2010.03.16
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数え方のお約束 【食と言葉】[小4・国語]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第四十四回目の単元は「数え方のお約束」。野菜や果物の数え方を調べながら言葉に親しみます。

野菜・果物の数え方には「○個」や「○株」などいろいろあります。これらの使い方を知るためにはまず、野菜・果物の形や大きさの違いに注目してみましょ う。ある決まりが見えてきます。ふだんはあまり意識しないで使っている数え方も、皆で話し合うことで意外な発見や気づきがあり、言葉の魅力に触れることが できます。4年生で国語の時間に1時間ほど取り上げてみました。

ネギは“何本”ある?

『~本』と数える野菜の絵カードを探す

教卓の上にネギ、ミカン、バナナ、ホウレンソウ、キャベツ、ビワなどを並べます。黒板には、野菜の絵カードを貼っておきます(絵カードは自作、裏には板磁石を貼り付けています)。
「机の上にネギは何本ありますか?」
と聞くと、子どもたちは
「2本」
と答えてくれます。ネギの絵カードを黒板に貼り、そばに「本」と書きます。
「では、この絵カードの中にネギのように何本と数える野菜や果物があるかな」
子どもたちの手が挙がります。一人を指名して、絵カードを動かしてもらいます。ゴボウでした。こうして、キュウリ、サツマイモ、ニンジンと子どもたちが前に出ては、絵カードを移動させます。

“玉”と“個”はどう違う?

『~玉』と数える野菜の絵カードを貼る

「キャベツはなんて数えるの?」
と聞くと、子どもたちからは
「個!」
という声。すると、
「違うよ、玉だよ」
「えっ、そうなの?」
という意見や疑問も。そこで
「玉と個はどう違うのかな、絵カードから『玉』と数える野菜を探してみよう」
と問い掛けると、子どもたちの手が挙がり、カボチャ、カブ、レタス、ハクサイと絵カードを動かします。
「では、『個』と数えるのは?」
今度は、ジャガイモ、トマト、タマネギ、サトイモが移動しました。
「わかった、『玉』は大きいものだ」
「そうだ、小さいものは『個』で、大きいものは『玉』って数えるんだ」

「じゃあ、先生、『本』は長いもの?」
「私もそう思います。細長いものを『本』と数えるのだと思います」
そして、次のように話します。
「細長い形をした野菜や果物は『本』と数えることが多いです。丸くて大きなものは『玉』、小さくて丸いものは『個』ですね」
子どもたちからは
「ここにはないけど、スイカも『玉』だ」
「メロンもだ」
「でも小さいけど、お米は『粒』だよ」
といった声。
「そうですね、小さくて指でつまめるほどの大きさのものは『粒』と数えます」
『粒』の説明を聞いた子どもたちは、絵カードからアズキを見つけました。

ホウレンソウの数え方は?

「ホウレンソウは何と数えると思う?」
とたずねると、
「いちは?」
「『は』は、葉っぱという意味だね」
などと悩んでいるので、
「そうそう、そのように育っている様子から決めます」
と少しだけヒントをあげ、
「教えてあげようか」
と言うと、
「いや、言わないで」
と子どもたち。

 そういったやりとりのあと、
「4年生には難しいので漢字の偏だけ教えてあげるからね」
と言いながら「木偏」を書きます。しばらくして
「株?」
一人の子がつぶやきます。
「そう、当たり! 『株』と数えます」
子どもたちは、さっそく手を挙げて
「コマツナも『株』だ!」
と言っています。絵カードの中からコマツナ、シュンギク、ミズナ、カリフラワーなどを動かします。

“分ける”と数え方が変わる

「では、バナナは何と数えますか?」
「本!」
「房!」
と子どもたち。
「『本』も『房』も合っています。どこが違うかというと……」
と説明しかけると、子どもたちから
「分けたら『本』になって、まとまっていたら『房』です」
との答。
「そうですね。分けたら数え方が違ってきますね」
すると次々に、
「キャベツもそうです。そのままだと『玉』で、一枚取ると『枚』」
「ミカンも、『個』が『房』になる」
「トウモロコシは『本』が『粒』になる」
「ネギは『束』が『本』になる」
子どもたちはたくさんの例を見つけました。

買い物をするときの数え方

「スーパーで買い物をするときには、このビワは何て数えるか知っているかな」
「パック」
「そう、透明な容器に入っているでしょ、だから『パック』です」
と説明します。
「イチゴもそうだ」
と子どもたち。

チラシから野菜や果物の数え方を見つける

「こんなふうに、買い物をするときには、また違う呼び方がありますね」
「袋!」
「そうですね。まだあるよ。チラシを配りますからそこから見つけてください」
と言うと、子どもたちはチラシから
「これなんて読むの?」
「一把だよ」
「魚は一尾っていうんだ」
というように、どんどん気づきや疑問を見つけていきます。

 子どもたちの感想を紹介します。
「『玉』は大きくて丸いもので、個は小さくて丸いものと初めて知りました。チラシでリンゴ4個と書いていて、1個になると『1玉』と書いていました。ふしぎです。束やパックは、出したら個や玉に変わります」。

「『房』と『把』を初めて知った。ブロッコリーとミズナ、パセリ、コマツナとチンゲンサイとか『株』なんだあと思いました。いろいろな言葉があるんだなあと思いました」。

「今まで、全部『○つ』と言っていました。でも野菜・果物の数え方を知ったので、料理を手伝うときには、『○本、○玉』など使ってみたいです。次は魚や動物の数え方と、数え方の変わり方を調べてみたいです」。

授業の展開例
  • お米は、数え方がどんどん変わっていきます。種籾では粒、田植えでは株、稲刈り前は穂、その後はどう変わるか調べてみましょう。
  • 魚や動物の数え方と、それら数え方の変わり方を調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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