2008.04.15
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旬の野菜を食べよう 【旬と栄養】[小6・学活]

第二十一回目のテーマは「旬と栄養」。旬の野菜の魅力を知って野菜を食べましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

旬の野菜を食べよう【旬と栄養】[学活]

 旬の食材は、おいしく、栄養価も高く、しかも経済的です。いいことばかりなのですが、昨今は「旬が消えた」とも言われています。そのために子どもたちだけでなく大人も野菜の旬を知らないことが多いようです。
「食材には旬があることや旬のよさを知り、野菜を進んで食べる」、そんな目標で取り組んだ6年生学活の「旬の野菜を食べよう」の学習です。

まず、野菜の絵カードを作る

 「みんなの知っている野菜を発表してみましょう」
そう言って、班対抗で黒板に書き出させます。子どもたちは給食の献立表を取り出して見たり、家庭科の教科書から探したりし始めました。献立表をしっかりと見ることはよいことなので、そのままにしておきました。教科書も然り。

旬の野菜を食べよう【旬と栄養】[学活]
知っている野菜の名前を班ごとに書き出す

「コンブもいいですか」
「いいよ。栄養士さんに聞いてみようね」(実際は、海草類は野菜とは分けるようです)
「ダイズはいいですか」
「ダイズもいいことにします」(栄養士さんによると、ダイズは乾燥しているので野菜ではないとのこと)
こうしたやり取りの中で黒板いっぱいに野菜が並びました。子どもたちが書いた中にはキノコも登場しました。今は野菜かどうかの判断をしないで書いてもらいました。

「たくさん出てきたね。こんなにたくさんの野菜があるんですね。では、この野菜を絵に描いてもらおうか」
「えーいやだ」
「それなら、いっぱい出すんじゃなかった」
という子もいましたが、A5大の画用紙を渡されると、班の中で分担して野菜の絵カードを描いていきます。

 今度は図書室に出かけます。図鑑や百科事典、科学読み物などを調べて野菜の絵を描いていきます。さっきまでいやだと言っていた子も喜んで描いています。6年生でもとても楽しそうです。
「ワサビってこんな形してたの」
「オクラの花はきれいだね」
等々、新しい発見もありました。

栄養士の先生に野菜の旬を聞く 


野菜の旬がいつかを班ごとに話し合う
旬の野菜を食べよう【旬と栄養】[学活]
自分たちの考えた旬を分類して黒板に貼る

 ここからが2時間目です。栄養士さんの登場です。
まず、これまで描いた野菜の絵カード48枚を春夏秋冬に分ける作業を班で進めました。ちなみに、春:3~5月、夏:6~8月、秋:9~11月、冬:12~2月と説明しました。

 一つの班にそれぞれ8枚の絵カードを渡し、その野菜の旬がどの季節になるかを班で話し合います。意見がまとまったら黒板に貼っていきます。
「春だよ」
「いや夏、絶対夏!」
と、にぎやかに議論しています。
全部のカードを貼り終えたら、どの野菜が難しかったかを聞きました。ミツバ、アスパラガス、ミョウガ、シソ、カボチャなどが難しかったようです。栄養士の先生から答え合わせをしてもらいます。

■カボチャ:[子どもたちの解答]冬、秋 →【正解】夏
■カブ:[子どもたちの解答]春 →【正解】冬、
■ミョウガ:【正解】秋
■アスパラガス:【正解】春
■ハクサイ:【正解】冬

 以上のような訂正や正解を説明してくださいました。さらに、
「アズキやダイズは乾燥しているので野菜には入れません」
「ジャガイモやニンジンは一年に2回とれますが、旬は主に春です」
「モヤシは年中とれますね」
「キノコは野菜とは言わないで別にしますね。旬は秋ですね」
「ワカメやコンブは海草という仲間に入ります」
といったことも教えてもらいました。

旬の野菜のいいところは?

 次に藤本が言います。
「旬の野菜がどうしていいのか、旬の野菜のいいところを知っていますか」
そう問うと、
「栄養がある」
「その季節にしかとれないのでおいしさを味わえる」
「たくさんとれるので安い」
といった意見が出ました。栄養士さんからは
「香りがよい」
「季節に合っているので低農薬だから安心」
また、
「旬の野菜には日本人ならではの食文化があります。食べ物に季節を感じるという、日本人として忘れてはならない大切な心がそこにはあるのです」
そんなすてきなことも教えてもらいました。

 続いて栄養士の先生の腕の見せ所です。食品成分のビタミンC量を露地物とハウスもので比較するデータを示しての説明です。レタス、トマト、キュウリ、ホウレンソウを、それぞれ露地とハウスものでビタミンC量を比較すると大きな違いがありました。

 さらに旬の野菜には、その時々の体調を整えるというよさがあることも教えてくださいました。たとえば、体温が上がる夏場はキュウリ、ナス、スイカなどの夏野菜が体温を下げ、冬野菜は逆に体温を上げてくれること等です。

 

一日400グラムの野菜を食べよう 

 最後に、一日に摂りたい野菜の量を紹介してくださいました。
一日に摂りたい野菜は400g。それをハクサイ、キャベツ、タマネギ、生シイタケ、ピーマン、トマト、カボチャ、サトイモ、ジャガイモ、サツマイモ、長イモなど、たくさんの実物を使って説明してくださいました。

 これだけ食べるといいですね、と野菜を紹介するたびに
「えーそんなに」
「これだったら食べられる」
と声があがりました。
「野菜はゆでたり炒めたりすると、かさが減るから食べられるよ」
との説明に、みんな納得の顔でした。

 

 

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえ、みうらし~まる〈黒板〉

授業の展開案

グリンピース、春キャベツ、新タマネギの他に、今が旬の野菜にはどんなものがあるでしょうか。

食べ物は旬の時期が一番おいしく、また栄養価も高いと言われています。春が旬の食材を使った料理を作ってみましょう。

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