ご飯といえば、パンといえば 【食と暮らし】[小6・学活]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第六十回目の単元は、「ご飯といえば、パンといえば」。和食と洋食の特徴に関心を持たせる授業です。
食品の絵を描いてみる
こう問いかけます。
「卵焼き」
「のり」
などの声があがります。ワークシートには、茶碗にご飯を盛ったイラストが描かれています。このイラストの周辺におかずの絵を描いていきます。子どもたちは納豆や焼き魚の絵を楽しそうに描いています。
続いて
「パンではどうだろうか」
と聞きます。
「パンはおかずとは言わないので」
と付け加えると、
「パンに合う料理でいいですか?」
と子どもから意見が出ます。そこでパンに合う食品の絵を描くことにします。
グループで話し合う
次に、各グループに四つ切の大きさの画用紙を2枚渡します。一枚の画用紙の中央にご飯の絵を描 きます。メンバー各人が考えたおかずを付箋紙に書き出します。全員が書き終わったら、ご飯の絵の周辺に付箋紙を貼っていきます。同じおかずが出てきたら付 箋紙を重ねて貼っていきます。こうして一人一人の考えたことを足場にグループでまとめていきます。
「同じだ!」
「やっぱり魚だよね」
「卵ってどういう意味?」
「ああ、卵かけご飯のことか! 大好き」
「漬物もあるよ」
「納得」
子どもたちはそれぞれの意見を楽しんでいます。
同様に、もう一枚の画用紙を使ってパンについても進めます。
「ジャムでしょ」
「バター」
「それからサラダも」
「チーズにコーンスープ」
どんどん意見が出てきます。
まとめてみると
「おもしろいよ。卵料理は、ご飯だと卵焼きで、パンだと目玉焼き」
「出し巻卵って聞いたことがある」
「ハムエッグはパンに合う!」
「飲み物も違うよ」
「パンは、ジュースにコーヒー」
「ご飯はお茶」
「おもしろい!」
にぎやかに話し合いが続きます。気がついたことを、今度はピンクの付箋紙に書き出します。そして、黒板に貼った模造紙にそれらピンクの付箋紙を貼って、みんなの気づきをまとめます。
「ご飯に合う料理は、昔からのものが多い」
「海藻を摂取できるのは、ご飯だ」
「ご飯に合うおかずは和食だ」
「和食のいいところってどんなところかな?」
そんな疑問も出てきました。
最後に、「一汁一菜」の話を説明して授業を終えました。日本の献立の ひとつであり、「汁」は味噌汁、「菜」はおかずの意味。つまり、主食のご飯、味噌汁、おかず、それに漬物を合わせた献立のことです。もともとは、おかずが 一品だけの「質素な食事」のたとえでしたが、近ごろは「バランスのよい食事」として見直されています。
子どもたちの感想です。自分の食生活を振り返っている発言が目立ちました。
「私はご飯に合うものは昔からあるものでパンはつけるものが多いと思った。味噌汁は赤、黄、緑を一度にとれるから栄養はあるけど、噛みごたえのあるものがないから『一汁一菜』のように、あと一つおかずを加えたら大丈夫と思った」。
「ぼくはご飯に合うものが多いなあと思った。パンは少ないなと思った。ぼくは副菜がついていないので家でつけたいです」。
「たくさんの人の意見が聞けて良かった。私は食物せんいが含まれているものや噛みごたえのあるものを食べていきたい」。
授業の展開例
- 和食の歴史や作法などを調べてみましょう。
- 洋食は油脂類が多いといわれますが、和食と洋食を比較した栄養価を調べてみましょう。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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