2018.10.03
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修学旅行で外国人旅行者と交流する文脈づくり(1)

子どもが自分ごととして学習意欲を高める本物の文脈づくりの工夫をお伝えします。

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭 常名 剛司

執筆のごあいさつ

皆様はじめまして。第24期の執筆をさせて頂けることになった常名剛司(じょうな つよし)と申します。静岡県で小学校教員をしながら、小学校英語教育の研究を担当しております。このような場で自分の考えや実践を発信し、御意見を頂ける機会を得たことを深く感謝致します。
私の小学校英語教育の実践では、子どもが自分ごととして捉え、学習意欲を高める本物の文脈づくり、知的好奇心を喚起し、思考を促すCLIL型学習、聞く・話す力を高める帯活動の工夫、聞く・話す力の育成を中心にしながら、読み書きに困難さを感じる子どもへの指導を含めて読む・書く力をバランスよく育成する単元デザインの在り方を研究しています。これからどうぞよろしくお願い致します。

プロフィール

出身は、本州の内陸部で日本一暑くて有名な埼玉県熊谷市ですが、巡り巡って現在は、静岡県で小学校教員をしております。これまでにアフリカやアジアの在外教育施設で海外にいながらも教師としての経験を積ませて頂く素晴らしい機会を頂きました。友達も、知り合いもいない、言葉も通じない海外で教師を始めた若い頃、同じように海外で挑戦していた中田英寿や名波浩といったプロサッカー選手たちが活躍するニュースを聞くたびに、「彼らも頑張っているのだから,自分も負けていられない」と考え、彼らに比べれば、地位も名誉も何もかも比較するに値しないちっぽけな自分でしたが、情熱だけは負けまいと教育実践に励んできました。
上手くいかないことの方が多く、読者の方々の参考になるかは自信がありませんが、日々の私の教育実践を皆様に共有して頂き、話題提供することくらいはできるかなと考えています。

小学校英語を自分ごとにするには

① 身近な話題だからといっても,意外と自分ごとにならない

私が、小学校英語の単元をデザインする上で最も大切にしていることは、子どもが自分ごととして英語を話したいと思えるような学習意欲を高める本物の文脈づくりです。子どもの日常や身の回りのこと、経験などを題材にすれば、学習が自ずと自分ごとになるのかと言えば、そうではありません。本来、コミュニケーションとは、相手と自分との間にインフォメーションギャップが存在し、相手の思いを知りたい、自分の思いを伝えたいという感情があって初めて成立するものです。しかし、あらかじめ分かっている事を、わざわざ英語で尋ね合うだけだったり、お店やさんごっこや旅行会社ごっこのような疑似体験をしたりするのは、子どもが本当に思いを交流したいと思えるような本物の文脈というのでしょうか。

② 修学旅行で外国人旅行者と交流する文脈づくり

そこで今回は、修学旅行で外国人旅行者と交流する学びの文脈づくりについて紹介します。私自身が中学生の時に、修学旅行で行った京都で外国人旅行者と会話をしてくるという課題を教師から与えられて、ドギマギしながら英語が書かれたワークシートを読んだことを思い出します。
最近は、小学校でもよくある実践で、自分が住む街のパンフレットを作って、修学旅行で出会った外国人旅行者に自分の住む街の好きな場所や食べ物などを紹介して、パンフレットを渡してくるというものがあります。これはタスクベースの学習として意味はあるでしょうし、日本人ではなく、外国人を相手にすることで、英語を使う必然性が否応なく発生します。しかし,それだけで子ども自身に学びの文脈があるかといったら疑問です。子どもにとっては、単に英語を話さなければならない文脈の中に放り込まれただけで、自律的な学習態度は育ちません。しかし、子どもと課題との出会いの場面で、ちょっとした工夫をするだけで、これが本物の文脈になります。

③ プロジェクトベースの本物の学びの文脈にする

昨年度、本校の高学年が修学旅行で京都に行きました。私は、事前に京都を訪れ、外国人旅行者にインタビューをしました。インタビューでは、簡単なプロフィール、日本で行った場所、食べた物などを聞き出し、最後に,「Do you know Shizuoka?」と聞きます。どの外国人旅行者に聞いても「I don’t know.」と答える映像を見て、子どもたちは、自分たちが大好きな静岡県のことを外国人旅行者が知らないということにがっかりして、ぜひ外国人旅行者にも静岡県のことを知ってもらいたいと思うのです。そのために、英語で静岡県のよさを話したり、パンフレットに書いたりして教えたいというプロジェクトベースの本物の学びの文脈が生まれました。ちょっとした子どもへの投げ掛け方の工夫で、子どもの学習意欲を引き出すことができます。

なお、10月5日(金)に本校の第96回研究発表会が行われます。私は、6年生「Unit5 Save my life.留学生に防災劇を発表しよう」という授業を公開します。危険予測や避難行動について子どもが話し合うことを期待しています。子どもと共に授業を楽しみたいと思います。

次回も小学校英語教育にまつわる日々の小さな足跡や風景を切り取り、読者の皆様に紹介していきたいと思います。よろしくお願い致します。

常名 剛司(じょうな つよし)

静岡大学教育学部附属浜松小学校 教諭
小学校英語教育の研究を担当しています。自律的に取り組む本物の文脈の中で,子どもの資質・能力を育む小学校英語教育のあり方について考えていきます。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

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