2021.03.24
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昔から伝わる料理(郷土料理)について考えよう 【小3社会、学校給食】

栃木県栃木市の大平地域では、祖父母と一緒に同居している家族も少なくはないですが、代々受け継がれてきた料理や行事食を作らない家庭も増えてきています。
本地域の児童は、明るく元気な児童が多く、毎日の給食をとても楽しみにしています。
また、食べ物に対する関心も高く、食べたことのない料理も食べてみようとする様子が見られます。
しかし、栃木県の郷土料理の「しもつかれ」に対しては、苦手意識を持っている児童が多く、実際、年に1回初午の日に給食で提供している「しもつかれ」は、1年生の時も2年生の時も一口も食べない児童もおり、残食が多い状況でした。

そこで、社会科の学習と、2月の初午の日に「しもつかれ」の学校給食での提供をつなげて、郷土の料理として知らせることで郷土愛を育てたいと思い、授業を構想しました。
授業のめあては、地域に昔から伝わる「しもつかれ」のよさについて知り、自分たちができることを考える、食育の視点は昔から地域に伝わる料理と、それらに込められた先人の知恵や想いを知ることで、食べ物を大切にしようとする気持ちや食文化を伝承しようとする気持ちを育むとしました。

栃木県栃木市大平地域の小学校3年生の学級で学級担任と栄養教諭がTT(ティームティーチング)で行った実践を紹介します。

授業情報

テーマ:食と文化

教科:社会

学年:小学校3年生

食品ロスのポスターを見て、内容を読み取る

愛川町の食品ロス啓発ポスター

授業の冒頭、学級担任が神奈川県愛川町のポスターを「ブタ イカ ゾウ」の文字を隠してポスターを示し、書かれている言葉を問いかけます。子どもたちは前のめりになって考えます。

「ぜんブタ」
「べなきゃイカ」
「んゾウ」


「わかった!全部、食べなきゃ、いかんぞう!」と気づきます。

食品ロス削減国民運動のロゴマーク(ろすのん)

続いて、栄養教諭が「何のポスターでしょう。」と問いかけると、子どもたちは左上の「ろすのん」に気づきます。「日本が泣いている。」「食品ロス聞いたことがある。」となった時、ポスターを使って、食品ロスについて説明します。

「ろすのん」は食品ロス削減国民運動のロゴマークで、食品ロスとは食べられるのに捨てられてしまうもののことです。これは「食べられる分だけ、をおいしく愛川町」と書いてある食品ロス削減のためのポスターと説明をします。ちなみに、栃木市の「ごみと資源の収集日カレンダー」の「ろすのん」は笑っていることをも伝えます。

また、学校給食の工夫を話し、食品ロスを身近に感じさせるようにします。
メニューの写真を見せ、栃木県に観光に来てくださるお客様のために用意していた食材がコロナのために行き場を失ってしまいました。
それが栃木県産牛肉やヤシオマス、鮎の甘露煮を使った献立だったことを伝えます。
子どもたちからは
「サイコロステーキおいしかった」
「ヤシオマスっていう魚だったんだ」
「鮎の甘露煮は初めて食べた」
「みんな、捨てられちゃったかもしれなかったんだ」
等とつぶやきが広がります。
ちなみに初めて鮎の甘露煮を見た子どもは、骨を取って食べようとしていた子もいたと担任教諭が言っていました


  • 栃木産牛肉のサイコロステーキの給食

  • 栃木の特産品ヤシオマス

  • 地産地消メニュー・鮎の甘露煮

食品ロスにならないように、栃木県で昔から食べられていた料理を話し合う

郷土料理の「しもつかれ」

次に、学級担任が、栃木県でも昔から食べられている料理で、食品を無駄なく使って作られている料理があることを知らせ、考えさせ、「しもつかれ」に焦点化します。

栄養教諭は、給食も思い出させながら材料を示し、考えさせます。

子どもたちは「みそ汁」「煮物」などと考え「しもつかれだ!」と気づきます。

その際に、「しもつかれ」は栃木県の郷土料理であることをおさえます。

そして、郷土料理は、その土地の伝統や風土と深く結びついて伝わってきたその土地ならではの料理であることを説明します。

「しもつかれ」に込められた、昔の人の知恵や願いを知る

大根や人参をすりおろす「オニオロシ」について説明する

~昔から伝わる「しもつかれ」について知り、自分たちができることを考えよう~

と本時のめあてを確認した後、学級担任が、「しもつかれ」は、昔の人々が、どのようにして作った料理なのかを知ることで、自分たちができることを考えることにつながるかもしれないよと伝えます。

残念ながら、学校給食で提供された時、1年生の時も2年生の時もたくさん残っていた実態も話します。

しもつかれを作る道具「オニオロシ」

栄養教諭から、「しもつかれ」は、初午に稲荷神社に豊作を祈ってワラツトというお皿に赤飯とともにお供えするもので、材料はこの時期に残っている「正月の残り物の鮭の頭」や「節分の残り物炒り大豆」「お酒を造る時の残り物酒かす」そして大根、人参をオニオロシでおろして作ることを説明し、「しもつかれ」の素晴らしさを知らせます。

そして、「道具の工夫知恵」「食べ物をむだにしない」「食品ロスも考えている」「栄養バランスも良い」の説明をします。

わらで作った入れ物「ワラツト」

子どもたちは

「稲荷神社、うちにある。おじいちゃんの家にある」
「初午?はじめて旨かった日かと思ったけど違う」
「道具も工夫して知恵がある」
「残り物を利用した料理で無駄がない」
「食品ロスも考えられている」
「栄養のバランスも良い」
「昔の人はすごい」

等と気づいていきます。

先人の知恵や願い、食文化を伝えていくためにできることを考える

ワークシートに「しもつかれ」の材料や「しもつかれ」の素晴らしさをまとめたあと、自分ができることを考えます。

子どもたちが学んだことを発表します。

子どもたちは

「しもつかれを何も考えないで食べていたけど、今度は昔の人のことを考えて食べます」
「昔の人の知恵を自分たちが伝えないとなくなってしまうので、家に帰ったら家族に伝えます」
「日本のために食品ロスを減らしたいので、まずはしもつかれは苦手だけど一口は食べてみます」
「作り過ぎた料理はお隣の家にあげます」
「余った料理は動物にあげます」
「食品ロスを少なくして、未来も豊かで食品ロスのない未来にしていきたいです」

などと書いて、発表していました。

最後に栄養教諭から食べ物を大切にする気持ちが高ぶりすぎて、給食の時間に他の人に強要しないように話して授業は終了になります。

その後、担任教諭から栄養教諭に質問コーナーを設けてくれた学校もあり、特に印象的だったのは、「どうしたら、嫌いなものも食べられますか」との質問でした。


この授業でがんばって「しもつかれ」を食べようと思ってくれたのだと思い、

「味覚の関係で苦い味などは子どものうちはおいしく食べられないかもしれないけど、学校給食ではみんながおいしく食べられるように酒粕の量は少なくするなどの工夫をして、子どものみんなも、『しもつかれ』をおいしく食べられるように味付けをするから食べてみてね。そして今はおいしく感じない『しもつかれ』もあるかもしれないけど、大きくなったらおいしく食べられることもあるよ。それには一口でも食べてみることが大切です。おいしく食べられるように味覚が変わっているのが今日かもしれないよ。他の嫌いなものも同じく考えてね」

と答えました。

学校給食で提供

学校給食献立 初午の日 ・赤飯・牛乳・鶏肉のから揚げ・しもつかれ・干瓢のみそ汁

初午の日にしもつかれの料理が入った献立を学校給食で提供しました。子どもたちの様子は、一口でも食べようと挑戦していたり、食べてみたら「おいしい!」と言っていたりと、ほとんど残食がありませんでした。その後の学校給食の残食も少なくなってきています。


授業の展開例

〇本事例をきっかけに地域の郷土料理を調べたり、作ったりして食文化を継承する学習に取り組みましょう。
〇地域に昔から伝わる「しもつかれ」のような郷土料理には、食べ物を大切にしようとする営みが込められています。SDGsとつなげることができます。

中田 智子(なかだ ともこ)

令和3年度4月から栃木県栃木市大平給食学校給食センター栄養教諭、その前は栃木市教育委員会保健給食課課長補佐兼指導主事。日本栄養士会理事。
新採時の校長先生に「いつも ㋐かるく ㋑きいきと 愛を持って」の言葉をいただき、ずっとこの気持ちで頑張っています。子どもたちが一生おいしく食べられて健康な生活を送ることができることを目指してサポートしていきたいと思っています。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

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