2018.11.28
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Small Talkでおしゃべり好きの子に育てる

みなさんは小学校英語でのSmall Talkという学習を知っていますか。これは,小学校高学年で子ども同士が英語でちょっとした対話をしながら,既習事項を身に付けていく学習です。今回は,そのSmall Talkを取り入れる際の指導のポイントや話題例などをお伝えします。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭 常名 剛司

修学旅行で広島へ

11月上旬に修学旅行で広島に行きました。広島は,観光庁が出している宿泊旅行統計調査によると,アメリカやヨーロッパからの観光客が多いところです。原爆ドームや宮島などにもたくさんの外国人がいます。英語でしゃべりたいなあと思っていると,あちらから何度も話し掛けられてしまいました。世界はもうすぐそこまで来ているのだと感じました。

Small Talkとは

外国語の授業の時に,ついつい子どもたちが日本語でふざけておしゃべりをしている時があります。そんな時に,私は,「おしゃべりしたいなら,英語でしてね。」と言うと,急に黙って静かになってしまいます。ちょっとしたおしゃべりこそ,英語でするのは難しいものです。しかし,場面や状況を区切って話題を少しずつ変えながら,スパイラルに取り組むことで,1分や2分くらいは,子ども同士で英語でのやり取りができるようになるというのが,Small Talkなのです。
文部科学省の外国語研修ガイドブックに詳しい内容や指導の仕方などが解説されていますが,今回は,私流のSmall Talkの指導のポイントなどをお伝えしたいと思います。ちなみにSmall Talkとは,「ちょっとしたおしゃべり。雑談。」という意味です。ですから,授業の中でも,子どもたち自身が肩肘張らずにちょっとした楽しいおしゃべりの時間として,毎時間の授業の帯活動として取り入れたいものです。あくまでもちょっとしたおしゃべりの時間なのですから,すぐに上手く話せなくても,1分や2分続かなくても,目くじら立てて怒らないことです。できなくてもいいじゃないですか。ちょっとしたおしゃべりなのですから。

①決まった話題についておしゃべりする

時々,Small Talkでフリートークさせるというような話を聞くことがありますが,フリートークほど難しい会話はありません。話題が多岐に渡るので,話したいことがほとんど話せずに時間だけが過ぎてしまいます。これまでの既習語彙や表現を活用できるような話題を設定して,1時間の中で,1分〜2分程度を1〜3回程度行うのがいいと思います。初めは「Ketchup on your cornflakes?」などのDo you like 〜?の表現を使った楽しい仕掛け絵本を子どもとやり取りしながら読み聞かせした後に,「みんなの好きなものは何かな?」などと話して,簡単なDo you like 〜? Yes, I do. /No, I don’t. I like 〜.のやり取りで1分間話し続けることを目標にするといいと思います。

②相手を代えて,回を重ねて表現を増やす

もしも,話に詰まったら,「同じことを繰り返して言ってもいいから,話し続けてみようね。」ということにしておきます。子どもはDo you like の後の部分に好きな言葉を入れて,次々と話してきます。後の部分も,できるだけ英語で言おうとしますが,そこは日本語で言う子もいます。子どもが好きなものや場所,人名などは,固有名詞も多々含まれていますし,語彙が増えればどんどん使えるようになるので,そこは日本語でもいいというようにしてあげた方が,子どもは話しやすいものです。また,相手を代えて複数回すると,相手が話していた語彙や表現を自然と自分の中に取り入れて話すようになります。Small Talkの合間に「話したかったけど,話せなかった言葉はあるかな?」と聞いてあげて,「英語でなんて言ったらいいかな?」とみんなで考えさせることも,子どもの頭の中に眠っている英語を引き出す力を高めることに繋がっていきます。
時には,Do you like Jona sensei?と仲間に聞かれて,微妙な空気になって,答えた英語がSo so.などという会話まで飛び出します。授業中に公然とNoなんて言えませんので,気を遣って答えてもso soなのかと思うと閉口しますけどね。まずは,子どもが英語を聞き慣れたり,話し慣れたりすることが大切です。慣れてきたら,What ○○ do you like?などの汎用性のある表現などを使った話題を設定していきます。

③話題を変えて,単元を越えて同じ表現を繰り返し使わせる

授業中の1時間でさえ,子どもは覚えた先から,どんどん忘れていってしまうものです。まして音声中心の小学校英語では,なおさら記憶に残すのは大変です。少し前の単元の学習内容なんて1ヶ月後には,ほとんど覚えていないと思ってもいいかもしれません。この単元の学習内容は,きちんと教えて,その時には,思ったように発話できていたとしても,その後に,なんのフォローもしないのでは,子どもは1ヶ月後にはほとんど忘れてしまっています。その瞬間だけ使えるのと,本当に身に付いているのとでは,別の話です。日本では,普段から英語に触れることがほとんどない人が多いのですから,汎用的に使いやすい表現を1年間の中で,スパイラルに少しずつ話題を変えてトピックセンテンスとして取り上げて繰り返し使わせていく必要があります。
例えば,新教材「Let’s try2」のUnit7にWhat do you want?という表現を使って好きな野菜,果物,食べ物について話し合う学習があります。その単元後のSmall Talkで繰り返しその表現を使わせるために,「誕生日プレゼント」「クリスマスプレゼント」「防災グッズ」で欲しいものという話題で話し合わせると表現に繰り返し慣れ親しんでいきます。汎用的な表現にWhat ○○ do you like?というものがありますが,What animal do you like?という表現で「好きな動物」について話し合ったら,また別の時には,「ペットにするならどの動物が好き」という話題でも「Let’s talk about pets.」 と言ってから,What animal do you like?が使えるでしょう。そのように,同じ表現でも話題を少し変えるだけで,子どもの学習意欲を高めて,仲間と話したいと思うようなSmall Talkにすることができます。
Small Talkを単元に効果的に組み合わせると,子どもが話せる範囲が徐々に広がっていきます。そして,単元の終末には,その単元で学んだ新出語彙や表現だけでなく,既習の語彙や表現も組み合わせた深いコミュニケーション活動になっていきます。そうなれば,子どもは「英語を話せる!」という実感をもち,学びが加速していきます。

次回は,冬にまつわる話題を読者の皆様に提供したいと思います。よろしくお願い致します。

常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

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