2017.08.11
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授業改善をしたければ会議から学べ!

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

みなさんは会議が好きですか。会議の時間は
有意義な時間ですか?この質問にYESと答える
人はあまりいないように思います。
しかし会議は授業に大切なことを学べる場です。
「授業改善をしたければまずは会議から学べ!」
今回はこのことについて書きたいと思います。

会議に登場するいろいろな病

学校も企業も会議については同じような課題が
あるようです。会議ではいろんな病気が登場し、
参加者を疲弊させます。よく登場する病気を
いくつか書いてみます。

まずは「資料を読みたい病」。読めばわかることを
ひたすら読むのがこれにあたります。
聞いている側はだんだん苦痛になってきます。
何よりこの方法は時間がかかるため会議が
長引きます。頑張って作った資料で説明して
いるのに、自分の説明が伝わっていないと
話し手が感じると、余計に話が長くなってしまう
ことも少なくないように思います。
その結果聞いている側は睡魔に負けてしまい
やすくなります。そのため会議の内容が頭に
残らなかったということは多くの人が経験して
いるのではないでしょうか。

次に「俺(私)に注目して病」。
質疑応答などフリーに発言できる場で、自説を
延々と語ります。些末なこと、今言ってもどうしよう
もないことを延々と語るのもこれにあたります。
同じようなメンバーの会議で同じことが繰り返さ
れると、発言前から言うことが予想できることも
あるかもしれません。はやく終わってほしい、
そう思いながらどうしようもできずひたすら発言が
終わるのを我慢したということは多くの人が経験
しているのではないでしょうか。

このようにいろいろな病気が登場しやすい会議
ですが、大切なこともその場で連絡・決定されます。
「会議は時間の無駄だから連絡事項はすべて
インターネットでやろう」ということも言われますが、
多くの情報がバラバラ来ると、その処理も実は
容易ではありません。会議という名目で他のことを
シャットアウトして議題や連絡事項に向かう時間
を確保することが大切だということも事実です。
本校は昨年度よりペーパーレスが推進され、
会議のときに紙の資料の配布は原則しないことに
なりました。それは否定すべきことではないですし、
「見ておいてください」で進めることが可能なため、
会議時間短縮に貢献している面もあるように思い
ますが、情報がさっと流れてしまい頭に残りにくい
ことも事実です。私に限らず多くの先生が
「会議での連絡事項が頭に残らなくなった」と感じて
いるようです。丁寧に説明しすぎてもいけないけど、
「見ておいてください」だけでもうまくいかないようです
(私自身学年会議・担任会議のレジュメは印刷して
配布しています)。

ところでこのようにいろいろと難しいことが多い
会議ですが、実は授業と似ているということに
気づきませんか?

授業≒会議?

教員が一方的に話し続けるだけというスタイルの
授業では生徒は授業に受け身にしか参加できず、
結果的に学習効率も下がります。これは長々と
レジュメを読むだけで進む会議と同じではない
でしょうか。「説明しないと生徒はわからない」
「自分の説明でわかったと生徒に思ってもらい
たい」こうした思いは誰しもが持ちます。
しかしそんなときにこそ会議の場を思い出したら
いいのではないでしょうか。丁寧にレジュメを読む
スタイルは本当にすばらしいですか?
会議の場で提案者にそのようにしてほしいですか?
この問いを考えることで、授業で自分がするべき
ことにも気づくように思います。

「グループにすれば活発に学びあう」これは間違い
ではありません。しかし会議の場でグループで話す
だけで本当にいい会議になりますか?一部の人が
時間を占有して終わるのではないですか?
グループ活動の際の注意点も会議から学べます。

丁寧に説明するのはやめて、書いてることは生徒の
責任で読ませればいいと思う時があるかもしれません。
そんなときも会議を思い出せばいいでしょう。
「資料は後で見ておいてください」という指示、
あなたはどこまで実行していますか?その進め方で
資料の内容は頭に残りますか?

このように会議という場は実は授業と同じような
ことが繰り広げられていることが多く、人は多くの
会議に一参加者として、つまり授業における生徒
のような立場で参加します。

アクティブラーニングという言葉が広がりだして
から、教師が教えすぎてはいけないという認識が
以前より広がったように思います。確かに長々と
説明するだけではなかなか伝わらず、何より生徒
が受け身なり頭を使いません。一方で「書いてある
から教材を見ておきなさい」だけでは多くの生徒は
見ません。こうした現状もある中で、どのようにした
らいいのかは日々試行錯誤するしかないことだと
思います。だからこそ誰しもが逃げれない会議と
いう場は、どの程度説明したらいいのか、どのように
すればグループで有意義な意見交換ができて意見
が深まるのか、こうしたことを生徒の立場で体験
できるチャンスであり、その体験から授業のあり方を
考えることができるのではないでしょうか。

自分ならこの議題をこう提案する、このように
議論を進める、ここまで考えることができれば、
授業改善はより進むでしょう。
みなさんはどう思われますか? 

これからの教師にはファシリテーション能力が
重要と言われます。会議の進行においても
ファシリテーターの果たす役割は大きく、ここにも
授業と会議の共通点があります。
やはり会議からこそ学べることは多いのかも
しれません。 

大事なことは「何のため」と「目標」

ところでいい授業、いい会議にするために大切な
ことはなんでしょうか?方法論だけで考えると、
「説明しすぎてもいけない、説明しないのもいけない、
グループにすればいいものでもないけどグループも
大切・・・」バランスでしか語れないように思えます。
大事なことは方法ではありません。

会議も授業も大勢の人の貴重な時間をもらって
実施しています。使える時間も限られているでしょう。
こうしたことをふまえた上で「この時間内に伝えたい
ことは何なのか?」「この時間内に議論して決めたい
ことは何なのか?」を明確にしているかどうかが
何よりも大切だと思います。
つまり大事なのは目標設定です。
目標が明確に決まれば、そこに至る道はいろいろ
思いつくでしょうし、そこから今回の方法を選択
すればいいのでしょう。これは会議も授業もまったく
同じことだと思います。

このように偉そうに書いている自分ですが、
会議を主催するのも、授業の実践もまだまだ
修行中です。ただ会議に参加する機会は少なく
ないので、この時間を学習の時間にしようと
思ったときから、会議の時間も前より少しは
有意義になり、自分のやっていることも客観的に
見れるようになった気がします。これからも
会議で学んだことを授業改善に活かそうと思います。

私事になりますが、昨年度、国立教育政策研究所
が主催する「学習指導要領実施分析委員」として、
指導要領の実施状況を分析する会議に参加させて
いただきました。大量の資料、多くの議題でしたが、
大変濃い議論となりました。会議を主催されていた
先生によるところが大きかったと今振り返って思い
ます。自分もまずは学年会など自分が主催する
会議を今までよりも有意義な時間にできるよう
頑張りたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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