2014.03.18
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お米の言葉のひみつを考えよう(vol.2) 【食と暮らし】[小5・家庭科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第九十一回目の単元は「お米の言葉のひみつを考えよう・その2」です。

毎日食べているご飯。もみの状態から、食卓に上るご飯になるまで、そしてご飯にかかわる様々な言葉を通して、暮らしにつながるお米の存在に関心を持たせる家庭科の5年生の授業です。1時間の授業を2回に分けて紹介します。今回は2回目です。

「お」のひみつ~お米の言葉に込めた大切な思い

授業の前半は、稲刈りから白米になるまでの過程を振り返り、実際にもみすりや精米を体験しました。
「白米を炊くと皆が毎日食べているご飯になりますね。じゃあ、ご飯のように、白米を○○すると△△になるもの、他には何かありますか?」
 と聞きます。すると、
「お餅がある」
 との発言。これを受けて、
「では、白米をどうするとお餅になるのかな?」
 と聞きます。
「つくとお餅になる」
 と子どもたち。
「そうですね、白米を蒸して、つくとお餅になる、いいですね、他にはないかな」
 こんなやり取りを繰り返していきます。
「おかゆ」
「おかゆ! いいですね。じゃあ、どうすればおかゆはできますか?」
「煮る? 炊く?」
 と答えに迷っているときは、
「『煮る』ではないでしょう。おかゆは『炊く』ですね」
 と説明を加えます。さらに、
「では、他には何がありますか?」
 と促すと、
「お酒」
 の発言。
「お酒かぁ。皆にはまだ早いぞ。ところでお酒はどうやってできますか?」
 と聞くと、
「発酵」
 という答えが出てきたので、
「難しい言葉を見つけたね」
 と返します。
「ご飯」に込められた感謝を読み取る

「ご飯」に込められた感謝を読み取る

次に、
「ご飯を調理すると○○になるものでもいいよ」
 と質問を変えると、
「チャーハン」
「オムライス」
「おすし」
「おいなりさん(いなりずし)」
「おにぎり」
「お赤飯」
「かやくご飯」
 と、どんどん出てきます。ここで、
「何か気がつきませんか?」
 と聞きます。子どもたちから
「『お』が付いている!」
「そうだ!」
「面白い!」
 の声が上がります。
「そうです。『お』ってどんなときに使いますか?」
 と聞くと、
「おいしいの、『お』」
 と、偶然正解を答える子もいます(※注:「おいしい」の「お」は、語源的には丁寧語の接頭語「お」がついている言葉です)。その他の子どもたちも
「お米からできているの、『お』」
「丁寧に扱われているときに使う」
 等、「お」の使われ方の意味に気づき始めたようです。そこで、
「ということは、大事にしているのですね」
 とまとめると、
「あー!」
「なるほどー」
 と子どもたち。
「『おスパゲッティ』とは言いませんね。『おパン』とも言わないね。『おすし』や『おにぎり』はきっと昔から身近にあって親しまれてきたから、そして大切にされてきたから『お』が付くのでしょう」
 と説明し、「ご飯」と書いてある提示物を指しながら、
「では、ご飯の中にある大事にしている言葉に気づいた人は?」
 と聞きます。すると、次々に子どもたちの手が挙がり出しました。
「ご飯の『ご』は『御』!」
「これって大切にしている丁寧な言葉じゃないかな?」
「お米は大切にされてきたんだね」
 子どもたちは「ご飯」という言葉に込められた思いに気づいたようです。
「そう、それが今日みんなに伝えたかったことです」

白米と玄米を食べ比べる

左:白米、右:玄米

左:白米、右:玄米

授業の最後に、白米と玄米を食べることにします。目の前に二つを置いて比べると、
「色って、こんなに違うのか」
「早く食べたい!」
 等と、子どもたちから声が上がりました。
「皆で気持ちを込めていただこうね」
 と言って、皆で手を合わせます。
「いただきます!」
 最後の一粒まで残さず大切に食べた後、子どもたちに感想を聞きました。
「玄米はもっちりしていた」
皆で「いただきます!」

皆で「いただきます!」

「独特な味がした」
「ちょっと固くてのどに当たる」
「ほうじ茶っぽい味」
「白米は食感がいい感じ」
「いつもの味がした」
 そして、最後に皆で
「ごちそうさまでした!」
 と、大きな声で丁寧に言って授業を終えました。

授業の感想

授業を終えた子どもたちの感想です。

「脱穀、もみすりという言葉を初めて知った。もみを自分で白米にすることが楽しかった」。

「一本の穂から実際に食べるところまでとても時間がかかっていることがわかりました」。

「お米、お餅、ご飯、お煎餅等に『お』『ご』が付くのは、昔からお米が大切にされてきたからだとわかった」。

「『ご』『お』が付くのが大事な言葉というのをはじめて知って良かった。これからは感謝の気持ちを持ちながら食べたいです」。

授業の展開例
  • お煎餅は、お米を粉にしてから加工して作ります。お米の粉にはどんなものがあるか調べてみましょう。
  • 稲の原種である野生稲の特徴を受け継いでいる古代米には、赤飯のルーツと言われる赤米やおはぎのルーツといわれる黒米があります。古代米について調べてみましょう。

ふじもとゼミ3期生

小学校教員を目指す3年生。
今回の授業では、指導計画の検討、教材の作成、藤本先生が行う授業のサポートも行った。現在、ワークショップを取り入れた授業プランを作成中。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・ふじもとゼミ3期生/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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