2017.03.16
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沖縄が教えてくれた教育改革に大切なこと~有志の力と強制力の組み合わせで最適解を!~

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

前回の最後に「今年度沖縄を訪問する機会があり、
これからの教育改革を進める大きなヒントをもらった」
と書きました。今期の連載も最後になりました。
最後は沖縄でヒントを得た改革を進める方法に
ついて書きたいと思います。

変化することは難しい

学校に限らず、何かを変えることは難しいです。
そもそも変えるべきなのかという大前提さえも、
人によって考えがバラバラな場合がほとんどです。

今あるものにはそれなりの存在意義がある場合が
ほとんどということも変化を難しくします。
慣性の法則とはよく言ったもので、人はちょっとした
生活習慣を変えることさえも難しいです。
力を加え続けることでようやく変化し続けることが
可能になるのかもしれません。

明治維新以降の教育改革。そんなことが言われ、
教育が大きく変わろうとしています。
その一方で教育改革を進めようとしている人からは、
多くの人が改革の必要性を感じていない・
わかっていないという不満(愚痴?)も聞かれます。
多くの教員は目の前のことで忙しく、いろいろなことを
考える余裕がないのも事実です。この状況を変える
ためにはどうすればいいのでしょうか?

沖縄での衝撃

2016年7月4日(月)。
沖縄県のキャリア教育研修会にお招きいただき、
リクルートキャリアガイダンスの山下編集長と
コラボして、「なぜ学ぶ?」の授業をしました。
沖縄県教育委員会はキャリア教育の研究指定校を
5校指定されています。7月はその指定校5校の
先生方対象の研修会でした。各校から教頭先生を
含む6名の先生が研修に参加されていました。

ここまでなら他のところでもよくある研修です。
しかし沖縄は違いました。
研修は学校ごとに1つのグループ、
つまり5グループで実施する予定でした。
ところが研修開始前に会場を見るとグループが7つ!
実は指定校5校の先生以外にも10名あまりの
先生が研修に参加されていたのです。
みなさんぜひ研修を受けたいとのことで、
有志で参加されました。(年休・研修扱い、、、)。
有志で参加された方は自分の学校でさっそく
実践されました。結果的に研修後、キャリア教育の
取り組みは指定校5校以外にも広がったのです。

私はここに大きなヒントを得ました。
何かを進めようとするときに、有志の人で集まって
進めるのか、公の組織で一定の強制力を持って
進めるのか、大きくわけてこの2つの方法があります。
教育改革のために教員の研修をしようと考える
時も同じでしょう。草の根の学びの場や、
校内での希望者のみを対象とした勉強会などは
前者でしょうし、教員の免許更新制度や
教育委員会が対象者を決めて実施する研修・
校内での全教員対象の研修会などは後者になる
でしょう。どちらもメリット・デメリットがあります。
有志が集まる研究会では、そのことに興味の
ある一部の先生が対象になります。前向きな会に
なりやすいでしょうが、広がりという点では難しいです。
一方強制力のある場では、全員を対象とできます。
しかし、どうしても参加者が受け身になりやすく、
やらされ感を0にすることは難しいです。

この2つは相反するように思えますが、
実はこの2つを組み合わせたところにこそ、
何かを進めるときの最適解があるのではないか。
沖縄での事例からこんなことに気づきました。
有志の力だけでもダメ、強制力だけでもダメ、
大切なことはその組み合わせなのです。

有志の力と強制力を組み合わせる

あるとき、通勤途中の道端がきれいに整備され、
多くの花壇が置かれていることに気づきました。
少し前まではごみが放置されていたその場所に
花が咲いている。このことは大きく、気がつけば
そのまわりも徐々にきれいになっていきました。
少しの変化が大きな変化につながりました。
そして数年たった今でも花壇はきれいなままです。

後日なぜこうなったのかがわかりました。
実はその場所を整備したい人(有志)を募り、
整備費用を行政が補助するという形だったのです。
有志の人の善意だけに頼るのでもなく、
行政(公の組織)による整備(強制力)だけに
頼るのでもないこの仕組みは、結果的にきれいな
状態を長く続けることにつながっています。

教育についても同じことが言えるのでは
ないでしょうか。本当に改革を進めるには、
有志で集まる人の頑張りだけでもダメ、
公の組織だけでもダメ、それらを組み合わせた
ところに最適解があるのです。

実は私が勤務している職場では、現在ここに
書いたことが行われています。昨年度から
立命館附属校全体を対象として、中堅研修
なるものが始まりました。中堅研修は研修としての
位置づけで、一定の予算措置があり、管理職から
案内や呼びかけがあります(公のルート)。
しかし研修の内容はかなり現場の希望が通ります。
そして研修が実施される際には各学校で「参加しよう!」
という声かけが現場から行われます(有志)。
2年間で7回実施されましたが、ある程度の強制力と、
有志が集まれる場という組み合わせの効果で
予想以上の成果がありました。
ところが組み合わせという言葉にはどうしても
グレーな部分が残ります。そのため今でも運用上の
課題はいっぱいあります。しかし参加した先生は
横のつながりもでき、お互いに刺激しあって、
よりパワーアップして各職場に戻れています。
これからも続けてもらいたいと思っている企画です。

一部の有志で集まる人の頑張りだけに頼るのでもなく、
上から強制されてやらされるだけでもない、
このように進めば、今でもきれいに咲き続ける
道端の花のように、教育改革は成功するのでは
ないかと思ったりします。沖縄の例はこのことを
暗示してくれているようにも思います。
日本の歴史をひも解けば、明治維新以降の
日本の発展に教育の果たした役割は大きかった
ですが、そのときも藩校(公)と私塾(有志)とが
両輪となって教育を変えていきました。
有志の力と公の強制力を無味あわせて改革を進める、
この2つの組み合わせの最適解を求め続ける。
日本の気質を考えると、ここに次の道があるように
思います。みなさんはどう思われますか?

これで今期の連載は終わりになります。
今期も多くの方にお読みいただき、
感想などもいただきました。
これからも実践を重ねていきたいと思います。
本当にありがとうございました。

 

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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