなあ。必然性があるのかなあ」と思っていたのに,意外と子どもたちが意欲的に取り組んでいたのが,「We Can!2」の「Unit9 Junior High School Life」でした。6年生の女の子たちが「中学校で何の部活動に入りたいか」についていろんな仲間とやり取りをしていました。高学年になってちょっとしたことを気軽に聞きづらくなっていた子どもたちが,中学で何の部活動に入るのかを日本語で聞くと詮索するみたいに感じるものが,英語の授業だと面と向かって堂々と聞けるとあって,休み時間などにあまり関わっていないような子とも,遠慮がちにやり取りしていました。「日本語ではなかなか聞きづらかったんだな」と微笑ましくなってしまいました。これはまさに子どもたちにとって「必然性」のある活動だったのでしょうね。教師が考える「必然性」を子どもが考える「必然性」とぴったり合わせられるかどうかは,目の前の子どもたちの実態や気持ちをどれだけつかんでいるかが大切なのです。

②英語を使う必然性のある活動

小学校英語で子どもの学習意欲を高めるには,コミュニケーションをする必然性のある活動を設定することは不可欠です。まずはそれが大切です。そして,それができたら,さらに学習意欲を高めるには「英語を使う必然性」をもたせることです。これは,単元のゴールに「ALTに教える」「留学生に教える」「海外の学校と交流する」というものを設定するとよいでしょう。話したいことが英語でなければ通じないのなら,子どもたちは英語を身に付けるしかありませんからね。ましてその外国人が「困っている」のならなおさらです。困っている外国人に自分たちが知っていることを教えるという文脈が子どもの学習意欲を高めると考えています。そのような文脈をもつ学習をプロジェクト型学習と言います。困っている外国人を助けるというプロジェクトベースの学びが子どもに英語を使ってコミュニケーションをする必然性を生み出すのです。

これまでに私が実践したプロジェクトでは,「外国人にあまり知られていない浜松市のことを外国人観光客に教えるプロジェクト」や「地震のことを知らない外国人留学生に防災について教えるプロジェクト」などがあります。留学生に防災について教えるプロジェクトでは,交流会後に留学生からメールが届きました。メールが届いたことを子どもに話すと嬉しそうな顔をして,その文面を食い入るように見ていました。メールに英語で書かれていた「防災についてたくさんのことを学べました。母国に帰ったら,人々に地震や津波について教えてあげたい」という文面の内容を教えたときの子どもの満足そうな表情は忘れられません。英語を学びながらだれかの役に立てるなんて素敵なことではありませんか。

最近,研究会で会った方に「なんでそんなに日焼けしているんですか」と聞かれました。私たち小学校教師は,英語の授業だけをしている訳ではありませんよ!いよいよプールの季節です。私は例年,この時期になると体育の授業だけでなく,放課後の部活指導でも日焼けで真っ黒です。もうすぐ暑い夏がやって来ますね!次回も英語にまつわる身近な話題を提供していきたいと思います。よろしくお願いします。

常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop