旬を感じる俳句を作ろう 【食と言葉】[小5・国語]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第113回目の単元は「旬を感じる俳句を作ろう」です。
旬について考える
【A】
ネギ
ゴボウ
ニンジン
ミカン
ハクサイ
キュウリ
ピーマン
ナス
キャベツ
トウモロコシ
「根野菜だ」
「葉野菜だ」
などと議論が進み、
「鍋によく入れる」
「サラダによく入る」
などの意見から、【A:冬野菜】【B:夏野菜】に分類されていることに気がつきました。クイズの後は答え合わせをしながら、テレビモニターに野菜や果物の写真を映し出し、これらには「旬」があることを確認しました。
ゲストティーチャーによる話を聞く
子ども達にとって幸運なことに、担任が野菜農家の方とつながりがありました。自然学校の補助指導員の中に農家を営まれている方がおられたのです。子ども達には内緒で、農家の方に連絡を取り、ゲストティーチャーとして迎えました。
農家の方には、今育てている野菜の話や、農家をしていて大変なことを話していただきました。
「ブルーベリーが明日で採れ時になるという時に、鳥に食べられてしまった」
などという経験談から、動物達にも旬がわかるのではないかというお話は印象的でした。子ども達に生きた言葉となって心に届いたようです。
先人の俳句を見せ、その旬の季語、季節を考える
「旬」が何かということを理解した所で本題に入ります。
「旬の野菜や果物で、俳句を作ろう」
という学習課題を提示しました。旬の野菜や果物を季語にして、その食材が持つイメージを膨らませながら俳句を作るのです。
子ども達はこれまでにたくさんの川柳を作ってきましたが、俳句は初めてです。そこでまず、川柳と俳句の違いについて問い、
「俳句は季語を使って自然の四季を詠むもの」
ということを確認しました。川柳との違いを細かく言うとたくさんありますが、「字余り」「字足らず」「季重ね」には、おおらかに対応することにしました。
次に、子ども達と同じ年齢の子が詠んだ俳句を見せ、季語と季節を考える活動から始めました。作品は以下の通りです。
(1) じっくりと 煮込む大根 飴の色
(2) 青空の 下でトマトを 丸かじり
(3) ほとばしる 水のほとりの ふきのとう
これらの俳句の季節は何か、班で話し合い、春夏秋冬カードを上げさせるのです。その際、
「どんな風景が浮かんだか」
「どの部分からそのように感じたか」
などと発問し、実生活の経験を基にした根拠を探させて、話し合いを促しました。子ども達は班の皆と相談し、最後にはクラス全体で発表しました。
子ども達からは、
「“煮込む”から“鍋”を連想するので、冬だと思います」
「“青空”から夏を連想する」
「“丸かじり”から、みずみずしさを感じます」
「“ふきのとう”は雪解けの後に出てくるイメージ」
などの意見が出ました。
(正解は、(1)冬、(2)夏、(3)春)
季語として使う旬の食材を選ぶ
俳句や季語のイメージができてきた所で、俳句作りの土台となる学習に移りました。秋の旬の食材にはどんな「野菜や果物」があるか、ワークシートに書き込みながら三つか四つ出させました。途中で考えを支援するために「秋の食材一覧」を掲示しました。
次に季語を選び、その食材に関する思い出やイメージを書き出させました。
「炊き込みご飯にはきのこが入っていていい香り」
「クリは中身がギュッとつまっていてかわいい」
「カボチャを使ってハロウィンをする」
などのイメージが膨らんでいました。
イメージが書き出せた所で、俳句作りに取り掛かりました。できた子ども達には発表をさせました。匂いや食感や味に触れた素敵な作品でした。
この学習では、第2時でさらにじっくりと俳句を作り 、第3時では発表し合い推敲する学習、そして、第4時では俳句を作品にして俳句集にするという流れにつながっていきます。
授業後の子ども達
旬を感じる俳句を作ろうということで始まった単元でしたが、いざ俳句を作ってみると、その句の中には「お母さん」や「おばあちゃん」、「兄弟」や「家族」というフレーズがたくさん登場しました。子ども達は、この学習を通して、旬の食材について学ぶこと以上に、自分に食事を作ってくれている人達に対する感謝の気持ちに改めて気がついたようでした。
また、今までは特に注意して目を向けることのなかった家庭での食事や給食の献立に、改めて注目する子ども達が増えたこと、家庭科の調理実習では、味噌汁の献立を班で相談して決める活動において、子ども達の会話の中から
「旬の食材を具として入れたい」
という言葉が自然と挙がったことなどを考えると、この授業をきっかけに子ども達の食に対する意識の変化が少しずつ現れてきたといえるのではないでしょうか。
授業の展開例
- 地域の旬の食材を使った給食の献立を考えてみましょう。
- 旬の食材の良さは何でしょうか。調べてみましょう。
池淵 正樹(いけぶち まさき)
兵庫県尼崎市立成文小学校 教諭
小谷 亮太(おだに りょうた)
兵庫県尼崎市立成文小学校 教諭
本校では「見つめよう食生活、守ろう自分の体と心~いつでも・楽しくできる食育をめざして~」という研究テーマに沿って食育の研究を進めてきました。楽しい食育を通じて食生活を改善する授業を目指して取り組んでいます。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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