くらしの中から「食」の和と洋を探してみよう 【食と暮らし】[小4・国語科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第102回目の単元は「くらしの中から『食』の和と洋を探してみよう」です。
「食」の和と洋を考える
「ごはんとペアになるのはパンかなぁ……」
などと、班で話し合いながら関係づけていきます。話し合ってもペアが思いつかなかったものは、「どちらかわからない」の場所(私のクラスでは、「はてなボックス」と呼んでいました)に置いておきます。逆に話し合っていくうちに、最初に付箋紙に書いていなかったものが出たときは、付箋紙を付け足してもよいこととしました。
- 「お味噌汁」と「スープ」:汁物だから
- 「そば・うどん」と「スパゲティ」:麺類だから
- 「日本酒」と「ビール」:お酒だから
「給食でご飯の代わりに出るのがパンだから」
という理由になりました。このようにして子ども達は、自分なりの理由をつけてペアを見つけていました。
それぞれの観点を考えてみよう
「具(材料)が違う」
や、
「食べるときに使うものが違う」
等の意見が出ました。ここまで来ると、子ども達もようやく活動の内容が明確になったようです。自分の選んだものについての観点を考えることができました。
なお、この単元では、本や資料から必要な情報を読み取り、文章を引用したり、要約したりする力を育てることも目標としています。食に関する本等で調べ、必要な情報を取り出す力を養うために、「初めて知ったこと」の観点を項目に入れるように指示しました。
子どもから出た比べる点は以下の通りです。
【例1】ご飯とパン
[くらべる点]材料、使うもの、作り方
【例2】砂糖菓子(和菓子)とケーキ
[くらべる点]材料、形、作り方
【例3】そばとスパゲティ
[くらべる点]食べる道具、かけるもの、作り方
本時の後、子ども達は調べる活動を進めました。調べて「初めて知ったこと」の中には、
「お茶は、葉っぱから作るけど、コーヒーは豆から作る」
ことや、
「ようかんは紀元前2世紀頃、中国でできた」
こと、
「日本では、弥生時代は手づかみで食べていたが、奈良時代から箸が使われるようになった」
こと等がありました。
「食」の和と洋ブック完成!
本授業を通して感じたこと
「中華料理って、どんなの?」
や、
「箸とかフォークじゃなくて、手で食べている国もあるんだって!」
等、多くの発見や新たな興味を持つようになりました。今後は、子ども達が抱いた興味・関心をうまく取り入れながら、全ての学校生活で食育を行っていこうと思います。
授業の展開例
- 食の和と洋を探して、それぞれについて比べる点(観点)を考えてみよう。
- 和と洋の食事マナーについて、違い等を調べてみましょう。
岸本 純平(きしもと じゅんぺい)
姫路市立上菅小学校 教諭
食育研究大会を本校で開くことをきっかけに食育について勉強しました。特別活動や総合的な学習の時間で行う『ガッツリ食育』と国語科や社会科、さらに教科外の日常生活において少しずつ食育を散りばめていく『ちょこっと食育』の融合を目指して頑張っています。子どもが「食」をただ食べることで終わるのではなく、そこから食文化や健康な身体や心の育成を学ぶことをねらいとして、日々授業に励んでいます。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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