2017.01.03
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ライフプランを考えることは重要!

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任) 酒井 淳平

ライフプランを考えることの重要性

あけましておめでとうございます。2017年はじめの投稿になります。
今回は大きく人生全体を考えるテーマということで、
「ライフプラン」について書きたいと思います。

みなさんは高校生(2年生あたり)にライフプラン作成の授業(指導)
をすることについてどう思いますか?
どんなライフプラン作成授業ならやる意味があると思いますか?
上の問いを自分ごとに変えた、
みなさんはライフプランを作成されていますか?
どんなライフプランを作成してみたいですか?ではどうでしょうか。

まわりの人に聞くと特に教員以外の方から
「ライフプラン作成は高校生にこそ必要!」
「生きていくにあたって○○(例:お金のこと、ジェンダーなど)も大切。
高校のときから知っておく必要がある」などの声を聞きました。
「もっと高校のときに将来について考えておけばよかった」
という声も多かったです。
一方高校はどうなっているかというと、家庭科の内容にライフプラン
はありますが、限られた時間ということもあり、扱いは学校によって
大きな差があるようです。将来について考えることなのでキャリア教育
で取り組むことなのかもしれませんが、あまり話を聞きません
(金融教育、職業を考えるなど部分的な実践は聞きます)。
しかし近年、神奈川県や富山県、栃木県など独自にライフプランを
考えるテキストを作成されている県も出てきています。
こうしたことを考えるとライフプランを考えるということは
これから実施が広がる領域なのかもしれません。
いずれにしても「ライフプラン作成」ということについての取り組みは
現状ではまだまだ広がっていないと言えるでしょう。

早くから知っておけばよかったと思うことを、早めに教えること。
実は難しいことです。たとえば多くの大学生が
「高校生のときに○○を知っておけば」というのを聞いて、
その○○を高校生に伝えても響かないということは少なくありません。
人は自分で気づき、反省しながら成長する生き物で、
何事も響く時期があるのかもしれません。
しかしキャリア教育に取り組んできた経験から、
たとえあやふやなものであっても、自分と向き合って少し先のことを
形にしていく作業は大切だと感じています。
こんなことを考えていると、定年退職して再雇用で働いておられる
同僚の先生に「定年退職してからのことは退職後考えても遅い。
もっと早くから漠然とでも考えておけばよかった」ということを聞きました。
ライフプランも同じで、漠然とであっても早くから考えることに
意味があるのかもしれません。
粘土で何かを作るときに、まず大ざっぱでもまず形を造ることが大事で、
そこからの修正は簡単です。もしかしたらライフプランにも
同じようなことが言えるのかもしれません。こう考えると、
高校生にライフプランを考える授業は必要だと言えるように思います。

ライフプランを作成する授業、どんなものがいいと思いますか?

政府、文科省の動き

高校生にライフプランを考えさせることが大事だということは政府も
文科省も考えているようです。平成28年6月に閣議決定された
「ニッポン一億総活躍プラン」にも
「ライフプランニングに関する教育の支援の推進」が盛り込まれました。
これを受けて文科省では「若者のためのライフプランニング支援の
推進事業」を進めています。その具体的施策の一つとして、
教材等を作成し、ライフデザイン構築のための学びを推進するため
「ライフプランニング支援推進委員会」を設置するということを決めました。
実は私もキャリア教育にかかわっていたご縁から、こ
の委員会に有識者委員として関わることになりました。
当初は完成したテキストに意見をいうという役割だったはずが、
テキストや指導案を作成するチームにも入り今に至っています。

委員会についての詳細は
http://www.mext.go.jp/a_menu/ikusei/kyoudou/detail/1376842.htm
をご覧ください。

