2013.09.17
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秋を感じよう「お月見会」をしよう 【食と暮らし】[小2・生活科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第八十五回目の単元は「秋を感じよう『お月見会』をしよう」です。

四季折々の変化を持つ日本の風土。その特色を生かした行事食を知ることで、日本の食文化を受け継ぎ、季節を感じる心も育てていくことができます。地域の行事や年中行事に興味や関心を高め、食べ物への感謝の気持ちを持たせたいと考え、2年生の生活科で「お月見」を取り上げました。お月見について調べていく中で、お月見は収穫を感謝するための行事であることに気付くことができました。また、日本に昔から伝わる季節の行事を知り、体験することで季節の行事の持つ意味にも目を向けることができた学習となりました。その1時間の様子をご紹介します。

前時までの学習でお月見への興味・関心を高めておく

お月見会の準備をする

お月見会の準備をする

「お月見会をしよう」の授業の導入で、絵本『おつきさま でたよ』(寺村輝夫作・いもとようこ絵)を読み聞かせしました。この作品を聞いた子どもたちは
「お月見がしたい!」
 と言い出しました。そこで、絵本に描いてあったようにススキやお団子、歌、踊り、星と月の飾りを準備し、お月見会を開きました。多めに準備したお団子を1年生におすそわけに行った際、
「お月見はどうしてするの?」
 と質問されました(事前に1年生担任にお願いしておいたのです)。2年生は、単に「お月見をしたい」「お団子を作って食べたい」という思いだけでお月見会を開いたので、はっきりとした理由はわかりません。そこから「お月見のひみつをさぐろう」の活動に入っていきました。

お月見の秘密を三つの課題から探る

教師が
「お月見について、わからないことや知りたいことはありませんか?」
 と問いかけると、
「どうしてお月見をするのかわかりません」
「お月様はいつもきれいなのに、どうして今の時期にするのかな? と思いました」
「なんで、お団子をお供えするのかな?」
 などと、子どもたちから色々な疑問が出てきました。それらを整理して、お月見は「いつするのか」「何のためにするのか」「お供えするもの・お月見ですること」の三つの課題について調べていくことにしました。

「お月見」について調べる際、1年生の立場になってわからないことがないか、また収穫を感謝するとはどういう意味なのか、具体的に考えさせるようにします。その上で、三つの課題について調べたことを発表させていきました。

まずは、「いつするのか」について尋ねると、子どもたちから
「空気がきれいな晴れた日」
「9月の十五夜と10月の十三夜です」
「今の9月の15日前後です」
 と、どんどん調べたことが出てきます。
「今のって言っていたけれど、どういうことですか?」
 と聞くと、
「旧暦って書いてありました」
「昔の8月15日、今の9月の15日頃のことです」
 と、子どもたちなりに旧暦を理解できているようです。そこで、
「『8月の中秋の名月』や『中秋の名月』という言葉が見つかった人は?」
 と尋ねると、大半の子どもが手を挙げました。それを受けて、最初に出てきた疑問に戻ります。
「前に『お月さまはいつもきれいなのに、どうして今の時期にするのかな』と言っていたけれど、皆、説明できますか?」
 と聞くと、
「9月は空気がきれいでよく見えるから」
「9月の中頃は空気がきれいで晴れているから」
 との答え。どうやら1年生にしっかり説明ができそうです。
「そうですね。9月は涼しくなって空気が澄んでくるからですね」。

次は「お供えするもの」です。この課題についても子どもたちは
「場所によって違うけど、サツマイモ、豆類、果物など」
「ススキとお団子」
「なぜススキかというと、ススキがお米の稲を表しているからです」
「お団子で、収穫を祝うためです」
「お団子は、満月が丸いからお団子も同じ形で丸くすると思う」
 と、次々に答えてくれます。途中、
「豆類って何だろうか?」
 と質問してみました。すると、
「色々な豆をまとめて(の意味)。全部は書けないから」
 との答え。
「色々お供えするけど、要するに何をお供えするの?」
 と質問し、ここでまとめに入りました。子どもたちは
「秋の色々なものだと思います」
 と答えました。

