2006.08.22
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発酵 【環境・科学】[小6・理科・総合]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。いずれも今すぐ使える食育アイディアばかり。第一回目のテーマは「発酵」です。食育を通して食文化を支えてきた人間の知恵や技に迫りましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

「腐る」と「発酵する」の違いは?

 夏になると食べ物が大変腐りやすくなります。腐るというと困ったことや迷惑なことばかりが話題になります。でも上手に腐らせることで私たち人間にとって役立つことはたくさんあります。「ヨーグルト」と「腐った牛乳」がそのよい例です。微生物によって食べ物などが分解されることを発酵する、または腐るといいますが、この二つは同じ現象です。「発酵する」と「腐る」の違いは、人間が微生物をコントロールしているかしていないかの違いです。簡単にいえば食べて美味しいと感じられるように腐らせたものが発酵食品で、まずいと感じられたり、おなかが痛くなったりするものは、ただ腐った食品ということです。

発酵食品 自分たちで育てたダイズを使って身近な発酵食品の一つ、納豆作りに挑戦したことがあります。1度目は「腐った煮豆」ができてしまいました。どうしてうまくいかなかったのか話し合いました。保温が充分にできなかったので納豆菌がうまく働かなかったのだと結論づけました。そこで容器を保温できる発泡スチロールにしたり、カイロを容器に張り付けたりと工夫して再挑戦しました。2度目は上手に納豆を作ることができました。

腐らせて役立つものにかえる

 学習後に子どもたちは次のように記しています。「『腐る=くさくてきたない』と思っていました。くさいのはあっているかもしれないけど、『きたない』は食べ物にはないと思えました。『発酵』は食品をよくする方の腐り方なので『発酵』させた食品はおいしくなります。『発酵』させると保存ができるから便利です」。

 「醤油」に「味噌」「チーズ」「日本酒」「ワイン」「漬物」「納豆」。古くから人間の知恵によってこうした食品が作られ、食生活を豊かにしてきました。腐らせて役立つものにできるかどうかは、人間の知恵にかかっているのです。

 さて,「うまく腐らせて役立つ」例はまだあります。自然の中では木の葉などは長い時間をかけて、ゆっくりと分解し腐って土になります。この自然の働きを活かして短い時間に発酵させるのが堆肥作りです。農家では昔から堆肥を作ってきましたし、最近では家庭ごみの約3分の1を占めるという生ごみをリサイクルすることで、ごみを減らすことができます。生ごみも、きちんと処理をすれば、大切な資源として生まれ変わります。「ごみ」とするか、「資源」とするかも人の知恵なのです。

(文:藤本勇二 イラスト:みうらし~まる

教材開発のヒント

日本の伝統食の中にはたくさんの発酵食品があります。身近にある「発酵食品」をさがしてみましょう。

土に野菜くずを埋めてみましょう。季節にもよりますが、1ヶ月もすれば土になっていきます。校庭の土、花壇の土,畑の土……どんな土を使えばいいでしょうか。
 

 

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