2017.03.30
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年度末。新年度に向けてどんなふりかえりをしますか?

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

今期も執筆させていただくことになりました。引き続きよろしくお願いします。この原稿がアップされるのは年度末の3月30日です。年度末が忙しい時期というのは、学校の世界も同じです。生徒たちには春休みがありますが、教員にとってはこの時期は繁忙期まっただ中。バタバタしているうちに気がつけば新学期ということも多いです。

しかし年度替わりは大きな節目。4月になれば学年もクラスも、一緒に働くメンバーも変わります。お正月より4月の方が1年の始まりを実感するという先生は多いと思います。

そんな時期だからこそ、忙しい気持ちに負けずにふりかえりをすることが必要です。ところで、みなさんがふりかえりをすると決めたときに、どんなふりかえりをしますか?

ふりかえり ≠ 反省会

ふりかえりをする際に、何をどのようにふりかえるのかが大切です。日本では「ふりかえり=反省」と
いうイメージが根強く残っているように思います。しかしそうではありません。

1年あまり前に東京大学で実施されたフォーラムで文科省の田村先生は「精緻化・構造化」と「自覚化」という2つの視点からふりかえりの重要性を述べておられました。人が体験したことや学んだことは、本当はつながりがあり関係が深いのに、意識しないとバラバラになってしまう。体験したことや学んだことを構造化するため、そして精緻化するためにふりかえりが重要ということです。そのことで学んだことや体験したことは安定し、活用的になります。また体験や学びの自己受容を自覚することで意欲も向上します。つまり起こったことを自覚するためにもふりかえりが重要なのです。このようなふりかえりが次につながることはいうまでもないでしょう。

ドラッガーは自分の強みを知る唯一の方法としてフィードバック分析をあげています。フィードバック分析とは「何かをするときに、何を期待するかを記録し、9か月後、1年後に期待と結果を照合する」というものです。期待と結果の照合、これはふりかえりにほかなりません。

いろいろな体験したことや学んだことをつなぎ、自分の中で定着させる。同時に期待と結果を照合する。こうしたプロセスを経て自分の強みや次にやるべきことに気づいていく。このような年度末にふりかえりができれば意味があると思っています。

自分が年度末にしているふりかえり

私事ですが、ここ数年、年度末に一人になる時間を設定し、ふりかえりをしています。内容は次の3つです。

1、昨年度のふりかえり(フィードバック)を見ての気づき(達成したこと、達成できていないこと、予想外の成果、以上のことからの気づき)

2、今後3年から5年を見通してやることとその成果(書いたことが自分の強みと照らし合わせてどうか、今所属する組織や社会に対してどうかも書く)

3、来年度の仕事と期待する成果、目標、予想される結果

WORDで書いていきますが、毎年A4で3~4枚になります。昨年度のふりかえりを見てから今年度のふりかえりをするので、何が達成できたのか一目瞭然です。その次に翌年度のことを考えるので、ふりかえったことが次につながりやすいと自分では感じています。期待する成果は書きにくいのですが、無理にでも文字にすることでやるべきことが焦点化されますし、何より無理に文字にしたことで達成できたということも少なくありません。無理にでも先のことを考える重要性を感じる瞬間です。

このふりかえりはおそらくドラッガーの何かの書籍を参考にしたのだと思います。過去のふりかえりを見るとその時々考えていたことがわかって懐かしい気持ちになったり、実は過去に今につながっていることが書かれていてびっくりしたりします。そして何より成功も失敗も実は毎年同じようなことを繰り返していること、言い換えれば自分の成功・失敗パターンが存在することにも気づきます。

高校3年生担任を終えたこの時期だからこそ、しっかりふりかえりをして次年度を迎えたいと思っています。ふりかえりについては、いろいろな方法があると思います。自分はこうしているとか、こんなふうにしたらいいのではというアイデアがあれば、ぜひ教えてください。自分自身まとまった時間をとることはなかなかできません。週末の部活指導の帰りにカフェに行く、電車での移動時間を使う(新幹線がベスト!)などで無理やり時間をねん出しています。ただ民間企業など学校の外の世界の話を聞けば聞くほど、生徒を評価し、生徒にふりかえりをさせる教員が、実は評価をされることにも、ふりかえりをすることにも慣れていないことに気づきます。教員が自分の仕事を評価すること・されること、
自分についてふりかえりをすること、これらの重要性はもう少し知られた方がいいと思いますし、職場の中でふりかえりをする時間の確保がされてもいいと思います。

忙しい毎日にこそ、ふりかえる時間を!

山崎拓己さんが書かれた「ひとり会議の教科書」という本があります。ひとり会議とは、頭の中の考え事を整理し、やることをはっきりさせるための“場”です。山崎さんは「目先の「やるべきこと」にまみれて「やりたいこと」に集中できていない方って多いと思う」と言われています。そしてひとり会議はひとりで物思いにふける時間ではなく、積極的に自分のことを考えていこうという時間です。

山崎さんは20歳の時から毎日「ひとり会議」の時間を確保されているとのことです。自分自身毎日した方がいいと思いつつ、そこまではできていません。ただ毎月のふりかえりは決まった書式でやっています。月に一度でも自分にとっては貴重な時間になっています。時間は気がつけば過ぎていくもの、過ぎ去ったことは意識しないと忘れてしまうものです。そして目標を設定する大切さをわかっていても、それができないまま次の年度はやってきてしまうものです。自分自身ふりかえりをする中で、起こったことや気づきはわずか1か月でこんなに忘れてしまうのだと思うことが多いです。手帳などを見てようやくいろいろな記憶がよみがえってきます。わずか1か月でもそうなので、1年となると記憶はよりあやふやになります。
だからこそふりかえりは大切だと感じています。

まもなく新年度がスタートします。今年度のふりかえり、来年度の目標設定をして新年度を迎えませんか。自分に言い聞かせるために書きました。

中教審の答申では「キャリアパスポート」につい>書かれています。小学校から高校まで自分の履歴を積み重ねていこうというこの取組が本当にすすめば、その時にふりかえりはより重要になってくるでしょう。このことについては機会があれば別途書きたいと思います。

お読みいただきありがとうございました。次回は教師のキャリアについて書きたいと思います。キャリア教育にかかわるようになってから、いろいろな人のキャリアにも興味を持つようになり、必然的に(?)自分の仕事である教師のキャリア形成についても興味を持ち始めたのだと思います。「教師のキャリアは現場で生きるか、教育委員会や管理職になることを選ぶかしかない」という声を聞いたことがありますが、それは「キャリア」を「役割」のみに限定して狭くとらえた明らかな誤解です。次回はこうしたことについて書きたいと思います。今期もよろしくお願いします。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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