量の単位の仕組み 【食と文化】[小6・算数]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第八十二回目の単元は「量の単位の仕組み」です。
単位の大きさの順番を考える
「お米は何の単位で量りますか。皆の家ではどうですか?」
と聞くと、
「1合って言う!」
とすぐに答える子どもたち。
「お米のかさでは、どれが一番大きいでしょうか。自分の経験で小さいものから順に並べて理由を書いてみよう」
と質問してワークシートを配ります。子どもたちは、
「合は小さいのかな」
「一升瓶って聞いたことがある」
「斗はアルミ缶かな」
などと、自分の生活と結びつけて一人ひとり考えています。
「皆の中には、理由がなんとなくという人もいるので、次は班で考えましょう」
と提案し、班活動へ。個人で考えた順番を班で話し合い、班の意見を一つにまとめて黒板に貼り理由を発表します(個人で考える時間を5分、班で考える時間を10分とりました)。
【意見1】1合 → 1石 → 1升 → 1斗
理由
「升は『一升瓶』のイメージ」
「石は『いし』のイメージ」
「お米で使うから合より小さい単位はない」
【意見2】1斗 → 1石 → 1合 → 1升
理由
「なんとなく」
【意見3】1斗 → 1升 → 1合 → 1石
理由
「合は大きそう」
「資料集で石を見た」
【意見4】1合 → 1升 → 1斗 → 1石
理由
「合は小さい」
「升は『一升炊き』」
「斗は『一斗缶』」
「石は大きい」
以上のような意見が出揃ってから、黒板のカードを正解順「1合 → 1升 → 1斗 → 1石」に並び替え、皆で答え合わせをします。
単位の大きさを実感する
1合ますと1升ますを見せながら、
「1升は1合の何倍だと思いますか」
と聞くと、
「4倍」
「5倍」
「10倍」
と様々な意見が出て、興味を持っている様子。
「では実際に水を入れて確かめてみよう」
と提案し、子どもたちはバケツにくんだ水を1合ますで1升ますに入れていきます。
「1杯、2杯……、10杯!」
と全員で確認。10倍になっていることを理解させ、合・升・斗・石の単位の相互関係を板書の図にまとめます。
子どもから1俵は何の10倍かな、というつぶやきが出ました。歴史でよく耳にする藁で編んだ円柱型の俵一つ分です。ここでは、
「1斗の4倍が1俵、1俵は60kgと言われています」
と簡単に説明しました。俵に興味を持ったようなので、重さについても触れ、
「それでは、1斗は何kgでしょう」
という計算問題を出しました。答えは15kg。重さに換算すると、子どもたちは感覚で単位の大きさをなんとなくつかんだようでした。
単位まつわる色々な話
次に、
- 一人が1食で食べる量が1合
- 一人が1年間で食べる量が1石
- 1石のお米を作る田んぼの広さが1反
- 10人の人が1年間で食べる量が1町
と、関連する単位を簡単に教え、社会科の資料集を開かせます。豊臣秀吉の太閤検地をしている場面から、この時代に全国で共通の単位が使われ、浸透し始めてきたという話をして、単位の成り立ちや、歴史の中で生きている単位に興味を持たせます。
子どもたちは、米に関する単位は身近なもので、生活上かかせないものだったことに気がついたようです。
最後に、昔からの単位や身近にある新しい単位について話をしました。たとえば、面積を表す「坪」や「反」、長さや距離を表す「間」や「里」などの話をしました。子どもたちの中には、
「その単位、聞いたことある」
という反応を示す子もいました。また、新しい単位では、ゲームやパソコンで使われるメガ・ギガ・テラなどの単位についても触れました。
時代と共に生活の仕方が変わり言葉も変化します。淡路島でも、農家の方は、米の取高をいうのに、「米袋(約30kg)●袋」という言い方をします。今よく使われている「1合」「1升」などの言葉は、この後どう変わっていくのか子どもたちと話し合ってみるのも楽しいのではないでしょうか。
授業の展開例
- お米は、一粒、1杯など様々な数え方をします。どんな数え方があるか調べてみましょう。
- おいしいごはんを炊くには水の量が大切です。米や水の量をかさと重さで考えてみましょう。
山崎 静香(やまさき しずか)
兵庫県南あわじ市榎列小学校 教諭
高学年の担任や兵庫型教科担任を多く経験している。現任校では、食育をいかに学校教育全域で進めていくかを研究してきた。算数科、社会科等の教科と関連付けた食育の授業研究を積み重ねている。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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