2015.03.17
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くらしの中から「食」の和と洋を探してみよう 【食と暮らし】[小4・国語科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第102回目の単元は「くらしの中から『食』の和と洋を探してみよう」です。

暮らしの中でよく見かける「和」と「洋」。日本人は、この和と洋をうまく取り入れながら生活しています。本教材は、主に「住」の和と洋について書かれた説明文です。今回ご紹介する授業では、「食」の「和と洋ブック」を作ることを目的にして、子ども達に「食の和と洋」を考えさせます。こうした活動を通して子ども達は、異文化や自国の伝統的な文化を理解すること、日本人はその異なる文化をうまく取り入れていることを学びます。本授業は、自分達の生活の中にある食の和と洋を探し、比較する観点を考える全12時間中、7時間目の授業です。

「食」の和と洋を考える

最初から「『食』の和と洋を考えてみましょう」と発問しても、大人でもすぐには意見が出ないものです。そこで、食品や食事に使う器具・道具で「和だと思うもの」と「洋だと思うもの」を出させました。発表ボードを、「和だと思うもの」、「洋だと思うもの」、「どちらかわからない」の三つの場所に区切り、それぞれに付箋紙を貼っていきます。対比するものをいきなり見つけさせるのではなく、和と洋に分けて考えさせることで、子どもの自由な発想が得られました。
班で和と洋のペアを考える

班で和と洋のペアを考える

たくさん付箋紙が貼られたら、次は対比できるペアとなるものを探していきます。写真はその「ペア見つけ」をしている場面です。付箋紙は自由に付けたりはがしたりできるので、この活動をするときにとても有効です。出た意見の中から子ども達は、
「ごはんとペアになるのはパンかなぁ……」
 などと、班で話し合いながら関係づけていきます。話し合ってもペアが思いつかなかったものは、「どちらかわからない」の場所(私のクラスでは、「はてなボックス」と呼んでいました)に置いておきます。逆に話し合っていくうちに、最初に付箋紙に書いていなかったものが出たときは、付箋紙を付け足してもよいこととしました。
子ども達が出した和と洋のペア

子ども達が出した和と洋のペア

子ども達から出た意見――ペアになるものとその理由は、以下のようなものです。
  • 「お味噌汁」と「スープ」:汁物だから
  • 「そば・うどん」と「スパゲティ」:麺類だから
  • 「日本酒」と「ビール」:お酒だから
子ども達がペアになる理由で一番困っていたのは、ご飯とパンでした。給食のことを思い出させると、
「給食でご飯の代わりに出るのがパンだから」
 という理由になりました。このようにして子ども達は、自分なりの理由をつけてペアを見つけていました。

それぞれの観点を考えてみよう

次は、たくさん出たペアの中から子ども達が一組選び、観点(ここでは、比べる点の意味)を考えます。誰も選ばなかったものの中から一つ例示し、皆で一緒に考えました。例示したのは、お味噌汁とスープです。子ども達からは、
「具(材料)が違う」
 や、
「食べるときに使うものが違う」
 等の意見が出ました。ここまで来ると、子ども達もようやく活動の内容が明確になったようです。自分の選んだものについての観点を考えることができました。
お味噌汁とスープを比べる点を考える

お味噌汁とスープを比べる点を考える

なお、この単元では、本や資料から必要な情報を読み取り、文章を引用したり、要約したりする力を育てることも目標としています。食に関する本等で調べ、必要な情報を取り出す力を養うために、「初めて知ったこと」の観点を項目に入れるように指示しました。

子どもから出た比べる点は以下の通りです。
【例1】ご飯とパン
[くらべる点]材料、使うもの、作り方

【例2】砂糖菓子(和菓子)とケーキ
[くらべる点]材料、形、作り方

【例3】そばとスパゲティ
[くらべる点]食べる道具、かけるもの、作り方

本時の後、子ども達は調べる活動を進めました。調べて「初めて知ったこと」の中には、
「お茶は、葉っぱから作るけど、コーヒーは豆から作る」
 ことや、
「ようかんは紀元前2世紀頃、中国でできた」
 こと、
「日本では、弥生時代は手づかみで食べていたが、奈良時代から箸が使われるようになった」
 こと等がありました。

「食」の和と洋ブック完成!

本時の授業を基に、さらに図書室の本で調べたり、おうちの方に聞いたりして比べる点をまとめていきました。その後、比較する文章に気をつけながら、食の和と洋ブックを完成させました。以下は、児童の作文の一つです。

本授業を通して感じたこと

この授業を通して、子どもは日常生活の中で、和と洋だけでなく、食そのものに興味を持ち始めました。日々の暮らしの中で子どもは、「カタカナだから、何となく外国のものなのかな」程度しか認識を持っていなかったと思います。しかし、この授業を行った後、
「中華料理って、どんなの?」
 や、
「箸とかフォークじゃなくて、手で食べている国もあるんだって!」
 等、多くの発見や新たな興味を持つようになりました。今後は、子ども達が抱いた興味・関心をうまく取り入れながら、全ての学校生活で食育を行っていこうと思います。
授業の展開例
  • 食の和と洋を探して、それぞれについて比べる点(観点)を考えてみよう。
  • 和と洋の食事マナーについて、違い等を調べてみましょう。

岸本 純平(きしもと じゅんぺい)

姫路市立上菅小学校 教諭

食育研究大会を本校で開くことをきっかけに食育について勉強しました。特別活動や総合的な学習の時間で行う『ガッツリ食育』と国語科や社会科、さらに教科外の日常生活において少しずつ食育を散りばめていく『ちょこっと食育』の融合を目指して頑張っています。子どもが「食」をただ食べることで終わるのではなく、そこから食文化や健康な身体や心の育成を学ぶことをねらいとして、日々授業に励んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文:岸本純平/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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