最後は「何のために」です。収穫に感謝するという意味をとらえさせたい所です。
「では、何のためにするのですか?」
 子どもたちは
「収穫を感謝する」
「自然の実りを感謝」
「畑で野菜がとれるようにお祭りをする」
「自然の恵みに感謝」
 と、それぞれ調べたことを発表しますが、自分の言葉になっていない様子です。そこで
「お月見はこのためにする、って説明できますか?」
 と、再度尋ねます。すると、
「なんで自然の恵みに感謝するのかな」
「なんで自分が植えるのに感謝するのだろう」
 などと素直な疑問が出てきました。そして、先ほど発表した言葉の意味も考えるようになりました。
「先生、収穫って何ですか?」
「野菜のことだと思います」
「実りは?」
「野菜がとれるっていうこと」
「感謝って?」
「ありがとう」
 疑問点を説明しながら、一つ一つ子どもたちの言葉にしていきます。

「何に『ありがとう』なの?」
 いよいよ本時の核心に入ってきました。
「何もしなくても野菜は育つから、わかりません」
 と子どもたち。そこで、質問をしていきます。
「どうして育つのかな?」
「太陽の光」
「他には?」
「雨も必要です」
「つまり、お日様や、雨に『ありがとう』っていうことですね。では、皆さんは1学期にピーマンがとれてどう思った?」
「嬉しい」
「嬉しい気持ちで、『ありがとう』だね」
 と、感謝の意味を考えさせていきます。
「給食で出た冬瓜やエビも、作ってくれた人がいるのかな」
「違うよ。作ってくれた人や、漁船で“とってくれた人”がいるんだよ」
 という子どもたちに、
「その人たちに『ありがとう』ですね」
 とまとめました。

このようにして、「収穫を感謝する」とはどういうことなのかを丁寧に考えさせることにより、2年生なりにありがたい作物をありがたくいただこうという意味を理解できたように思います。

秋に収穫される作物を調べる

サンマ、マツタケ、サツマイモ…秋の収穫物を書き出す

サンマ、マツタケ、サツマイモ…秋の収穫物を書き出す

次に、授業は秋に収穫される作物を調べ、グループごとに見つけたものを短冊に書かせる活動に進みました。

そして、その後、自分たちが食べられることに対する感謝の気持ちを込めて、感謝を伝えたい人(家族・給食センターの人・農家の人・漁師の人など)や自然に対して手紙を書き、十三夜を行いました。

この十三夜には1年生を招待し、「お月見の秘密」を発表した後で、一緒にお団子作りをしました。というのも、1年生にお月見の秘密をどんな風に伝えるかを話し合う中で、 「お団子の作り方は、一緒に作って教えてあげるのがよい」

1年生にも「お月見の秘密」を発表

1年生にも「お月見の秘密」を発表

ということになったからです。自分たちなりの十三夜の目的を考え、家でとれた柿や栗、小学校の栗、1年生が育てたサツマイモといった秋の実りに加え、2年生が育てたピーマンやパプリカ、そしてポップコーンもお供えした。また、お月見について調べている時に、お彼岸献立で、給食におはぎが出ました。それをきっかけに、どうしてお彼岸におはぎを食べるのかを本で調べ、皆に教えてくれた子どもがいました。
授業の展開例
  • 季節の行事にはどんなものがあるのか調べてみよう。
  • お正月の飾りや、お節料理などにも意味が込められています。家族に聞いてまとめてみよう。

浅田 和子(あさだ かずこ)

兵庫県三田市志手原小学校 教諭

2年担任。身近な食について考え、生活科や国語等教科と結びつけた食育を実践。食の大切さを、家庭や地域の人とのつながりや、体験活動を大切にした授業を通して学ばせたいと現在研究中。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文・監修:藤本勇二/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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