環境に優しい味噌汁を作ろう(vol.2) 【食と科学】[小6・理科・家庭科]
食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第五十九回目の単元は、前回に引き続き「環境に優しい味噌汁を作ろう」、その2回目です。
3時間目はアイディアのまとめから
身近な「食」を通して環境問題について体験的に考える、6年生の家庭科・理科での実践を2回に分けて紹介します。前回に引き続き、今回はその後半です。
3時間目はクラス全体で集めたアイディアや知恵・技を、味噌汁作りの手順に沿ってまとめていく作業の時間です。前の時間にクラス全体で作った「環境に優しい調理の工夫」の模造紙から味噌汁作りに関係することを抜き出していきます。
「地域の旬の食材を使う」「作りすぎない」「節水を心がける」「鍋やフライパンの底の水滴を拭いてから調理する」「コンロ の火は鍋からはみ出さない」「水の量を正確に量る」「いつまでもぐらぐらと煮ない」「皮は薄くむく」などのポイントを、ワークシートの「味噌汁作りの手 順」の横に書き込みます。
そして、味噌汁の材料も「水:170ml/1人 煮干し:小5匹/4人 ダイコン:6cm/4人 ワカメ:10g/4人」と、正確な量を計測することを確認しました。
この活動の中から材料を全部使い切るアイディアも出てきました。「煮干しも食べる」「ダイコンの葉っぱや皮も食べる」です。この点についてはTTを組んでいる先生から次のレシピのアドバイスをいただきました。
◆ダイコンの皮と葉のバターきんぴら
ダイコンの皮を細切りに、葉は小口切りにしてフライパンにバターを熱し、塩・しょうゆで調味する
◆煮干しの味噌炒め
だしをとった煮干しに適量の味噌、砂糖、みりん、ダイコンの葉を入れて炒める
さらにダイコンの葉をゆでるのに味噌汁のだしを取っているときに、だしに入れてゆでるというアドバイスももらいました。
4・5時間目は調理本番
最後に、6時間目―評価
調理実習終了後、単元の導入で取り上げた三角コーナーの写真と比較することで、環境に優しい調理が実現できたことを自己評価しました。
味噌汁作りに続いてこれまで学習してきたことをもとに「環境に優しい調理 五箇条」を作成しました。作成した五箇条を家庭に持ち帰り、保護者からコメントももらいました。
最後に、子どもたちの感想を紹介します。
「環境に優しい調理のよいところは二つあります。一つはゴミをあまり出さないという点。あらかじめ分量や買うものを計画しておくので必要なもの以外は買わずに済みます。
二つめは旬のものをたくさん使うということです。旬のものはハウスものに比べるとエネルギーを使う量が少ない、健康にもいいのです。少し工夫すれば環境 を助けることになるのです。料理を作ることにも環境が関わっていることをよく知っておいしい料理を作るようにしたいと思います」。
「環境に優しい味噌汁作り」の学習を通じて自分たちが日常、無駄なエネルギーを使っていないかを見直し、実践する場となったと考えます。
授業の展開例
- 「環境に優しい調理」は、環境負荷を低減できるだけでありません。家計にも優しいという面もあります。よく考えて購入することから始めてみましょう。
- 自分の家庭にあった「環境に優しい調理 五箇条」を作って実践してみましょう。
藤本勇二(ふじもと ゆうじ)
武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。
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