2012.07.17
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あなたの朝食と違いますか?~Is it different from your breakfast? 【食と文化】[小5-6・外国語活動]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第七十一回目の単元は「あなたの朝食と違いますか?」です。

小学校の授業に本格的に外国語の授業が取り入れられるようになって2年が経ちます。ALTと呼ばれる外国人英語教師との授業では、ネイティブスピーカーならではの発音が子どもたちに良い刺激を与えてくれます。英語のシャワーをたくさん浴びた子どもたちの中に、英語の素地が育っているようです。

さらに、ALTを通じて、外国の文化や暮らしの姿を知ることができます。たとえば朝ご飯はその国の食文化を象徴します。朝ご飯に代表される食文化はその地でとれた農産物などの食材とその地域特有の食習慣などが相まって形成されたと言われています。文科省のテキストブック『Hi Friends』を使って朝食の違いについて考える1時間の授業です。

どこの国の朝ご飯か考えよう

テキストには日本・アメリカ・韓国・フランスの四つの国の朝ご飯のイラストが掲載されています。このイラストを使って、子ども達にどこの国の朝ご飯か予想を立てさせます。日本の朝ご飯については、定番のご飯とみそ汁ですぐにわかります。韓国の朝ご飯も、一見日本食のようにも見えるので迷っていましたが、箸の他にスプーンがついていること、食器が陶磁器ではなく銀の器であることなどから、韓国のものであると特定することができました。

残り二つのイラストについては、子どもたちは
「朝食というより、おやつだ」
と言っていました。日本の子どもたちにとっては、パンやシリアルはおやつ感覚なのだということがわかります。

次に、ALTから残り二つのそれぞれの説明文を聞きます。シリアルがあるのはアメリカで、クロワッサンがあるのはフランスだということがわかりました。シリアルとは日本では一般的に「コーンフレーク」という呼ばれ方をしているので、子どもたちも納得したようです。

自分の朝ご飯と比べる

日本でも最近、朝食にパンを食べる人が増えてきています。子どもたちに確認すると、半分以上の家庭がパン食であるという実態でした。理由を聞いてみると
「食べやすいから」
とのこと。子どもにとっては、おやつのような感覚でパンを朝ご飯代わりにしている様子でした。
しかし、これらのイラストから、子どもたちはあることに気付きます。それは、ご飯食の栄養バランスの良さです。主食をご飯にすると、おかずに野菜を使ったものが付いてきます。炭水化物に偏らず、ビタミンやミネラルといった体の調子を整える働きをする栄養素を含む食品を摂取できることに気付いたのです。そこで教師は、
「主食がご飯の食事は、砂糖や脂肪分を多くとらない」
ということも付け加えて説明します。子どもたちからは
「確かに、外国の人に太っている人が多いな」
「病気になりやすい体になるよね」
などの声もあがりました。

ALTからのお話

最後に、ALTに日本食についての感想を語ってもらいました。
「世界でも日本食は評価が高く、健康的な食事として注目されている。日本が世界一の長寿国となった理由も、栄養バランスの良い日本食のおかげである。母国アメリカでも、日本食は大人気である」
といった話を聞きました。外国人教師からの話だったのでより説得力があったようです。子どもたちは、毎日当たり前に食べている日本食がそんなにすごいものだったことに改めて気付くことができました。
授業の展開例
  • 英語の発音がそのまま日本語になった食べ物(「ハンバーガー」など)や日本語がそのまま英語になった言葉(「すし」など)をALTの先生に教えてもらいましょう。
  • 韓国では、器を手に持って食べてはいけません。それぞれの国の食べ方のマナーについても調べてみましょう。。

柴原由衣子(しばはら ゆいこ)

宍粟市立道谷小学校教諭、栄養士

10年以上中学校で家庭科を教え、5年前から小学校の教壇に立つ。兵庫県学校食育検討委員会のメンバー。食育の研究大会の研究主任を務めたことを機に、学校における食育の推進として、各教科の中でどのように食育を進めるかについて実践・推進している。山村の伝統食づくり継承のため、5年前からは糀を自分でつくり、味噌造りを楽しんでいる。今年も9kgの糀を自分で作って自家製味噌を寒仕込みした。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

監修:藤本勇二/文:柴原由衣子/イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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