2014.05.20
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食品添加物だけで清涼飲料水を作ろう 【食と科学】[小6・家庭科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第九十三回目の単元は「食品添加物だけで清涼飲料水を作ろう」です。

清涼飲料水の授業はよくあります。その多くは、砂糖が大量に含まれていることや、食品添加物が多く入っていること等に目を向けさせることを目的とした実践 です。ここでは、家庭科の食品表示の内容と結びつけ、食品添加物だけで清涼飲料水を作ってみて、実際に飲んで食品添加物について考える授業を試みました。 少量の着色料で色が出ることや、たくさんの砂糖を入れるときの子どもたちの驚きの顔が印象的な、6年生家庭科の1時間の授業です。

3種類の清涼飲料水から

3種類の飲み物を用意します。一つは果汁100%のジュース。二つ目は果汁50%の飲み物、三つ目は果汁0%の飲み物です。
「皆さんはどれが好きですか?」
 と聞くことから授業を始めます。子どもたちからは
「私は、果汁50%が好き、100%だと果物を飲んでいるみたいだから」
「うちのお母さんは、赤ちゃんがお腹にいるときは果汁100%のものを飲んでいた」
「僕は、炭酸の入った果汁0%のジュースをよく飲みます」
 等と、活発に意見が出てきます。そして、
「先生、果汁0%でもジュースができるのですか?」
 という質問を受けて、
「果汁が入っていなくてもジュースのような飲み物ができるかどうか、不思議ですね。では、容器の裏側にある表示を見てみましょう」
 と指示します。
「ミカンやブドウ、リンゴなど何も書いてありませんね」
と記述内容を確認した後、果汁0%の飲み物には何が入って入るのか、ワークシートに書き出させます。その上で、
「<果糖ぶどう糖液糖、香料、着色料、酸味料、保存料、ビタミンB6>と書いてあります」
 という子どもの発言を受けて、
「香料や着色料・酸味料・保存料は食品添加物と呼ばれていて、これらを組み合わせることによって、色々な味の飲み物を作ることができるのです」
 と、説明します。

※注:「ジュース」という表記は、法律上、果汁100%のものに限られていますが、本記事では文中の子どもの発言は法律の規定に限定せず、そのまま使用しています。

食品添加物で清涼飲料水を作ってみよう

「食品添加物でオレンジ味の炭酸の飲み物を作ってみましょう」
 と話すと、
「作れるのですか?」
「簡単にできるのですか?」
「やったー!」
 といった歓声が上がります。

作り方は次の通りです。

オレンジ味の炭酸飲料の作り方

【用意する物】
・1,000mlのビーカー
・水道水100ml
・食紅(赤・黄)
・クエン酸
・オレンジエッセンス
・スティックシュガー(3g)20本
・耳かき
・薬用さじ(1杯3g相当)
・かき混ぜ棒
・炭酸水500ml
・紙コップ

最初に、食品添加物の着色料の食紅を使い、色を付けます。お赤飯や栗きんとん等の食品に色を付けるもので、スーパーでも購入できます。ビーカーに水道水100mlを入れ、そこに赤の食紅を耳かきの先端で掬った程度の量を入れます。
「色が赤くなった!」
「こんなに少なくても色が付いた!」
 と、子どもたちの声。

次に、黄色の食紅を加えます。耳かきの先端で黄色の食紅を2杯入れ、かき混ぜます。
「オレンジ色になった」
「赤っぽい黄色になった」
 と、子どもたちの反応。オレンジ味は酸っぱいので、酸味料のクエン酸を薬用さじで2杯入れます。これもスーパーや薬局で購入できます。
「クエン酸は白い粉末なんだ」
「サララサしているね」
 といった声が聞こえてきます。

甘さを付けます。飲み物の食品表示には、果糖ぶどう糖液糖と書いてありますが、これは身近には売っていません。そこで、代わりに3gのスティックシュガーを20本入れ、よくかき混ぜて溶かします。
「え! 20本も入れるのですか?」
「20本も入れて甘すぎませんか?」
「溶けるのですか?」
「3×20で60gも入れるのですか?」
「なんか、心配だな」
「液が砂糖で真っ白です」
「段々、溶けてきた」
「砂糖が全部溶けた」
 ……等々、教室が子どもの声でいっぱいになります。

砂糖が溶けたら、今度は香りを付けます。オレンジの香りにしたいので香料のオレンジエッセンスを2~3滴入れます。
「オレンジの香りがしてきた」
「いいにおい」
「段々ジュースになってきたような…」
 子どもたちが喜んでいます。

最後に炭酸を入れて出来上がりです。冷蔵庫で冷やした炭酸水を入れます。炭酸水を入れたらかき混ぜすぎないようにします。
「シュワーとしてきた。色が薄くなった」
「オレンジジュースになった」
 子どもたちは驚いています。

食品添加物だけで作った飲み物を飲んでみよう

食品添加物だけで作ったオレンジ風味の手作りの飲み物を紙コップに分け、皆で味わってみます。
「本当に飲めるのですか?」
「なんか心配だなあ」
「薬の味がしそうだな」
「まずそう」
 と、どんどん声が上がります。
「大丈夫です。いつもの飲み物の裏に書いてある物だけしか入れていないので、心配しないで飲んで下さい」
 と話します。
「えっ、甘くない」
「オレンジの味がする」
「思ったよりうまい」
「ジュースが作れるんだ」
「ちょっと薬の味がするけどおいしい」
「砂糖が60gも入っているのに飲める」
 ……等々といったつぶやきが生まれてきました。そして、
「食品添加物だけでジュースが作れることに驚いた」
「ジュースには砂糖がたくさん入っていることが、改めてわかった」
「着色料は少量でも色が付くことに驚いた」
「着色料や香料を替えると、いろんな味のジュースが作れる」
「家でも作ってみたい」
「食品添加物ジュースなら、材料は少量で済むから、安く作れると思う」
「炭酸が入ると甘く感じない」
「時間が経ち、炭酸が抜けるともっと甘く感じるのかな」
「毎日飲んだら太るよね」
「安全性はどうなのなか」
 子どもたちから様々な感想や疑問が出てきました。食品添加物にかなり関心を持ち始めてくれたようです。
授業の展開例
  • 加工食品のおかげで、私たちの食生活はとても便利になりました。腐りにくくしたり、味や色が悪くなったりするのを防ぐ役割をする食品添加物が含まれているおかげです。食品添加物について調べてみましょう。
  • 清涼飲料水に含まれる糖分の量について調べてみましょう。

江口 敏幸(えぐち としゆき)

東京都杉並区立三谷小学校栄養教諭、並びに杉並区学務課保健給食係兼務

平成20年より国産食材だけで給食を作る国産給食の実施、国産給食を教材に5年生社会科で日本の食料自給率について実践。
理科、生活科と関連づけた年間栽培計画を作成し1年間を通して栽培活動を実施。そのほか、ケチャップ、梅干し、みそ、たくあん作りに取り組んでいます。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文・江口敏幸/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

※当記事のすべてのコンテンツ(文・画像等)の無断使用を禁じます。

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