2011.02.15
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世界の寿司 【食と世界】[小6・社会科]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第五十四回目の単元は「世界の寿司」。食を通して世界とつながる日本の姿について学習します。

日本料理や食材が世界の食卓へと急速に浸透しています。その代表が寿司です。外国で食べられている寿司の写真をもとに、食を通して世界とつながる日本の姿について学習する6年生社会科の授業です。

どこのお寿司屋さんかな?

最初に寿司の写真を子どもたちに見てもらいます。この写真は、ALTのアメリカの友人にサンフランシスコの寿司店で撮影して送ってもらったアメリカの寿司です。子どもたちは、
「寿司だ!」
「食べたい!
とすぐに盛り上がります。でも「あれ?」という顔をしています。
「先生、何だか違うよ」
「そうですか。では気がついたことを出してみよう」
そう話します。子どもたちからは
「一つ一つが大きい」
「巻物が多い」
「巻いてあるものは何だろう」
「全体にでっかいよ」
「量が多い」
「これ、どこの寿司屋さん?」
そんな発言が相次ぎます。
次に、アメリカ人が寿司を食べている様子を見せます。
「寿司を食べている!」
「この人だれ?」
ここで、写真の人物がALTの友人であること、場所はアメリカの寿司店であることを説明します。
「外国でもお寿司が食べられるの?」
と驚いている子もいれば、カリフォルニアロールのことも知っている子まで様々です。

寿司の人気の理由は

「寿司は外国でも人気だそうです。どうしてだと思う?」
子どもたちにそう聞きます。この時、付箋紙を一人に1枚ずつ渡して、理由を書いて黒板に貼ってもらいます。子どもたちの意見は、次のように分類できました。

■健康的――低カロリー、肥満防止、バランスがいい、ヘルシー、カロリー控えめ、栄養満点
■保存性――保存がいい
■美味――おいしい、口に合う
■手軽――シンプル、早くできる、食べやすい
■日本特有――見た目がきれい、珍しい、日本にしかないから

 検討する余地のある意見もたくさん出てきました。例えば「手軽」といっても、ハンバーガーと比較するとどうだろう? などと学習を深めることができます。「保存性」という面では、ほかの伝統食も一緒に取り上げて学習を深めることができます。

 こうした多様な学習内容に発展できる教材性の側面からも寿司は大変大きな価値を持っていることがわかります。今回は、日本食を通じて、日本は世界につながっているという内容につなげることを重視しましたので、子どもたちから意見をもらっただけにして次に進みました。

そうか、ヘルシーなのか!

「毎日小学生新聞 2007年2月11日」の「日本食レストラン」という記事をもとに、冒頭の文章「低カロリーで健康的」を、「○○○○○で○○○」と隠して見せました。何が書かれているか、子どもたちに答えを想像させるのです。

 記事は次のように書かれています。
「低(てい)カロリーで健康的だと日本食が海外で人気です。フランスの首都パリには『日本食レストラン』を名乗る店が約600店ありますが、中には『これが和食?』と日本人が感じるものも多いそうです。(以下略)」。
そのほか記事には、正統派の日本料理店を選定したり、農林水産省が海外の日本食の「優良店」を支援する制度を作ったりする動きもありますと紹介されていました。

「日本食が人気なのは、日本食に低カロリーで健康的だというイメージが定着してきたからです。日本の代表的な調味料、醤油やお酢も輸出されています」
こう話して授業を終えました。

授業の展開例
  • 日本食材の輸出(醤油、酢、緑茶、味噌など)の様子について調べてみましょう。
  • イギリスでは、回転寿司を「コンベア」と呼んでいます。日本とは違ったメニューも登場します。外国の寿司店、メニューについてALTや留学生に聞いてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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