2011.06.14
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環境に優しい味噌汁を作ろう(vol.1) 【食と科学】[小6・理科・家庭科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第五十八回目の単元は「環境に優しい味噌汁を作ろう[1]」。2回にわたり「食」を通して、環境問題について学習します。

食品は、その製造、流通、消費、廃棄などの様々な過程で、多くのエネルギーを消費します。食品の消費に伴うエネルギーを可能な限り節約することによって、 CO2の排出量を減らすことができます。身近な「食」を通して、環境問題について体験的に考えることもできます。6年生の家庭科・理科での実践を2回に分 けて紹介します。

調理実習・味噌汁作りの反省から

1学期の家庭科「ごはんと味噌汁」の学習で気になっていたことがありました。調理実習では、 「野菜くずの多さ」「水の出しっ放し」「片付けでのキッチンペーパー使用量の多さ」「多量の残食の量」などのもったいないと思えることが多々あったので す。環境に配慮した調理を学ばせる必要を強く感じました。

家庭科3学期の「近隣の人たちとの暮らし」の内容を取り上げ、さらに家庭科だけでなく理科「ヒトと環境」の内容とも連携しながら環境に配慮した調理の学習を進めることにしました。

まず1時間目は振り返りから

「味噌汁作り」授業の振り返り

家庭科は味噌汁作りの振り返りから始めました。
「皆の味噌汁作りの学習は地域の旬の食材を上手に使った点は大変よかったけど、環境に優しい調理はできたかな?」
 そう問いかけましたが、発言がありません。ピンと来ていない様子です。
「『Eスクールいちば』は、できていたかな?」
 と問うと、気づいたことがあったようです(「Eスクールいちば」とは、環境に配慮した学校作りを目指し、全校で「学校版環境ISO」に取り組んでいる実践校の合い言葉)。
「残飯が多かった」
 と意見が出始めました。

こんなにたくさんの野菜くず

環境に配慮した調理について気づいていない子どもたちが多いだろうと予想していたので、前回の味噌汁作りの写真も用意しておきました。これらの写真を示すと、
「水が出しっ放しだと先生に言われた」
「ダイコンの皮をもっと薄く切ればよかった」
 などの発言が相次ぎました。そこで、
「前回の反省を生かして環境に優しい調理をしよう。理科で学んだことを実際にやってみることができるし、これもEスクールの活動の一つになるよ」
 と呼びかけました。こうして「環境に優しい味噌汁作り」の学習がスタートしました。

「環境に優しい調理と言ったら、どんなことができるかな?」
 と問い、子どもたちで相談させました。
「水の出しっ放しをしない」
「残さないで食べる」
「ダイコンの葉っぱは食べられるって聞いたことがある」
「計画して買い物する」
 などの出てきた意見を「買う」「調理する」「片付ける」「その他」の項目に整理・分類しながら話を進めました。
「皆の知らない工夫や知恵がまだまだあるかもしれませんね。家の人はどんなことをしているのかな? 取材してこよう」
 と家庭での取材を宿題として出して、1時間目を終えました。

2時間目はアイディアの整理・分類

環境に優しい調理法の取材メモ

子どもたちはたくさんの内容を聞き取ってきました。一部を紹介すると次のような内容です。

[買う]
・余分な材料を買わない
・包装を少なめにしてゴミを減らす

[調理する]
・余熱を上手に使いガスを使う時間を少なめにする
・ステンレス製の鍋を使って調理時間を短くし、ガスの量を減らす

[片付ける]
・洗剤の量を少なくするために薄めて使う
・残った食べ物は蓋のある容器に入れ替えてなるべくラップを使わない

[その他]
・魚や肉などが入っていた発泡スチロール製のトレイは店に戻す
・何でも冷蔵庫に入れない、入れすぎない

グループで取材内容を整理する

まとめ作業の第一段階は各グループ(1グループ3~4名)での作業です。取材してきたことを付箋紙に書き、4つの項目に分類しながら白の四つ切り画用紙にまとめていきました。この活動の約束は次の通りです。
○1枚の付箋紙には一つのことがらを書く
○自分の名前は書かない
○大きな字で書く
○自分の取材してきたことを読みながら貼っていく
○同じ内容の付箋紙の場合は上に重ねて貼る

子どもたちは画用紙に付箋紙がどんどん貼られていくことが楽しいらし く、熱心に活動していました。十分に聞き取りができなかった子には、あらかじめ教師が調べておいた方法をアドバイスしました。例えば「ガスコンロの炎は、 鍋底よりもはみ出ないようにする」など。これは、子どもたちの取材だけではどうしても答えに偏りが生じるので、視野を広げる意味でも準備しておきました。

今度は全員で模造紙に整理する

第二段階は黒板に貼った模造紙に整理する作業です。グループで画用紙に貼っておいた付箋紙をはがして、今度は模造紙に貼り直します。模造紙にも「買う」 「調理する」「片付ける」「その他」の項目が示してあり、そこに再度、整理・分類することになります。こうした作業を繰り返すことで環境に優しい味噌汁作 りのポイントがはっきりとしてきました。さらに「買う」段階で
「旬の食材が環境にいい」
 というアイディアが出てきました。
「旬の食べ物はもっとも適した時期に無理なく作れるので余分な燃料などを使いません。だから環境に優しい調理だと言えるのですね」
 と説明を加えました。
授業の展開例
  • 環境に優しい調理の工夫を皆さんも調べてみましょう。調べたことをもとに実際に調理してみましょう。
  • 企業でも資源を使い捨てない環境に配慮した活動を進めています。どのような取組をしているのか調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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