2010.07.20
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もとは何? 【食と暮らし】[小3・国語]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第四十八回目の単元は「もとは何?」。身近な食べ物の原料や、大豆・小麦・米を原料とした加工食品に興味を持たせましょう。

大豆はさまざまな食品や料理へと姿を変えています。子どもたちはこうした加工食品を毎日何らかの形で口にしながら、それらが大豆からできているとはあまり 知りません。彼らにとって意外なことなのです。国語教材『すがたをかえる大豆』(3年下巻、光村図書出版株式会社)での学習を足場に、一つの材料がさまざ まな食品になったり、さまざまな料理で使われたりすることに興味を持たせる授業です。

『すがたをかえる大豆』を振り返る

これまでの『すがたをかえる大豆』の学習を受けて、次のような発問から授業を始めます。
「大豆はどんな食べ物に変わったかな?」
子どもたちからは「いり豆」「煮豆」「醤油」「枝豆」「豆腐」「黄な粉」「納豆」「味噌」の発言が出てきます。子どもたちの発言を受けて、黒板の中央に大豆、その周辺に食品名を書いていきます。

「先生、教科書に出てこないものもいいの?」
「いいよ」
「油揚げ、厚揚げ」
「そうだね、大豆でできる食べ物ってたくさんあるよね」。

何からできているかな

中央に原料となる大豆、小麦粉、その周辺に加工品を書いていく

「この食べ物は何からできていると思いますか?」
そう言いながら、絵カードを見せます。子どもたちからは
「食パンだ」
「小麦粉だと思います」
との答え。
「そうですね。では、このうどんはどうかな?」
「小麦粉」
「はい、その通り。じゃあ、お餅は?」
「お正月にお餅をついたことあるよ。ご飯だったよ」
「そうですね。もち米というお米からお餅はできるのですね」

 こうしたやり取りを続けながら、大豆の場合と同様、黒板に小麦粉とそれら食品名を書いていきます。「スパゲッティ」と「煎餅」は、子どもたちから答えが出ませんでした。そこで、それぞれ、小麦粉とお米の粉からできることを説明しました。

小麦粉からできている食べ物

小麦粉が姿を変えた食品名を書く

「小麦粉は、小麦という植物からとれます。では、食パンやスパゲッティの他に、小麦粉からはどんな食べ物ができるのでしょうか。姿を変える小麦粉を考えてみましょう」
子どもたちにグループになるように指示します。グループに1枚ずつA4大の紙を渡します。紙の中央には「小麦」と書かれています。その周囲に、小麦粉が姿を変えた食品名をグループで相談しながら書いていきます。

「うどんやスパゲッティが小麦粉でできているんだったら、ラーメンもそうかな」
「そばも?」
「いや違うよ、そば粉って聞いたことあるよ」
「先生が見せてくれた小麦粉の袋、うちの台所にあったよ。この前、ドーナツを作ったよ」
「そうだ、クッキー作るときも小麦粉を使っていた!」
「たい焼きもそうかな」
こうした話し合いは大変活発に続きますが、3年生には小麦粉の加工品をたくさん挙げることは少し難しいようです。加工品が出てこなくなりました。

給食の献立表をヒントにする

すると、一人の子が立ち上がって、教室の壁に貼ってある給食の献立表を見始めました。
「○○ちゃん、ずるーい」
「いや、いいところに気がついたね、では、みんなにもあげようね」
と言って各グループに献立表を配ります。みんな一生懸命に見ています。
それから、子どもたちが見つけた食べ物を発表していきます。「蒸しパン」「ピザ」「ナン」「ホットケーキ」「そうめん」「ケーキ」が出てきました。

お米からできている食べ物

グループで相談するが、お米の加工品はなかなか見つからない

次に、お米の写真を示しながら
「お米は稲という植物からとれます。お餅や煎餅の他に、お米からはどんな食べ物ができるのでしょうか。姿を変えるお米を考えてみましょう」
と、小麦粉と同じような活動を行います。

 お米は小麦粉以上に3年生には難しかったようです。子どもたちからは、「赤飯」「どんぶり」「チャーハン」「カレー」「チキンライス」などの料理名しか出てきませんでした。そこで
「お酒やお酢ができるんだよ」
と話すと大変驚いていました。

 子どもたちの感想を紹介します。
「米や小麦からできているものがわかって勉強になった。本当に楽しい勉強だったので、もっと知りたくなった。いろいろな食べ物に姿を変えるのがすごいと思いました。またやってほしい」。

「お酢がお米からできているのがとてもびっくりした。おうちでお母さんに自慢してみたい」。

「みんなと話し合ったけど口々に意見を言って、けんかもしなかったのでよかったと思いました。相談するのが楽しかったです。小麦粉や米がどんな姿に変わるのかもっと調べてみたいです」。

授業の展開例
  • 他にも「すがたをかえるとうもろこし」など、「すがたをかえる○○」について調べてみましょう。
  • 「すがたをかえる大豆」には、人が大豆に手を加えるときの言葉として、「いる」「煮る」「ひく」「すりつぶす」「搾り出す」などが登場します。米や小麦、とうもろこしなどが加工されるときに使われる言葉を調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 准教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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