2017.12.09
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キャリア教育に関する質問に答える!~12月2日学びのイノベーションフォーラムにて~

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

2017年12月2日(土)、東京の政策研究大学院大学にて「第5回学びのイノベーションフォーラム」が

1.キャリア教育が外付の装置から教科へ埋め戻されている「流れ」を感じています。あらゆる教科、活動を通して生きるあり方を問う方策はどのように考えられますか?

教員は教科で採用されていますし、日々教科教育を実施しています。
その点で、まずは外付けでキャリア教育の取り組みを進めたあとに
このようになることは必然だとも思います。質問に簡単に答えるならば、
 「教科を通じて育てたい力は何か」を考え、それを生徒や周りの先生と
共有しながら授業という形で具体化することではないでしょうか。
学校としてそれをマネジメントし、見える化できればもっといいでしょうし、
それこそがカリキュラムマネジメントだと思います。

2.「キャリア」というだけで拒否反応を示されるときがある。

おそらくその方は過去にキャリア教育という名のもとに仕事だけ
押し付けられたとか、嫌なことがあったのだと思います。
またはキャリア教育への誤解があるのかもしれません。
まずはキャリア教育の取り組みを生徒の様子で伝えることからだと思います。
おそらくそうした先生も進路相談や授業で生き方を語るなど、何かされている
と思いますのでそれもキャリア教育だということにも気づいてもらえたらもっと
いいと思います。

3.高校でも「遊び」の時間を作って良いと思いますか?

何を遊びというのかにもよりますが、多少の寄り道や無駄に見えること、
生徒がしたいことをする時間という文脈でしょうか。それは大切だと思います。
教員も勤務時間に遊びの時間があったほうがいいですよね。

4.就職指導の一環として、キャリア教育をやっている。もっと必要なのはアントレプレナー教育では?

おそらくアントレプレナー教育を、起業することが目的の教育ではなく
既存の社会をよりよく変革するという視点でとらえられての質問だと思います。
そうだとすると大賛成です。ただアントレプレナーシップ教育が重要だと
いうときに、キャリア教育が就職指導だと誤解されたのと同じように、
起業させればいい、ビジネスプランを作ればいいという誤解が広がる
危険性もあるので、難しいところです。

5.楽しい職員室を作るには

あの場で答えさせてもらいましたが、付け加えます。
もし楽しくないなら、または職員室全体のムードがよくないと思うなら、
まずは自分が腹を割って話せる、一緒に頑張れる同志を見つけ、その人と
一緒にいて自分が元気になることが大切ではないでしょうか。
自分は今年度学年主任という立場で、担任団が若手と50代という両極端な
年齢構成だったので(自分だけ真ん中の世代)、その雰囲気作りは最初は
実はかなり考えました。でもメンバーに恵まれました。同時に担任会の後に
リフレクションを短時間して、お互いに語り合え、認め合える時間を設定しています。
月に一度程度でもこうした時間をとることは大事だと思っています。
この時間に自然とベテランの方がご自身の技を若手の先生に伝えたりしてくださいます。
いつも誰かが学年の島の真ん中のカゴにお菓子を買ってきてくれますが、
そういうことをみんながしてくれることにもすごく感謝です。

6.キャリア教育はすべきものでしょうか?

すべきかどうかよりも、学校という勉強だけでなく行事などいろいろなことに
取り組むところでは自然とされるものだと思います。また学校はいつか
卒業するので、生徒の卒業後を考えることは教師として当然だと思います。
そんな中で、どうせそうやって自然にされるなら、少しでも生徒にとって
いいものにしたほうがいいだろうと思います。

7.キャリア教育の究極の目標はなんですか?

生き方を問うことだと思いますし、それを自らの人生で形にしていくことだと思います。

8.深い学びとは?

うーん、、、難しい質問ですが答えます。
学びが自らの「探究」につながっていくこと。「観」を形成することでしょうか。
もちろんそのためには対話も必要でしょう。少し抽象的ですね。
松下佳代先生が、学びの動詞で深さを分類されていますが、あの方が
分かりやすいかもしれません。

9.「主体的である」解釈にずれが生じるとすればどのような???

