今回は、私の仕事である保育者養成校についてお話します。
保育者を目指す場合、大学、短期大学、専門学校の保育系の学部に入学します。
この保育系の学部のことを、保育者養成校と呼んでいます。
保育者養成校のメイン授業は実習です。
卒業までの2年~4年間に、教育実習と言われる幼稚園実習が合計4週間、保育所実習と言われる保育園と施設の実習が各2週間で合計4週間、さらに保育園又は施設実習2週間、全合計10週間、行わなければなりません。また、国からの指導で、年間30週授業を行うことが義務付けられています。
例えば2年制の学校の場合
教育実習2週間+保育実習2週間=実習合計4週間
年間授業30週間+実習4週間=34週間
1年は約52週間ですから、残り18週間が祝日と夏・冬・春休みになります。
2年制の学校の場合だと、授業、実習準備及び事前指導、実習、事後指導の繰り返しです。
実習では…
実習日誌を夜遅くまでというか、朝までかかって書いたり、指導案を作成したりなど、本当にハードな日々を過ごします。
私は、中学高校の教員免許を取る際に高校で実習を行いましたが、こんなにハードではなかったです。授業が1週間に5〜6時間、他は朝と帰りのホームルーム、たまたまですが1週目のロングホームルームは学生総会、2週目は試験1週間前だったためありませんでした。実習日誌と言っても、授業の空いている時間に書き、指導案も同じ学年のクラスだと多少の修正のみ。研究授業はありましたが、1時間(45分授業)だけでした。
それに対して、保育者を目指す学生たちは、本当にハードです。
1日中子どもたちの中に入り、出勤から退勤まで(実習先によっては子どもと関わっている時間のみ)の日誌を毎日書き、翌朝提出。絵本や紙芝居、パネルシアター、エプロンシアター、ペープサート手遊び、制作などの部分実習、やることが沢山あります。もちろん、パネルシアターやエプロンシアターなどは、実習のオリエンテーションまでに完成をさせなければなりません。なぜならば、「○○のパネルシアターを作ったので、やらせていただけますか?」と言える状態にしなければならないからです。実習指導では、私も厳しいことをいうときもありますが、本当は見ていて頭が下がります。
実習前になると、「行きたくない」などという学生もいますが、行ってみたら「楽しい」「子ども達がかわいい」の声に変わることがほとんどです。実習生はまだ保育者ではないため、「お姉さん先生」「お兄さん先生」という立場になり、「〇〇先生」と子どもたちから呼ばれ、嬉しいようです。
そのためか、実習を終えると、やり切った充実感、自信が生まれるなど、学生の雰囲気が変わります。しかし残念ながら、中には自分が思い描いていた世界とは異なり、進路変更をする学生もいます。
保育者を目指そうと思ったきっかけ…
保育者を目指す動機は、「子どもが好きだから」「自分の幼稚園や保育園の先生に憧れて」「職場体験(中学や高校で)で幼稚園や保育園に行って」などが多いです。
確かに、学内で授業を受けている時はあまり元気がない学生でも、子ども達の中に入ると、本当に笑顔で明るく、とても良い表情で、生き生きと子ども達に接している学生の姿を見ることがあります。しかし、実際の保育者の仕事では、子どもと楽しく過ごす時間はほんの少し。それ以外の時間、例えば保育室の壁面制作、掃除、事務作業のほか雑務がたっぷりあります。また、保育などの情報を刷新するために研修会に参加したりして、いつでも向上心が必要になります。そして何といっても、保育者は子どもの大切な命を預かる仕事でもあるため、子どもと接する時は、いつでも緊張感を持っていなければなりません。
「保育者は360度目が付いていなければならない」という言葉を聞いたことがあります。
そして…
保育者の友人を見ていて、保育者とは、本当に子ども好きじゃないとできない仕事だと思います。体力的にも、精神的にもハードな仕事をしている保育者の皆さんに、敬意を表します。
これからも、保育者になりたいと言う夢をかなえるお手伝いを、続けていきたいです。
岸 久美子(きし くみこ)
東京経営短期大学こども教育学科 専任講師
保育者養成校で、音楽と実習関連科目(保育実習・教育実習)を担当しています。保育の現場における音楽活動を通して、幼保一元化、幼保小連携・接続について研究中です。
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