品物の産地 大そうさ! 【食と流通】[小3・社会科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第105回目の単元は「品物の産地 大そうさ!」です。
産地地図を作る
スーパーマーケット見学を振り返り、野菜や果物などには、産地が表示されていることを確認することから授業はスタートしました。
「たくさんの品物は、どこから運ばれてくるのだろうか?」
という学習課題を確認した後、子ども達は事前に調べてきた品物の産地について発表します。
「さんまは北海道」
「柿は和歌山県」
「レンコンは兵庫県」
「バナナはフィリピン」
「牛肉はオーストラリア」
など。次に、これら発表した品物を野菜、果物、肉や魚の順に黒板に整理していきました。
子ども達が発表した品物の産地を地図で確認してから、どこから来たのかがわかるように日本地図に食品のイラストを付けたマグネットを貼っていきます。こうして、産地地図を作成していく中で、世界地図や地球儀も活用し、日本と離れた外国からも品物が運ばれてくることを子ども達は理解していきました。
産地地図から気づいたことを話し合う
続いて、出来上がった産地地図を見て、気づいたことをノートに書きます。そして、自分達の住む兵庫県の位置を地図で確認し、兵庫県とそれぞれの品物の産地を線で結んでみます。子ども達からは次のような意見が出てきました。
「品物は他の遠い県や外国など、色々な所から運ばれてきている」。
「世界中の食べ物が、自分達の住む兵庫県に運ばれてきている」。
「自分達の住む兵庫県で作られているものもたくさんある」。
「遠い県からはトラックで、外国からは船や飛行機などで運ばれてきている」。
「一つの品物でも、色々な産地がある」。
さらに、産地から兵庫県までの運送手段についても考え、新鮮なまま運ぶために色々な工夫があることを話し合いました。
「日本だとトラックで運ばれてきている」。
「外国からは船や飛行機で運ばれてきている」。
「運んでくるとき、箱に詰めて商品に傷がつかないように工夫している」。
「魚や肉は腐らないように、氷を入れて運んでいる」。
こうした話し合いを通じて、品物を通して、自分達の生活と他の地域がつながっていることを理解することができました。また、スーパーマーケットで、産地を表示することは、消費者の「安全、安心」の願いに応えるものであることに気づくことができました。
遠くから届く食べ物
授業を終えて、子ども達からは次のような感想がありました。
「遠く離れた外国からも、食べ物が運ばれてくると知って驚いた」。
「よく食べるバナナは日本にあると思っていたけど、遠く離れたフィリピンから運ばれていることがわかった」。
「外国や他の県からも、たくさんの食べ物が兵庫県に運ばれているから、私達は色々な食品を食べることができるんだなと思った」。
「産地が表示されているから、品物を選ぶことができるし、安心して買うことができるとわかった」。
「これから買い物に行くときは、産地をよく見て買うようにしたい」。
授業の展開例
- 給食の食材がどこから運ばれてくるのか調べてみましょう。
- 地産地消で自分の住む地域でとれた食品を使って、郷土料理を作ってみましょう。
升木 真由(ますき まゆ)
実践時:兵庫県加古川市東神吉小学校 教諭
兵庫県の食育研究指定校で地域と連携しながら教科と関連づけた食育の学習に取り組んでいる。子ども達と楽しい食育を進めることをテーマにして研究を積み重ねている。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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