2016年8月9日(火)、第一回ライフプランニング支援推進委員会が
開催されました。様々な立場の方が参加され、いろいろな意見が出ました。
「高校生が知っておくべきことはこんなにあるのか」と思ったのと同時に、
「大事なことは知識を詰め込むことではなく、
高校生が自分ごととして考えることだ」ということも感じ、
その意見を言わせていただきました。
その後も会議は続き、同時並行で高校生へのヒアリングなども実施し、
今に至っています。

テキストは完成しますが、、、

紆余曲折ありながらも高校生用のライフプランを考えるテキストの
作成は進み、今年度末には完成する予定です。
しかしテキストの完成は通過点に過ぎません。
当初の目標である「ライフプランニングに関する教育の進展」、
そしてその先にある「一億総活躍社会の実現」に向けて
課題は山積みです。

まずはテキストの問題があります。知識の注入ではなく、高校生が
自分ごととして考えていけるようなものにするという思いはありますが、
タイトなスケジュールの中どこまで実現するのか、勝負は今からです。
同時にテキストがどのように使われるか、テキスト作成者の思いが
使用者に伝わるのかという問題もあります。

何より大きな問題は、どの時間に実施するのかという問題です。
○○教育が学校に数多く入ってくる中で、ライフプランニングに
あてる時間はあるのでしょうか?
家庭科の中で一部は実施できるかもしれませんし、
LHRや総合で数時間なら確保できるかもしれません。
いずれにしても時間の捻出は難しく、せっかく作ったテキストが
使われないという可能性も十分あります。

このようにこれからのハードルは高く、
「テキストに加えて指導の手引の充実」「実践例の蓄積」
「指導者の養成」などなどやるべきことはたくさんあります。
しかし高校生へのヒアリングをかねて本校で実施した
ライフプランを考える授業での生徒の様子を見て、
ハードルは高くてもやる価値があることだと強く思うようになりました。
その授業は富山県立砺波高校の永井敏美先生に来ていただいて
実施しました。将来の自分について、お金のこと、
どんな暮らしをしたいのか、結婚することや子どもを持つことについて
どう考えているのかなどを、生徒同士でディスカッションしながら
深めていくというものでした。
生徒の答えに対して教員がさらに問いかけることで、
より考えが深まっていくように進められました。

授業後、生徒たちは「楽しかった」
「ちょっと先の大きなテーマを真剣に考えることは大切だと思った」
ということを言っていました。
「10年後とか20年後って先すぎると思ってた、でもすぐにきそう」
と言っていた生徒もいました。
生徒たちの充実した表情、考えが深まっていく様子を見ていると、
ライフプランを考える教育を形にするということを頑張って
進めないといけないと強く思わされました。

ライフプラン、ちょっと先の大きなテーマを真剣に考えること。
この重要性は大人も同じです。大事だけれど、後回しにしがち
ということも、生徒と大人で共通していることかもしれません

1年のはじめは目標を立てたりするのにいい時期です。
この機に少し視野を広げてライフプランを考える時間を確保する
ことも大事なことなのでしょう。
自分自身、高校1年生から持ち上がった高校3年生とももうすぐ
お別れです。家族のことなど含め、ライフプランについて考える、
自分の将来と向き合う時期だと感じています。

高校生用のライフプランを考えるテキストは3月末に完成予定です。
どのような形で配布されるのかなどは未定ですが、
どこの高校でも実施してもらえるものにと思います。
興味ある方は連絡してください。

ライププランを考えることは、人生を自分事にすることに他なりません。
生徒たちをおどすのでもあおるのでもなく、
ライフプランを考えることを通して未来が楽しみになる生徒が
増えればいいなと思います。

お読みいただきありがとうございました。

今年もよろしくお願いします。

酒井 淳平(さかい じゅんぺい)

立命館宇治中学校・高等学校 数学科教諭(高校3年学年主任・研究主任)
文科省から研究開発学校とWWLの指定を受けて、探究のカリキュラム作りに取り組んでいます。
キャリア教育と探究を核にしたカリキュラム作りに挑戦中です。

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