言葉の解釈には必ずずれが生じます。数学のように定義しないかぎりは。
だから定義→定理の数学は美しいと思いますが、それはさておき、
主体的ということに絞るなら、主体的のレベルではないでしょうか。
自分からが主体的であることはおそらく誰も否定しないでしょう。ただ、
たとえばある与えられた課題に主体的(前向き)に取り組むことと、
自分自身をうまくコントロールして、主体的に行動することと、
人生を主体的に生きることではレベルは違います。
これは溝上慎一先生が指摘されたことですが、自分はすごく共感しています。
そして日々の授業でははじめの与えられた課題に主体的に取り組むレベルを
目指しつつ、キャリア教育は最後の人生への前向きさレベルを目指すものです。
だからキャリア教育は学校全体で取り組むものだと思っています。

 

10.キャリア教育は誰が担うのか? 先生が時間的にも経験的にも担うことができるか?

これはどの立場で答えるのかにもよります。自分は教師なので教師が担う、
しかし丸抱えしたり、自分が知識を伝えるものではないと答えます。
ようは生徒達を一人前にすることので、関わる全ての人が当事者として
取り組むのが自然だと思っています。
これを前提としつつ、現状を見て、必要な改善をしていけば
いいのだろうと思います(言うのは簡単だけど実行は難しい、、) 

11.学校は社会の情報が少なく自分の経験で「しか」進路指導しない、先生もいるのですがそれをブレークスルーするにはどうすれば良いですか?

自分もそんな先生の一人だろうとどこかで思っています。
人は自分の経験で行動する。おそらく民間企業の方もそうなのでは
ないでしょうか。でもだからこそ学び続けることが必要なのでしょう。
現状に対してコメントするなら、色んな先生がいるので、チームとして
生徒に関わる仕組みを作ることが重要なのではないでしょうか。

12.本音のことば、生徒が感じる安心安全、失敗の許容して学び合う教員間のサポート、どんな風に?

5.に書いたことと重なる気がします。結局はそこにいる人の在り方でしょう。
ただ日々忙しいので、お互いに感謝を伝える時間、いいところを伝え合う時間、
失敗やできないことを言い合う時間、こうした時間を意識的に設定することは
大切なのかもしれません。民間企業での実践含めて、これは色々な事例から
学べるような気がします。

13.主体性を育む学習、スモールステップ始めの一歩は?

教師ができることとして答えると、日々授業をするので、結局は問いだと思います。
教師の発問力。最近、実はここがかなり大きい気がしています。

14.「先の見えない社会を生きる。」といったテーマで進むキャリア教育と、「国公立・難関大を目指せ!」という進路指導が多くの学校で断絶しているように思います。お二人はどういう状況をお考えですか?

自分には答えにくい質問ではあります。でも本当に多くの学校で断絶している
のでしょうか? 何のために難関大に行くのかを考えるのは重要なテーマです。
もし断絶するとしたら、教員が「上にいい顔をするために国公立に行く指導をする」
など、指導の目的を見失っているときではないでしょうか。

15.キャリアプラン、ライフプランニングは高校生の何を変えますか?

考える過程にこそ意味がある気がします。おそらく将来を変えます。
しかしこれは他人事ではありません。「定年してから定年後のことを
考えたら遅い」といわれます。人は将来のことはイメージしにくいし、
なかなか考えないのかもしれません。でもそのときが来てからでは
遅いのも事実なのです。

16.夢がないという生徒になんと声かけしますか?

夢がないなら、目の前のことを頑張ればいいと思います。
授業ではプランドハプンスタンスを扱いますが、
それが全てに思えてなりません。自分自身イチローのように
明確に夢を持って進んできたタイプではないので、よけいにそう思います。

17.「キャリアとは!? 君が何を積み重ねてきたか!」と、「これから何を重ねていくかだ!!」あってます?

キャリアは轍(わだち)らしいです。だから厳密には「何を積み重ねてきたか」
なのかもしれません。でも人は自分の軌跡を見ると、その先も考えるし、
こういう道を歩みたかった(これから歩みたい)と言う思いも持つでしょう。
そう考えると質問してくださった方の言うとおりでいいと思います。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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