2009.11.17
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だいずなダイズの木をつくろう 【食と暮らし】[小6・給食の時間]

食育は家庭科や総合的な学習の時間だけが受け持つものではありません。理科、社会科などどの教科でもアイディア次第で楽しく展開できます。教材開発のノウハウや子ども達の興味・関心を高めながら、望ましい食生活習慣を育てていく授業作りのヒントを、武庫川女子大学・藤本勇二先生主宰、食で授業をつくる会「食育実践研究会」がご紹介します。第四十回目の単元は「だいずなダイズの木をつくろう」。ダイズを原料とする食品のラベルを集めて、ダイズに関心を持たせましょう。

ダイズは日本の食文化を支えてきました。時代とともに加工技術が発達し、味噌、納豆、醤油、豆腐、きな粉、おから、湯葉など様々な加工品が作られ、 私たち日本人の食生活になくてはならないものになっていきました。さらに成分の一部が食品や工業製品に利用されるなど、身の回りにはダイズを原料にしてい る製品がたくさんあります。

 ダイズを原料とする食品のラベルを集める活動を通して、ダイズに関心を持たせる学習を6年生の給食の時間で取り上げてみました。

ダイズからできる食品は?

「ご飯と味噌汁」の学習の中で味噌の原料の話が出ました。そこで、給食の時間に、味噌がダイズからできることを確認した後、他にはどんな食べ物がダイズからできるかを問いかけてみました。「豆腐」「納豆」の意見は出ましたが、そこで止まってしまいました。

 「ダイズでできている食べ物がまだまだたくさんあるので、表示を見てダイズと書いてある食品を探してラベルを持ってこよう」
と説明しました。
「先生は、こんなものを見つけました」
と言って豆腐のラベルを見せると、
「それなら、家にあるよ」
「いっぱい持ってこよう」
と子どもたち。活動が勢いづきました。

ダイズの木をつくろう

翌日、数人の子どもたちが味噌や豆腐、納豆のラベルを持ってきました。模造紙に木の幹と枝だけを描いたものを用意して、子どもたちが持ってきたラベルを貼ります。これを「ダイズの木」と名付けると、自分も探してみようという子がさらに増えていきました。

 その後、教室の壁に「ダイズの木」の模造紙を貼り、自主的にラベルを貼るようにしておきました。「油揚げ」や「醤油」、「豆乳」などラベルが次第に増えていきます。朝のホームルームで、新しく貼られたラベルを取り上げて話し合うと、
「油揚げってダイズでできるの」
「そうだ、豆乳があった」
「父さんが湯葉ってダイズからできるって言ってたよ」
などダイズへの関心が深まっていきます。

ダイズが変化すると・・・

子どもたちが味噌、納豆、醤油、豆腐、きな粉、おから、湯葉など日本の食文化を形作る食品をたくさん見つけた頃に、ダイズを加工して利用している食品について「ダイズの木」を使って説明しました。
「煮たり、煎ったりすると煮豆や炒り豆になります。粉にするときな粉、飲み物では豆乳があり、温めると……」
このようにダイズが形を変えて日本人の食生活に深く関わっていることを話しました。

 子どもたちは一度興味を持つとどんどん調べてくれます。「原材料の一部に大豆を含む」の表示を手がかりに、チョコレート やケーキ、あんパン、キャンディ、アイスクリームなどにダイズが使われていることがわかりました。ダイズに含まれている「レシチン」が「乳化剤(大豆由 来)」としてお菓子などに利用されているのです。このことが食品の品質表示に関心を深めるきっかけにもなりました。

 子どもたちの感想です。
「私たちの生活にダイズがいっぱいあることがわかった。粒のダイズは食べなくてもいろんなダイズを食べていることがわかって少し賢くなった気がする。ダイズは日常生活の必需品だ」。

「ダイズはその食べ物の名前に『ダイズ』と書いていないと入っていないと思っていたけど、いろんなものに入っていたのでびっくりした。食べるだけかと思っていたけど調味料などいろんなものに化けているんだなあと感心した」。

授業の展開例
  • ダイズは、古くから私たちの食生活に欠かせない存在でした。「鬼の手から豆をもらう」など故事やことわざにもダイズや豆を取り上げたものがあります。調べてみましょう。
  • 石油の代わりにダイズ油を主成分とするダイズインクが作られています。工業用にはダイズをどのように加工しているか調べてみましょう。

藤本勇二(ふじもと ゆうじ)

武庫川女子大学教育学部 教授。小学校教諭として地域の人に学ぶ食育を実践。文部科学省「食に関する指導の手引き」作成委員、「今後の学校における食育の在り方に関する有識者会議」委員。「食と農の応援団」団員。環境カウンセラー(環境省)。2010年4月より武庫川女子大学文学部教育学科専任講師。主な著書は『学びを深める 食育ハンドブック』(学研)、『ワークショップでつくる-食の授業アイデア集-』(全国学校給食協会)など。問題解決とワークショップをもとにした食育の実践研究に取り組む「食育実践研究会」代表。'12年4月より本コーナーにて実践事例を研究会のメンバーが順次提案する。

文:藤本勇二 イラスト:あべゆきえみうらし~まる〈黒板〉

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