2019.03.05
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その英語をイメージできますか

小学校英語の授業では,日本語をただ英語に置き換えればいいのではありません。言語は文化を内在しているので,日本語を英語に置き換えようとする時に,そこにはイメージの相違があるだろうと考えておいたほうがいいはずです。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭 常名 剛司

dog=犬なのか

一般的に英語で「dog」と言われたものを日本語に訳すならば「犬」となっています。しかし,この犬は同じ犬なのでしょうか。生物学的分類では「イヌ科」というくくりでいいのでしょうが,その言語を話す人々のイメージは同じなのでしょうか。

試しにGoogleの画像検索でその言葉を検索してみました。「dog」と検索すると,ラブラドールレトリバーやゴールデンレトリバーがたくさん出てきました。次に「犬」と検索すると,やはり多いのが柴犬などの日本犬です。しかも,かわいらしい子犬ばかりです。さらに,アフリカの言語であるスワヒリ語で犬を表す「mbwa」(ンブワと読みます。)と検索すると,いかついシェパードばかり。実際に,日本では,「犬」と言えば「柴犬」のような日本犬をイメージしますが,アフリカに住んでいた時に,「mbwa」と言えば,自分たちの学校で番犬として飼っていたシェパードや,街をうろつく野良犬くらいしか見たことがありませんでした。

ですから,「What animal do you like?」「I like dogs.」という小学校英語でよくある会話例も,日本人同士で話していれば大体似たようなイメージですが,これが日本人とアフリカの人が会話をした場合は,アフリカの人に「えー!?野良犬が好きなの?物好きだなあ。」と思われるかもしれないということです。


言葉はイメージや概念に名前をつけたもの

英語では,空を飛ぶ生き物を「bird」とか「bee」とか言うでしょう。空を飛ぶ鉄の塊を「airplane」とか「helicopter」と言うでしょう。しかし,スワヒリ語では,生き物も鉄の塊も空を飛ぶものは全て「dege」でした。空を飛んでいるものという概念やイメージの名前が「dege」なんですね。英語の「take」なんて,「take me to the ballpark」「take a break」「take a bath」「It takes 〜」などのように使われ,「取る」という日本語1つで表せるものではありません。だから,子どもにも「『take』は『取る』だよ。」と日本語と英語を1対1対応で覚えさせるのではなく,イメージと言葉を結びつけさせる必要があるのです。そこで,帯活動の中で子どもが楽しみながらイメージと言葉を結びつけるためのゲームを紹介します。

帯活動の中で行うイメージと言葉を結びつけるためのゲーム

①Gesture Game

二人組を作って,じゃんけんをします。勝った人は,単語一覧カード(A4用紙1枚に30くらいの動詞をまとめて,単語とイラストがかかれたもの)を見ながら,ジェスチャーをします。それを見た相手が英語で答えます。1分以内に2人で何個の単語を正解できたかを競います。終わったら,「How many correct answers?」と言って,ペアで協力してどれだけたくさん正解できたかを確認して,褒めてあげます。ゲームに使う単語は,動詞,形容詞,動物などのジェスチャーしやすいものを選ぶといいでしょう。happyやwonderfulなどの形容詞をジェスチャーさせるもの教室が明るくなっていいですよね。

②Pictionary

ジェスチャーゲームのジェスチャーの部分で紙にイラストを描くという違いがあるだけです。この2つのゲームをしていると,「先生。これのどこが英語の勉強なの?」と言われることがありますが,「犬」や「飛んでいるもの」の話をして,「イメージと言葉を結びつけることが大切なんだよ。決して,ただ遊んでるだけじゃないんだよ。」と言います。

私はこの2つのゲームを帯活動として,時々,行っています。さらには,洋楽,絵本の読み聞かせなども行っています。それは子どもに多角的なアプローチで英語に触れさせることが大切だと考えているからです。手を替え,品を替えて,子どもの心に引っかかる学習材をこれからも探し続けていきたいと思います。


次回は,いよいよ今期連載の最終回となります。よろしくお願い致します。

常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

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