2007.12.18
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カボチャが海を渡るとき 【食と国際社会】[小6・社会科]

第十七回目のテーマは「カボチャが海を渡るとき」。冬でもカボチャが店頭に並んでいる秘密を探りましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

カボチャが海を渡るとき

 11月から5月ころのスーパーマーケットに並ぶカボチャの産地を見ると、ニュージーランド、メキシコ、トンガと輸入ものが大半を占めています。いずれも国内産が品薄になる時期です。
 実はカボチャは冬春の9割以上が輸入品で、需要の周年化がもっとも進んだ野菜の一つです。この点に着目して6年生社会科の「日本と関係の深い国々」の学習で「海を渡るカボチャ」の授業を1時間ほど取り上げてみました。

市場のカボチャ入荷量グラフからわかること

 東京都中央卸売市場での「カボチャの月別入荷量」の棒グラフを子どもたちに見せます。実際のグラフは下の写真のように「国産」と「輸入」に色分けしてあるのですが、子どもたちには白黒にして両方のちがいが分からないように塗りつぶしたグラフを渡しました。
 

「このグラフを見て分かることは何かな」と問うと、
「1995年のカボチャの月別入荷量です」
「東京都中央卸売市場のものです」
「3月と9月が入荷量は多いです」
 と子どもたちの答え。
「そう、3月は4800トンくらい、9月は4500トンくらいかな。9月が多いわけは分かるよね」と聞いてみますが、子どもたちはピンと来ていません。そこで、
「カボチャの旬はいつだったかな」とヒントを与えると、
「夏だ! そうか、だから9月は多いんだ」。子どもたちはすでに「野菜の旬がいつか」をテーマにした学習を経ているのですぐに理解できました。

入荷量からわかるカボチャの旬と輸入の関係。
入荷量からわかるカボチャの旬と輸入の関係。

「9月が多いのは分かるけど、どうして3月が多いんだろうか」と問うと、
「ハウスで育てているんだよ」
「カボチャって保存がきくからきっと貯蔵したカボチャだ」
「輸入してるんじゃないかな」などと答えが返ってきます。
これらの子どもたちの発言を受けて「国産と輸入」に区別されたグラフを見せます。
「やっぱりそうだ。輸入が多い」
「11月からは輸入が国産より多くなるよ」
「冬は輸入が断然多い」
「夏は輸入が全然ないよ」
「そうだね。カボチャの旬でない時期は輸入が多いんだね」とまとめ、次に進みます。
 

カボチャはどこから輸入しているのだろう?

カボチャの表示を見て、輸入先を確認する。
カボチャの表示を見て、輸入先を確認する。

 次に、世界地図を使って
「カボチャはどこの国から輸入しているんだろうか」と聞きます。
「きっと日本と季節が反対の国」
「南半球の国」と子どもたち。
「いい言葉見つけたね。この赤道からこちらは南半球といって季節が日本と反対になるから、2月頃は夏のような気候です。南半球ではカボチャがよく成長する夏は日本の冬に当たるんですね」、そう説明しながらカボチャを見せます。

 「昨日スーパーマーケットで買ってきたカボチャです。表示を見てみます。ニュージーランドでした。どこかな」と世界地図で探させます。
 子どもたちはすぐに見つけました。
 そして、『ニュージーランドかぼちゃkids』のホームページにニュージーランドのカボチャ畑や収穫・出荷の様子が掲載されていますので、子どもたちといっしょにサイトを見ながらカボチャ栽培の様子を確認します。

カボチャはなぜ南半球から輸入されるのだろう?

「どうしてニュージーランドから輸入しているんだろうか」、そう聞いてみると、
「冬は日本で作っていないから競争相手がないから売れる」
「5年生の時に野菜は季節をずらして育てると習った」……などなど、そんなことを答えてくれました。

「まだ他にカボチャを輸入している国があります。どこでしょうか」と問います。
「南半球だからきっとオーストラリア」
「南アフリカ共和国」などの意見が出ます。
 そこで、「東京中央卸売市場におけるカボチャの月別県別入荷量と平均価格」のグラフを見せます。
「トンガってどこだ」と、子どもたちはさっそく地図で探し始めます。すると、
「やっぱり南半球だ!」と見つけ、納得します。

メキシコと南半球からの輸入が多い。
メキシコと南半球からの輸入が多い。

「メキシコは……あれ? 南半球じゃないぞ!」メキシコの位置を見つけた子どもたちから疑問が生まれます。
「気候がカボチャに合っているんだろうか」
「作りやすいからいっぱい作っているのかな」
「赤道に近いから暖かいから作りやすい」
「おいしいのかも」
 子どもたちのそんな意見を受けて次のように話しました。
「カボチャは日本にはカンボジアという国から入ってきました。カンボジアからカボチャになったのです。しかし実は、カボチャの原産地はメキシコです。メキシコのカボチャは甘くてほっこりしていておいしいのだそうです。輸入される野菜の中では唯一といっていいほど、輸入もののほうがおいしいのがカボチャなのだそうです。だからメキシコから輸入されています。最近は、日本の農家も負けないようにおいしいカボチャを作るように努力しているそうです」。

たった一つのカボチャからいろんなことが勉強できた!

 この授業の感想を、子どもたちは次のように話してくれました。

「旬が夏でも季節が反対の国だったら1年間ずっと売り続けることができるんだと分かった。1年中カボチャが食べられるようになっていて日本の貿易システムはすごいと思った。 日本人はカボチャが好きだと思います。年中カボチャを食べられるようにニュージーランドやトンガから輸入しているんだと思います」。

「カボチャがこんなに奥の深いものだったとはじめて知った。世界とのいいローテーションをしてるんだと思った。メキシコに負けないようなカボチャを作って欲しい」。

「カボチャだけでこんなに考えられるとは思わなかった。いろんなことを考えて輸入しているんだと思った」。

「北半球や南半球、赤道や産地などいろんな言葉が出てきてカボチャ一つでこんなに勉強できるんだと感心しました」。

「カボチャ一つでこれだけのつながりが海外とあることにすごくびっくりした」。

 

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえ、みうらし~まる〈黒板〉

授業の展開案

国内の産地にも注目してみましょう。6月の鹿児島・神奈川から始まって、栃木、茨城、秋田、北海道と、産地が北上していくことに気づきます。
 

カボチャの他にどんな野菜が外国から輸入されているのでしょうか。スーパーマーケットで産地を調べてみましょう。

 

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