「世界に一つだけのさつまいもはかせ」詩集を作ろう 【食と言葉】[小2・国語科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第百回目の単元は「『世界に一つだけのさつまいもはかせ』詩集を作ろう」です。
さつまいも掘りを思い出して[国語科1時間目]
「自分が掘ったおいもを自分の席まで持っていきましょう」
と話します。子どもたちが棚から自分の席までさつまいもを運ぶ間に発するつぶやきを拾うためです。子どもたちは
「重っ!」
「こんなに採れた」
「土のにおい」
「おいしそう」
などと言いながら、さつまいもを自分の机まで運び、触ったりにおいを嗅いだりしながら、思ったことや感じたことを次々に口にしていました。次に、
「今、目の前にさつまいもがありますね。このおいものこれまでのことを思い出してください」
と話し、子どもたちに苗を植えたときから収穫までの活動の様子を撮った写真を見せます。体験したことを想起させることで、目の前にあるさつまいもの存在の大きさに気づかせるためです。すると、子どもたちの口から次のような言葉が生まれてきました。
【植えた時(5月のゴールデンウィーク明け)】
「(苗)小さっ!」
「土を軟らかくした」
「おいしくなあれって思った」
【夏休み明け】
「(葉が覆い茂っていて)通り道がない」
「こんなに大きくなるなんて、思わなかった」
「長生きしたもんだ」
【収穫】
「青虫がくっついていた」
「二つくっついていた」
「皆のどんなのかな」
子どもたちは、さつまいもとの思い出を口々に語ります。
「今、目の前にあるさつまいもに何か一言声をかけてあげるとしたら、何と言いますか」
と聞くと、
「頑張ったね」
「ありがとう」
「おいしそうだね」
などの声が返って来ました。
「世界に一つだけのさつまいもはかせ」詩集
「皆から出てきた言葉を使ってもいいし、目の前にあるさつまいもを見て、思ったことや感じたことを詩にしよう」
と指示しました。授業の前に話し合った詩を書くポイント――(1)「~のように」を入れる、(2)同じ言葉を繰り返して使う、(3)音や声を入れる、(4)思いや気持ち、様子がわかるようにする、(5)初め、または終わりの書き方を工夫する、(6)短く書く、(7)「です。」「ます。」は使わない――を振り返り、
「詩を書くときに、この中の一つは使いましょう」
と話しました。子ども達からは次のような詩が生まれてきました。
大きいおいも 小さいおいも おいもどこどん 大しゅうごう おいしいかなぁー
でっかくてよかったー おもた~! やきいももいいし、しおをかけてもいいな とりたてちょっとつめたいな
やきいもパーティーをして[学級活動]
1回目の詩作りの後で、「さつまいもはかせになろう」と呼びかけて栄養士の先生からさつまいもの種類や栄養について、そしてさつまいもの一番おいしい食べ方も教えていただきました。そこで、さつまいもが持っている栄養やおいしさを、何も加えずにそのまま味わおうと、やきいもパーティーをしました。
やきいもは、自分たちだけでなく、普段お世話になっている先生方、事務室や給食室の方々、畑を耕すのを手伝ってくれた5年生のお兄さんやお姉さんにも届けに行きました。喜んでくれる姿に子どもたちは大満足でした。
詩集の下巻を作ろう[国語科2時間目]
「1回目の詩は上巻でした。今度は、さつまいもの栄養を教えてもらったことや、やきいもを作ったことを使って下巻の詩を作りましょう。さつまいもが持っている栄養について栄養士の先生に教えてもらいましたね。感想はありませんか」
と尋ねると、
「おいしそう」
「いっぱい食べるぞ」
と言う子ども達。さらに、
「やきいもを作って、感じたことや思ったことを発表しましょう」
と言うと、
「熱っ! お手玉みたいになっちゃう」
「温かい毛布で包まれたみたい」
「ほくほく」
「おいしかった」
「甘かった」
「口の中でとろけそうだった」
と次々と発言しました。
おいしいよ おいしいよ ほくほくのさつまいも
あっつ もっとたべたい パク おいしい
いっぱいたべたら なくなっちゃった
小さかったけれど あついボールみたい
わってみたら まっ黄色で かわはかたかったけれど 中みはやわらかくて
おいしかったな
授業の展開例
- 栽培の体験が豊かな表現につながります。さつまいもを育て、収穫をして感じたことや思ったことを絵に表現してみましょう。
- 栽培体験は、人との交流を生みます。地域の方や高齢者の方に教えていただきながら栽培に取り組みましょう。
瀬古 紗織(せこ さおり)
芦屋市立岩園小学校 教諭
ここ数年は低学年の担任が多く、現任校では、生活科や国語科等の教科と関連付けた食育の学習に取り組んでいる。保護者や地域の方々の協力を得て子供たちと一緒に楽しみながら学習をすすめることをテーマにして研究を積み重ねている。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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