2021.08.18
  • twitter
  • facebook
  • はてなブックマーク
  • 印刷

「中丹が日本一・日本茶を知ろう」~地元のお茶「両丹茶」を使った授業~ 【食と暮らし】 [高1・3 家庭科]

(「きょうと食いく先生」赤井貴恵さんを講師に招いた授業を紹介します。
京都府福知山市および綾部市・舞鶴市の3市からなる中丹(ちゅうたん)地域は、玉露や碾茶(てんちゃ・抹茶の原料)という高級日本茶を栽培しており、全国茶品評会かぶせ茶の部で平成20年から12年連続日本一に輝く「両丹茶」の産地です。
京都府では、学校等での体験型食育を推進するため、農作業や食品加工・調理等の食農体験指導を行うことができる地域の専門家を「きょうと食いく先生」として認定し、地域で実践的な食育活動を支援しています。
私は、中丹地域の子どもたちに一度でも多く急須に触れ、茶葉で日本茶を淹れる体験をしてほしい、学校等で子どもたちに直接伝えたいと考えて、令和元年度からきょうと食いく先生として、活動を開始しました。
今回は、「きょうと食いく先生派遣事業」を用いて、京都府立福知山高等学校家庭科の先生から依頼をいただき、家庭科の授業で、「両丹茶を学ぶ」をテーマに実施しましたので、御紹介します。
授業計画としては、学校からの依頼に基づき相談を行い、生徒が地元の両丹茶について生産、品質などの特色を知り、両丹茶の良さについて実感を伴って理解すること、地域の特産品を知ることなどを目的に、以下のとおり計画しました。

授業情報

テーマ⓵:日本茶の総論

テーマ②:地元の特産物両丹茶玉露について

教科:家庭科

学年:高校1年生・3年生

時間:2時間

日本茶の総論

日本茶って?

日本茶クイズ

授業の初めに、日本茶のクイズを出しました。
「5つのお茶の名前を示します。この中で『日本茶』はどれでしょうか?」
……「煎茶・麦茶・ウーロン茶・紅茶・抹茶」

近年、急須を使って日本茶を飲む家庭が減っていることから、地域の授業でクイズをした場合、身近な麦茶に手が挙がることもあります。このクイズを通して、「日本茶は茶の木の葉っぱからできている。また、摘んだ葉を蒸すことで緑色なのが特徴」ということを知ってもらいました。

日本茶の成分について

日本茶には、ビタミン、カテキンなどの成分の他、リラックス効果があると知られているテアニンという成分が含まれており、カフェインの興奮作用を穏やかにすることを説明しました。受験シーズンを控えた高校3年生の授業で、「エナジードリンクではなく、日本茶で眠気覚ましをしようと思います」と感想に書かれていたのは印象的でした。

急須の使い方

令和元年度は、実際に生徒が急須を使った玉露の淹れ方実習を行いましたが、令和2年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、講師がデモンストレーションを行いました。
授業後、生徒には茶葉を持ち帰ってもらっています。これには、家庭においても茶葉を見て、急須で味わう機会につながればという思いもあります。

2.地元の特産物両丹茶玉露について

中丹地域で栽培されているお茶、玉露について(実習も含む)

特産物の玉露について学ぶ

2時限目は、地元の特産物玉露を学ぶ時間です。
まずは、玉露の栽培について茶園の写真などを示して紹介。
光合成の仕組みを使った栽培方法であり、理科の内容も交えて説明を行いました。

玉露の淹れ方実習

令和元年度は、生徒2、3人一組で急須を使って玉露を淹れる体験を行いました。生徒全員が急須に触れて試飲し、さらには、茶殻をお浸しとして食べてもらいました。
一煎目を飲んだ後は、全員に感想を尋ねます。普段飲み慣れていない人にとっては、「ほんまもん」の味に戸惑うこともあるかと思いますが、「ほんまもん」の味を知り、自分なりの感想を持つことが、まさに「体験」であり「食育」だと思っています。
同級生とワイワイ言いながら実習を楽しんでもらうのが、この授業の醍醐味です。

水出し玉露の魅力

令和2年度は新型コロナウイルス感染症対策を考慮して急須を使った実習は行わず、茶器を触る人を教諭に限定するなど感染症対策を行った上で、「水出し玉露」の試飲を行いました。
味の体験に加え、急須がない家庭でも冷茶ポットで簡単に作ることができる水出し玉露の魅力を伝える機会になったと、生徒の反応を見て感じました。

中丹の若い茶農家のインタビュー紹介

若手茶農家にインタビューした映像を放映

令和2年度は中丹の茶栽培を支える若い農家にインタビューした模様を放映しました。これは、令和2年度に福知山の30代の茶農家が全国茶品評会かぶせ茶の部個人の部で全国1位になられたため、

・実際に日本一になった人を見てほしい
・IターンやUターンの若い世代が現在~将来の茶栽培を支えていることを知ってほしい

ことを目的に行いました。
地域の特産物を支える地元農家の思いや、全く経歴の違う仕事から茶農家になった人の話、親から受け継いだ茶園を守り全国1位になった話などは、自分の将来を考える機会にもなったようです。

最後に

学校からは、きょうと食いく先生と連携し授業を行うことで、生徒が日本茶に関する基礎知識や、地元で作られるお茶が全国トップレベルで高品質であること等を、講義と実習を通して学ぶことができたと言われております。また、生徒からは、地元のお茶を実際に急須で淹れて飲むことで、お茶の作られ方を改めて考える機会になった。地元の強み、魅力をしっかり認識し、地元の良さを伝えられるようにしたい。家にある急須で家族とお茶を楽しみたい等の感想もあり、学びを深める機会になったと思われます。

今回の「きょうと食いく先生」としての授業にあたり、家庭科の先生が地元特産物として日本茶を選んでくださったことに本当に感謝しております。

日本茶のアプローチは「茶道」と考えてしまいがちですが、「家庭での日本茶の楽しみ方」というアプローチを行うことで、「どうして急須を使わないんだろう」「どうしてお茶の葉っぱで飲まないんだろう」という新たな関心を作るきっかけになると考えています。何よりも、急須を扱う姿は、好奇心でキラキラしています。

日本茶を題材にすることで、日本文化だけでなくその地域の地理、気候、産業なども併せて理解してもらえます。今回、福知山高等学校の先生と連携させていただき、私自身多くの気づき、学びを得る機会となりました。日本茶の産地の子どもたちだからこそ両丹茶に親しみ地元に誇りをもつ経験を一人でも多くの方に伝えたい。そのように願っております。

授業の展開例

〇抹茶は、碾茶(てんちゃ)を粉末にして作られます。碾茶を茶臼でひいて抹茶を作ってみましょう。

赤井貴恵(あかいたかえ)

令和元年度に「きょうと食いく先生」の認定を受け、学校等の食育活動を支援開始。平成17年に実家の日本茶専門店を継ぐために日本茶インストラクター取得。その後、公民館生涯学習講座等を通じて日本茶教室を行い、現在は家業を継がずに教室活動に専念。幼稚園児~高齢者まで、幅広い方に「茶葉で味わう日本茶の楽しみ」を伝えている。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

ご意見・ご要望、お待ちしています!

この記事に対する皆様のご意見、ご要望をお寄せください。今後の記事制作の参考にさせていただきます。(なお個別・個人的なご質問・ご相談等に関してはお受けいたしかねます。)

pagetop